やへむぐらしげきやどには夏むしの声よりほかにとふ人もなし(後撰和歌集)
宵のまもはかなく見ゆる夏虫にまどひまされる恋もするかな(古今和歌集)
つつめどもかくれぬものは夏虫の身よりあまれるおもひなりけり(後撰和歌集)
身にあまりおもひぞしるき沢みづ の底までもゆる夏虫のかげ(御室五十首)
昼は鳴き夜はもえてぞながらふる螢も蝉もわが身なりけり(古今和歌六帖)
いかにして燃ゆるうちにも入(い)りぬらむおもひに身をもかふる虫かな(永久百首)
宵のまに身を投げつめる夏虫は消えてや人に逢ふと聞くらむ(伊勢集)
おもひには身をもかへつる夏虫の消えても逢ふとたれかいひけむ(陽成院歌合)
恋すとて身はいたづ らにならばなれわれ夏虫になりやしなまし(陽成院歌合)
夏虫の身をいたづ らになすこともひとつおもひによりてなりけり(古今和歌集)