のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

スケール号の冒険34

2008-06-26 | 童話 スケール号の冒険(第3話)

ピピはぴょんたの立っていたあたりに駆け寄った。そこにはぴょんたの姿はなく、ただ耳だけが落ちて海に漂っているばかりだった。
「ウサギちゃん、ピピのために・・・」ピピは泣きながらぴょんたの耳を拾いあげた。
「ピピのせいなのね。」
 ピピはぴょんたの耳にほおずりして胸に抱き締めた。
ぴょんたの耳はピピの胸の中でしおれて今にも溶けてしまいそうだった。
 「ごめんね・・・」
 そうつぶやくと、ピピの目からあふれるように白い涙が出て来た。
 その涙が天使ムカエルの姿に変わったのだ。それはピピの中に飛び込んだムカエルだった。大きく羽を広げて中空にその立ち姿を現したのだ。
「泣くのはおよし」
 ムカエルはそういって、泣いているピピに手を差し伸べ、その胸から優しくぴょんたの耳を受け取った。
 ムカエルは静かにぴょんたの耳をエネルギーの湖面浮かべ、そして両手をその耳の方にかざした。すると白い光の繊維ががぴょんたの耳を包むように広がり始めた。
 光のかたまりは次第に大きくなっていって、耳から頭が、頭から胴体というように成長して、ついにぴょんたの形になって一層輝き始めた。
 それはさらに輝きを増し、やがてその輝きが頂点に達すると、溶岩が冷えていくように光が衰え始める。その光が消えた時、ぴょんたはまるで子供のようにゆったりと目を閉じて眠っているのだった。ぴょんたが生き返ったのだ。
「さあ、ぴょんた、目を開けなさい。」
 ムカエルが静かに語りかけた。
 ぴょんたはゆっくりと目を開けた。
「あなたの愛がピピを救ったのです。礼を言います。」ムカエルは白い羽根を揺らせて両手を合わせた。

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