9月28日~10月2日まで公演中の舞台「曾我廼家五郎作・五兵衛と六兵衛」を、昨日夫と観てきました。
「五兵衛と六兵衛」は、大正時代の庶民の生活の一こまを描いた喜劇。隣り合って暮らす五兵衛夫婦と六兵衛夫婦は、貧しいながら、倹しく、逞しく、平凡な日々を送る。二組の夫婦は、互いに喜びも悲しみも、食べ物や薬も分かち合い、時に借金の肩代わりまでやろうと言い出す、仲の良さ。死んだら同じ墓に埋葬してもらいたいとまで言い合っている。
そんなある日、六兵衛の元に役場の役人と弁護士が現れて、六兵衛に莫大な遺産が残されていることを告げる。有頂天になる六兵衛夫婦は、五兵衛の生活の面倒も見るなどと言ってはしゃぐ。その様子を見た五兵衛はバカにされたと気分を害し、二組の夫婦は大喧嘩を繰り広げる。
そんな最中に、弁護士が再び訪れて、他の相続人の存在が明らかになったので、六兵衛の遺産相続の話はなかったことになると告げる。ガッカリする六兵衛に、「これからも仲良く、一緒に貧乏やっていこう」と慰める五兵衛・・・といったお話です。
JR両国駅すぐ近くにある小劇場「シアターⅩカイ」で公演は行われました。200席位の座席は満席。私にとっては今まで全く縁のなかった世界ですが、こういう日本の近・現代秀作短編劇の固定ファンがかなり居ることが伺われます。
舞台は五兵衛と六兵衛のボロ家が左右に並び、真ん中に外からどちらの家にも入れる木戸があるというシンプルなものですが、そこで繰り広げられる人間模様は、意外なほど変化に富んでいて、緊張感のある、どちらかというと歌舞伎の世話物に近い、日本の伝統的な庶民の娯楽といった雰囲気です。リーフレットには、松竹新喜劇の前身で、藤山寛美、榎本健一、古川ロッパなどへと水脈として続くとありました。
ところで、今回私が観に行くことになったのは、知人で人生の大先輩、矢田稔さんから案内をいただいたからでした。
矢田さんは今年85歳、ご本人は「ラスト・ステージではないか、の覚悟で参加している」とおっしゃっていましたが、矢田さん演じる弁護士は、背筋が伸びて凛として格調高く、論理的で、少し庶民を見下した感じの弁護士像が、とても自然に、とても堂々と演じられていて、見ていて嬉しくなりました。
このところ疲れ気味で長丁場は少し辛いので、第二部の「柿實る村」は失礼して見ずに帰ってきましたが、こうして、普通なら知らないで終ったはずの世界に出会い、その楽しさを味わうことができて、「また人生が豊かになった!」と矢田稔さんに感謝です。
両国の街は、お相撲さんの町。劇場の隣にはお相撲さんを奉る回向院があり、駅までの歩道には横綱の土俵入りの像が建っていました。良い雰囲気!今度ゆっくり街巡りをして、ちゃんこ鍋でも食べて帰りたいな。(三女)