むらさきは灰さすものぞ海石榴市(つばきち)の八十(やそ)のちまたに逢へる子や誰れ(万葉集)
まだきからおもひ濃き色に染(そ)めむとや若紫の根をたづ ぬらむ(後撰和歌集)
唐人(からひと)のころも染(そ)むてふ紫のこころにしみて思ほゆるかな(猿丸大夫集)
恋しくは下(した)にを思へむらさきの根摺りのころも色に出(い)づ なゆめ(古今和歌集)
むらさきの根摺りのころもかさねこし君がゆかりの色もなつかし(宝治百首)
むらさきの根摺りのころもかたみとて見れば涙に色かはりけり(延文百首)
紫のゆはた染(そ)むてふさす灰のあひみあはずみ人しるらめや(久安百首)
むらさきのひともとゆゑに武蔵野の草はみながらあはれとぞ見る(古今和歌集)
紫のゆかりの草をとひわびて露わけそむる武蔵野の原(新葉集)
むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる(古今和歌六帖)
むらさきの色にいでては云はねども草のゆかりを忘れやはする(玉葉和歌集)
思ひそむるこころの色を紫の草のゆかりにたづ ねつるかな(続千載和歌集)