杣川のいかだの床(とこ)の浮きまくら夏はすずしきふしどなりけり(金葉和歌集・三奏本)
夏山の岩がねきよく水おちてあたりの草の色もすずしき(玉葉和歌集)
水の音にあつさわするるまとゐかな梢(こずゑ)のせみの声もまぎれて(山家集)
山里のそともの竹を吹く風に夕日すずしきひぐらしの声(万代集)
緑なる木のした柴に露みえて夕べの雨の色ぞすずしき(伏見院御集)
夕暮れは沢べにしげる夏草の葉ずゑをわたる風ぞすずしき(藤葉和歌集)
ころもでも涼しくなりぬ深山木(みやまぎ)のすゑこす風の夏の夕かげ(万代集)
夕すずみ身にしむばかりなりにけり秋はけしきの森の下かぜ(続古今和歌集)
風さやぐ竹のこぐれのゆふすずみ露さへ我を秋とあざむく(林葉集)
目に見えぬ秋やかよひて夕暮れの松に涼しき軒のしたかぜ(新続古今和歌集)
もりかぬる月はすくなき木の下に夜深き水のおとぞすずしき(風雅和歌集)