のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

スケールマシン(スケール号の冒険)

2019-09-09 | 5次元宇宙に生きる(一人旅通信)

「この花がどうしたんだ。」艦長はもこりんに聞いた。

 「ほら、覚えがないでヤすか。スケール号が巨大化していく間、ずっと窓から外を見ていたでヤしょう。」 

  「それで?」

  「そのとき、一瞬、確かにこの花を見たでヤす。」

  「そう言われれば、そんな気もするだスなぁ」

 ぐうすかも、なんとなく、そんな気がして同意した。

  「気づかなかったがなあ。」

 ぴょんたは首を傾げた。

 「もこりんの言うことが本当なら、我々はこの辺りから出て来た事になる。」

 「博士、神ひと様は死んでしまったのですか。」

 「もしかしたら、この中に神ひと様が入っているのではないでヤすか。」

 「ひえーっ、ここは神ひと様のお墓だスか。」

 「やっぱりここはお墓なのですか、博士。神ひと様は死んでしまったのですか??」

 ぴょんたは怖いものを見るように辺りを見渡した。島の周りは霧に包まれて何も見えなかった。霧がさらに深まっているような気がする。

 やって来た岸辺がどの方向にあるのか、横たえられた石棺を目印にしなければ見当もつかなかった。

  「博士、ここは本当に神ひと様のお墓なのでしょうか。それなら、スケール号は死体の中を飛んできたと言うことになりますよね。」

 艦長は自分の思い付を、恐るおそる覗くような感じで尋ねた。

 「分からない。しかし我々がここから出て来たというのなら、この中に神ひと様の体があることになる。」

 「もし、神ひと様が死んでしまったのだとしたら、地球も死ぬのですか博士。」

 「地球はどうなるのでヤすか。」

 「地球はなくなるのだスか。そんなの嫌だスよ。」

 ぐうすかは泣き出しそうになった。

 「地球がなくなったら、私達はどうなるのです。やっぱり死ぬのですよね。」

 ぴょんたの耳はくねくねに折れ曲がった。

 「まあ待ちなさい。そうと決まった訳ではない。」

 「でも、神ひと様に何かが起こったのだけは間違いないですよね。」

 「神ひと様の身に何かの異変が起こったのかも知れない。しかしここにはそれを説き明かすものがない。すべては謎のままだ。何も分からない。」

 博士も追い詰められて、投げやり的な言い回しをした。それが皆の心に不安をうえつけた。

 「博士、この石の蓋を開けてみるだス。」

 ぐうすかが勇気を出して言った。

 その言葉が、行き詰った不安に力を与えた。本人もまわりのものもその変化に気付かなかったのだが。そこから展開が始まったのだ。

 「しかし、それは、」

 博士はぐうすかの思い付きに戸惑った。

 「博士、やってみましょう。」

 艦長がぐうすかに共鳴して、たたみかけた。

 「しかし、危険な気がする。何が入っているのか分からないんだ。もっとよく調べてみなくては何とも言えない。」

 分からないものに対する不安は、博士を慎重にさせるようだ。

 「でも、やってみる価値はありますよ。」

 艦長は博士に食い下がった。

 「そうでヤす。中を見なければ、何もわからないのでヤすからね。」

 「私も、手伝いますよ。」ぴょんたも加わった。

 「よし、みんな力を貸すんだ。」

 艦長は博士の返事を待たずに、皆に命令した。

  石の蓋は重かったが、四人が力を合わせると、わずかに動いた。そこに腹を決めかねていた博士も加わって、石の蓋はごろごろと音を立てて動き出した。

 するとその上で咲いていた花が、はらはらと大きな花びらを四方に散らせた。落ちた花びらは、まるで生き物のようにくねくねと動き、這い回った。そして一斉に湖面の方を目指して走り始めた。オレンジ色の花びらはそのまま島から湖の中に入り、魚のように泳ぎ去った。

  花びらが散って、残った花芯が、ぐるぐると回転し始めた。辺りをオレンジ色に染めながら、花芯はふわふわと空を飛び出したのだ。

  驚きを通り越して、誰もがただ茫然と、花の出来事を見つめていた。

 首が折れ曲がるほど、もこりんが上を向いて二三歩足動いたとき、なにかにつまずいて石棺の横に尻餅をついた。

 そのとき、手をついたもこりんの指が地面の白い土を払ったのだ。

 そこに銀色に光るプレートがあった。

 「博士、こ、これは何だスか。」

 「どうした。」

 「何だスか。」

 「何ですか。」

 「何があったのだ。」

 皆がぐうすかの周りに集まった。ぐうすかは注意深く、プレートの上の土を払った。それは長方形の銀色に輝く金属板だった。そこには二行の文字らしきものがが刻まれていた。

 「何か文字のようだスな。」

 「見たこともない文字でヤす。」

 「これは、何ということだ。」

 博士はプレートを二本の指で撫でながらつぶやいた。それは博士の最上級の驚きを表しているのだった。

 「どうしたのですか、博士。」

 「信じられない事だ、どうしてこんな事があるのだ!?この金属は間違いなくスケールメタルだ。私が発明したものだ。」

 「ゴロニャーン」

 スケール号が博士のわきから身を寄せて、そのプレートに鼻を近づけ、喉を鳴らして頬ずりをした。

 「これは、スケール号の船体をつくっている金属と同じものだ。間違いない。見ろ、スケール号も反応している。分かるんだ。」

 「でもどうしてそれがここに?」

 「スケールメタルは私が発明したものだ。自在に伸び縮みする金属はこの宇宙に二つとない物質なのだ。考えられない。何かの間違いなのか。」

 博士は、艦長の質問も耳に入らないらしい。

 「ゴロニャーン」

 スケール号が横から博士の足に顔をこすり付けた。博士の腕に抱えあげられると、銀色の猫はキラリと光を放った。それはまさに、プレートと同じ光だった。

 「スケール号確かめられるか。」

 艦長がスケール号に話しかけた。

 「ゴロニャーン」

 スケール号は博士の腕から飛び降り、プレートにもう一度鼻を近づけ、艦長を見た。

 「どうだスケール号。」

 「艦長、スケール号の背中にプレートを置いてみるんだ」

 「どうするんです?」

 艦長は聞いてみたが、博士が答える前にプレートをスケール号の背中に乗せた。なんとなく博士の考えがわかったのだ。

 艦長がネズミの大きさを想像するとスケール号が瞬間にネズミの大きさになった。同時に背中置いたパネルも同じように縮んだのだ。一様に驚きの声があがる。

 間違いなくこれは、博士の言うスケールメタルに違いなかった。

 「あっ、でも博士、チュウスケに引っ付けられた爆弾も同じでヤしたよ。」

 もこりんが大声を上げた。スケール号の背中に取り付けられた素粒子爆弾を思い出したのだ。

 「そうだス。あの爆弾も、スケール号がどんな大さになっても同じように大きさをかえただスね。」

 「それでは、ここもチュウスケと関係があるのでしょうか。・・・もしや、神ひと様はチュウスケに連れていかれたのではないでしょうか。艦長。」

 ぴょんたがとげに触るような言い方をした。お蔭で一気に不安の空気が膨れ上がる。何もかも分からないことだらけ、それが不安を一層大きなものにしていく。

 「一体どうなっているのだろう。・・・・・スケール号、ここに書かれた文字を翻訳してくれないか。」

 行き詰った艦長の目に、プレートに刻まれた文字が止まったのだ。文字ならスケール号が翻訳してくれるだろう。そう思ってのことだった。

 猫の大きさに戻ったスケール号の背中からプレートを取り上げて、艦長はそれを鼻先に持って行った。

スケール号は、プレートに刻まれた文字の上をペロペロとなめた。同時にスケール号の目が光り、白い石棺の壁に文字が映し出された。  

 ここにありて、

 はるか彼方にありしもの

 

 石棺にくっきりと文字が浮かび上がった。

 

  つづく

 

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宇宙の小径 2019.9.9

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さわやかな朝

 

心の中に陽が差し込む

始まりの光

無垢なる

透明なる

レモンスカッシュ

はじける空気

 

誕生の朝

それは

内側から

膨らむ

無数の気泡が

延々と立ち上がってくる

新生

真正

神性

 

人生の中で

誰もがこんな朝を体験する

忘れないでほしい

その体験は

決して妄想ではないということを

 

命の

真実の

体験なんだと

 

求めれば得られる

あなたの

ど真ん中


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