「きれいだス」
「こんなにきれいなことろだったのでヤすね。墓場だなんて言って、すまなかったでヤす」
皆は一様にこの美しい風景に魅了されていた。
湖の中州に、神ひと様のいる病院があった。といっても建物が在るわけではない。青々とした木々が茂り、そこからまっすぐに向こう岸まで歩道が伸びていた。皆が歩いてきた道だ。
その道を女性らしき人が歩いてくる。手に何かを持っていた。
「わしの妻じ . . . 本文を読む
「神ひと様、こういうことですね」
博士が口を挿んだ。
「私たちの身体は、原子でできています。皆もそれは知っています。それと同じように、神ひと様の身体は、太陽でできているということもこの目で見てきました。つまり原子と太陽は、大きさこそ違え、おなじ一族だと分かったのです。太陽族はものの単位として存在しているのだと。」
「そうじゃ、博士。知っての通り、我らの起原はともに太陽族から始まるのじゃ . . . 本文を読む
「博士、これは。」
「スケール号が、このプレートの文字を解読したのだ。」
「この言葉、聞いたことがあります。」ぴょんたが言った。
「そうでヤすね。えっと、どこでヤしたかね。」
「確か、ここにありて、はるか彼方にありしもの、我ら、太陽族の生まれた理由がそこにある。お日様がそう言っていただス。」
「そうそう、お日様が言っていましたね。」
「太陽族の伝説だと、確かそう言っていた . . . 本文を読む
「この花がどうしたんだ。」艦長はもこりんに聞いた。
「ほら、覚えがないでヤすか。スケール号が巨大化していく間、ずっと窓から外を見ていたでヤしょう。」
「それで?」
「そのとき、一瞬、確かにこの花を見たでヤす。」
「そう言われれば、そんな気もするだスなぁ」
ぐうすかも、なんとなく、そんな気がして同意した。
「気づかな . . . 本文を読む
「あっ、花だス。」
「ほんとでヤす。ほら、あの島のまんなかに見えるでヤす。」
霧で隠されていた島が現れたとき、その中央に咲く一輪の花が初めてみんなの目に止まったのだ。花は幾分オレンジがかった色味を帯びて、白い風景の中で浮かび上がるような光を放っているのだった。ここから見えるのだから、かなり大きな花に違いない。
「博士、あれは何でしょう。」
「もしかしたら神ひと様と関係があるのではな . . . 本文を読む
一八、神ひと様
ついにやって来たのだ。みんなは窓の外の光景に釘付けになった。
初めて見る神ひと様。長い旅の果てにようやく巡り会う事が出来るのだ、その姿の一部始終を見逃さないようにと、誰の心も踊っていた。
だが、どうした訳か、次第にあらわになってくる光景は、乗組員達の心を裏切り始めたのだ。
人肌を接写した . . . 本文を読む
一七、最後の道程
スケール号は再びピンクの川の上空に戻って来た。緑の海の中に渦を巻くようにピンクの川が流れている。
以前に見た光景そのものだった。おばあさんの心の世界では、このピンクの川は、途中で流れが止められて、紫色に変色していたが、ここは健康そのもののようだった。
ただ見ているだけでは気づかないが、目前のピンクの川は、前に見たものよりはる . . . 本文を読む
「雨でヤす。」
「こんな雨、見たことないだス。」
雨は海面に落ちると。瞬間に黒い雲がもこりと立ちのぼり、それがしっぽの形になったり、魚や小鳥や、指や耳の形になって消えた。
雨が一粒落ちる度に海面にぽこりと小さなものの形が生まれて消えるのだった。
「何ですかあれは、気持ち悪いような、おもしろいような。」
「あの雨は、役目を終えて、目的を失ってしまったもの達なんだ。海に落ちた瞬間に . . . 本文を読む
一六、チュウスケの秘密
スケール号は念のためにエネルギーのシールドを張った。船体が青い膜で覆われた。突然攻撃されても、シールドを張っておけば、スケール号の中は大丈夫なのだ。
いつしかスケール号は黒い海の上にやって来た。黒い海は静かで、様々な色が不気味にうごめき、ゆっくりと混ざり合っていた。
黒と思っていたのは実は無数の色が混ざり合っていたのだ。すべての . . . 本文を読む
のしてんてん「道」 910×910 キャンバスに鉛筆
搬入のギリギリまで調整して、やっと筆(シャーペン)を置く作品となりました。
三年ほど続いた龍の作品は、一応心の中で整理がつき、今回はそれを越える世界に踏みこんでいく第一作です。
写真ではテカリやピンボケで鉛筆の粒子が伝わりません。残念ですが大体こんな感じということでご理解下さい。
作者としては是非この粒子の . . . 本文を読む