(戯れる光と影)
表現と受容という関係を深く観ると、実は驚くべきことがわかります。
自分の思いを伝えたい。そこでその思いを表現する。「私」はその表現を受け(受容)して、相手の思いを理解する。
この構図をみたとき、私たちがやりとりしているのは、当然相手の伝達意志だと思いますよね。
つまりコミュニケーションによって、伝達意志が伝わっていくのだと。逆に言えば、伝達意志がなければコミュニケーションは成り立たないということになりますね。
しかしそれは大変な誤りなのです。私たちは知らないうちに思い違いをしているのです。
私たちが相手を受容するのは、必ずしも相手の表現意志が必要だというわけではありません。正確に言えば、「受容」するのに、相手の表現意志は必要ないのです。
母親が赤ちゃんを受容しますが、赤ちゃんに表現意志があるわけではありませんよね。
受容の対象は、人間に限りません。
たとえば機関車を擬人化して理解するように、私たちは物に対してさえ、受容しますし、空想のものや、目に目えないものにさえ、受容してそれを自分の心に思い描くのです。
ようするに受容というのは、受容するその人そのものを現わしていることになるのです。
宮本武蔵だったか、ある達人の道場を訪れ、切り花を使用人に手渡しました。その使用人から手渡された達人は、花の切り口を見て、訪問者の力を見抜くという話です。おなじ切り花を見ても、使用人には酔狂なやからとしか受容できないでしょうが、達人の目には剣豪の人となりがありありとj受容される。
この二つの受容の違いは、ふたりの技量の違いそのものであり、つまり受容とはその人の人間性そのものだといえるのです。
私たちの心に、他者として現れるすべての人 (両親兄弟、恋人友人、群衆・・・とにかく 認識出来る一切)は、私たち自身の受容の結果であり、それはその人の人間性に映し出された偶像なのです。
それゆえ、他者とは、見ているその人の人間性のレベルそのものを現わしているといえるのです。
目の前にアインシュタインがいたとしましょう。すると私など凡人には、奇人変人としか見えないでしょう。私の世界では、変人が街を歩いている訳ですね。私は彼を見下し、顔をしかめて通り過ぎると思います。
しかし彼の理論を理解出来る人には、彼は神様なのです。手を合わせてその出会いに感謝するかもしれません。
要するに、私たちの中にアインシュタインがいるわけではなく、ただ自分の人間性を見ているに過ぎないということなのです。
先にも言いましたが、受容の対象は、人間に限りません。物でも、空想でも、認識できる一切のものを受容して、私たちは自分の理解できる世界にしてしまうわけですね。
そうすると、こういうことが言えます。
つまり、私たちが観て感じているこの世界というのは、私たち一人ひとりが独自に受容した世界のことであって、当然それは自分のレベルを超えられないということです。
私たちはみな、様々なことに遭遇して世界を認識しますが、それはけっして、自分の人間性を超えたよい世界を見る事にはならないのです。
私たちの最高の価値、それは神だとしましょう。
で、私たちは神を恐れ、憧れ、救いを求めようとします。神を思い浮かべ、全能の神に祈りをささげるでしょう。
しかしその神でさえ、私たちの受容なのですから、各自の受容能力を超える神など想像することさえできないのです。
つまり、意識の中では、「私」を超える神など、存在しないといえるのです。
誤解されてはいけませんので、はっきり言いますと、私は無神論者ではありません。この世に神はいると思いますし、結論的に言えば、私たちはみな、一人ひとりが神だという話に行き着くのです。
私はこう思います。
私たちが持っている受容の能力、この力こそ、私たちを神に導く力ではないのかと。
母親が赤ん坊を受容して、ことばも出来ない我が子の望みを理解します。この母の受容は我が子に対する愛そのものですね。
恋人への深い愛は、だれにも見抜けないその人の優しさを受容します。しかしその優しさは、恋人を受容する「あなた」の心の中にあるもの、つまり「あなた」自身というわけです。
たとえ恋人の優しさが、「あなた」の受容した優しさより深かったとしても、「あなた」はそれを知りませんし、逆に買いかぶりだったとしても、それを知るのはもっと後のことになるでしょう。真実はただ、「あなた」の成長を待っているだけなのです。
この話の「恋人」を「神」に置きかえるだけで、私たちはその道筋を見つけることが出来ます。つまり、神と出会う道筋のことです。
(初めて読まれる方へ: この物語は、愚書のしてんてん系宇宙論を 解説したものです。この解説は2016年1月6日付け記事から始めていますので、カテゴリー(五次元宇宙に生きる(空間))の同日付け記事から読んでいただくことをお勧めします。なお、本は有償でもお譲りしますが、「のしてんてん系宇宙論」 のページにあります本の画像をクリックしていただくと、自力でプリントできますので、無料でご利用いただけます。)
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