
昨日は新国立劇場オペラパレスで行われたオペラ・プッチーニ〈三部作〉『外套』『修道女アンジェリカ』『ジャンニ・スキッキ』を次女と観てきました。次女が手配してくれた座席は前から4番目の真ん中。音も良く届き、歌い手さんの表情もしっかり見える、最高の座席です。
作品は、、、
セーヌ川に浮かぶ伝馬船で働く労働者たちの重労働に対する鬱屈と、気晴らしにお酒を飲む刹那の日々。そして伝馬船の船長とその妻の気持ちのすれ違いと嫉妬。こうした市井の人々の苦悩と葛藤を描く、現実主義的な作品の『外套』。

女性のみで上演され、“正しい”女性の底意地の悪さと、プッチーニが考える理想のヒロインの痛々しいほどの純粋さが描かれた『修道女アンジェリカ』。

ダンテの「神曲」地獄編を原作とした、遺言状書き換えにまつわる、人間の狡さ、欲深さを描いたドタバタ喜劇『ジャンニ・スキッキ』。
開演前に少しレクチャーをしてくれた演出家ダミアーノ・ミキレット氏によれば、3つの作品に共通したモチーフは「死」と「子供」だとのこと。(「子供」の象徴として小さな子供靴が各作品に出てきます。)
『外套』では、船長ミケールと若い妻ジョルジェッタが、子供の死をきっかけに二人の愛が壊れ、ミケールは、ジョルジェッタの冷たい態度に苦しんで、ジョルジェッタと若い雇われ人ルイージとの仲に嫉妬して、ルイージを殺してしまう。
『修道女アンジェリカ』は、親の許さぬ子供を産んで修道院に送られたアンジェリカが、生んですぐに引き離され、会いたいと恋焦がれていた我が子が、7年後の今になって既に死んでいると知らされて、悲しみに暮れ、我が子の元に旅立とうと自殺を遂げる。
そして、三作目の『ジャンニ・スキッキ』は、大金持ちのブォーゾ・ドナーティが既に死んでいるところから始まり、その遺産相続を巡るドタバタの中に、スキッキの娘とブォーゾの若い親族の婚約とやがて誕生する子供への期待が挟まれます。
新しいオペラの可能性を追求するイタリア人演出家によって作り上げられた舞台は、3つの全く違うシチュエーションを描きながら、一本の線でつながっており、その展開の巧みさと、俳優たちの伸びやかな演技、イタリア人の演出ならではの華やかな芸術性が、とても魅力的でした。
歌は、『ジャンニ・スキッキ』の中でやや唐突に?歌われる「私の大好きなお父さま」以外、ほとんど知らないものでしたが、プッチーニの楽曲は耳に馴染みやすく、話の展開ともよくマッチして、気持ちよく聞けました。そして、歌い手は、上江隼人氏(次女の知人)をはじめ、全て日本人でしたが、皆さん声量があって情感豊かで、期待以上に上手でした。

『外套』『修道女アンジェリカ』の後の30分休憩時には、オードブルとプチケーキをつまみ、次女は白ワイン、私は赤ワインを飲みながら、オペラ鑑賞のもうひとつの楽しみを味わいました。
大掛かりでははないけれど、効果的で気の利いた舞台装置と、歌い手さんの素晴らしい歌声と、休憩時の美味しいワイン。オペラ鑑賞の豊かさ、楽しさを満喫し、憂き世の疲れを束の間忘れる至福のひと時となりました。(三女)
