夏草のしげみのしたの沢みづ にかげも乱れてとぶほたるかな(伏見天皇詠百首和歌)
夕されば野沢にしげる葦の根のしたにみだれてとぶ螢かな(文保百首)
せきとめてすずむ木蔭(こかげ)の山水に夕ぐれしるくとぶほたるかな(宝治百首)
草ふかき荒れたるやどのともし火の風にきえぬはほたるなりけり(新勅撰和歌集)
秋近きむぐらの宿の夕露にしげきほたるのかげぞみだるる(嘉元百首)
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わが恋はもゆるほたるの色みえてねをこそたてね人や知るらむ(慈鎮詠草)
色みえてむせぶおもひを人とはばもゆるほたるぞそれとこたへむ(亀山殿七百首)
音もせでおもひに燃ゆるほたるこそ鳴く虫よりもあはれなりけり(後拾遺和歌集)
声はせで身をのみこがす螢こそ云ふにもまさるおもひなるらめ(源氏物語)
なくこゑのきこえぬもののかなしきはしのびに燃ゆるほたるなりけり(詞花和歌集)
ゆくほたる草のたもとにつつめどもなほかくれぬはおもひなりけり(後鳥羽院御集)
たれか知るしのぶの山の谷ふかみもゆる螢のおもひありとは(藤河五百首)
みをつくしたてる入り江にとぶ螢ふかきおもひのしるしとぞ見る(邦高親王御百首)
おもひをば消(け)たぬものから水(み)さび江のあたりはなれずとぶ螢かな(続草庵集)
もの思へば沢の螢もわが身よりあくがれいづる魂(たま)かとぞ見る(和泉式部集)
おもひあれば袖に螢をつつみても言はばやものをとふ人はなし(新古今和歌集)
(2009年7月29日に掲載した「ほたる」の記事は削除しました。)