あわただしく玄関に立った御住職を後ろ手に見送って、
私はあらかじめ作っておいた個展の案内用ポスターの図案を取り出した。
個展という言葉が引っかかって、いろいろ考えた。
個展という言葉はあまりに我田引水的な醜さを感じるのだ。
もっと何か、私の絵が人のために役立ってほしい。
漠然と感じるそんな思いで何日か過ごしていたある日、
朝の草引き散歩で歩いている道すがらに「奉納」という言葉がやってきた。
奉納会(ほうのうえ)それが私の心にぴったり収まったのだ。
その言葉に動かされてつくった案内用のポスターだ。
「のしてんてん絵画 奉納会」
菖蒲の花に包まれた浄光寺の写真を使って、
寺の法要永代経と同時開催になることを知らせるものになっている。
気に入ってもらえるのではないかと思える自信作だ。
気にかかっているのは、この奉納という言葉がいいのかどうか。
玄関でおばちゃんの声と御住職の声が交互に聞える。
法事の話のようだ。
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