夏ながら氷をおける奥山はこの世のほかのここちこそすれ(為忠家初度百首)
春も過ぎ夏たけぬれど氷室やま冬をおさめておけるなりけり(夫木抄)
ほかは夏あたりの水は秋にしてうちは冬なる氷室山かな(夫木抄)
昔より日つぎのおもの絶えぬかな氷室の山は近からねども(為忠家初度百首)
都には日つぎの氷室あしたゆく君がためとてさぞはこぶらし(夫木抄)
涼しさはほかにもとはず山城の宇多の氷室のまきの下風(夫木抄)
夏の日もすずしかりけり松が崎これや氷室の渡りなるらむ(夫木抄)
松が崎これも都の草づとにこほりをつつむ夏の山人(草根集)
松が崎みやこのつとのしづ くかも朝露こぼるみちの夏草(草根集)
都介(つげ)の野に大山守(おほやまもり)がをさめつる氷室ぞいまもたえせざりける(夫木抄)
春日山ふるき氷室のあと見るも岩のけしきはなほぞ涼しき(夫木抄)