自分の娘を強姦され殺された父親の怒りが描かれる日本の小説を続けさまに二つ読みました。1つはテーマは別ですが、中に父親が犯人に対峙するところがある吉田修一の「悪人」、その怒りはいまいち読み取れませんでした。
そして続けたのが東野圭吾の「さまよえる刃」で記事にしました。
最愛の娘が心のよりどころだった男の復讐の心、その愛娘を陵辱し死に至らしめたのは、法律的に保護される未成年、さばきの量はどれだけのものであろうか、誰が正しい裁きを行なうのか、というお話でした。
こうしなければいけないのか、もう少しどろどろと復讐しても良かったのか、感情的不満が残りますが、それが作者の意図なのか、まあ一気に読んじゃいました。
チョット欲求不満が残っていたので、古い小説ですが、これを読みました。
1984年に文春文庫から発刊されヘンリー・デンカー著中野圭二訳の「復讐法廷」という小説です。
娘を強姦殺害され、そのため奥さんも床に伏し、なくなってしまった初老の父親の復讐の話、なんと読み始めて6ページ目には相手を撃ち殺します。
なんとも潔い、そのまま自首をして殺意を認めた自白、ここに正義感から検事を辞めた若手弁護士が登場し陪審員裁判で有罪か無罪かと展開します。
テーマに重要な部分をちょっと引用いたします。
まずは94ページ陪審員の最初の会合部分
“宗教心の篤いエリフ・プルーティーは、「復讐するはわれにあり、と主はいわれた」という言葉を文字通り受け取っていたので、その権利を自分の手で行使するいかなる人間も容認できないと正直に答えた。”
そして終わり29ページ前
“「無罪」黒人のエックス線技師ミルドレッド・エニスが言った。
「無罪」ウォルターグローヴは言明し、向かいの側にすわっていたヴァイオレット・トリヴァの意外そうな反応に目を留めた。
十一人が態度を表明し終り、みんなの目がエリフ・プルーティーに注がれた。「主いい給う、復讐するは我にあり。何ぴとも自ら復讐するな。有罪」
彼は仲間を見渡して言った。「さて、みなさん、五対四、三人は態度保留。どうやら道は遠そうですな。」“
この後の20ページで判決が決まるのですが、それは今回は書きません。
久しぶりに良質のリーガル・サスペンスを読みました。
文春文庫はずっと絶版で私は図書館で借りました。2009年にはハヤカワ・ミステリー文庫で復刊されています。そちらのカバーはこちらで、そちらも図書館にありました。(そっちは貸し出し中)どちらも内容は同じですから、ある方を読んでください。