暮るるかとみれば明けぬる夏の夜をあかずとや鳴く山ほととぎす(古今和歌集)
たちばなの玉ぬく月のみじか夜にあかでもすぐる時鳥かな(夫木抄)
小山田は夏の暮れこそうれしけれ稲葉のほたるしづ の蚊やり火(夫木抄)
月にゆく夜道すずしみ小車(をぐるま)のすだれを風は吹きとほすなり(広沢切)
もりかぬる月はすくなき木(こ)のもとに夜(よ)ぶかき水のおとぞすずしき(風雅和歌集)
ひびきくる河音(かはおと)すみて夏の夜の木蔭すずしき月の庭かな(伏見院御集)
夏の夜は月待つほどにむすびおく夕露すずし庭の草むら(法性寺為信集)
みじか夜はうたた寝ながらはや更(ふ)けて奥まで月のかげぞさし入る(延文百首)
夏の夜のわびしきことは夢をだに見るほどもなく明くるなりけり(風雅和歌集)
いかにせむみじかき夜半のうたた寝に逢ふもほどなき夢のちぎりは(藤葉和歌集)
よそながら思ひしよりも夏の夜の見はてぬ夢ぞはかなかりける(後撰和歌集)
夢よりもはかなきものは夏の夜のあかつきがたの別れなりけり(後撰和歌集)