のしてんてんハッピーアート

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ジイジと北斗(新スケール号の冒険)その5

2022-07-14 | ジイジと北斗(新スケール号の冒険)

(3)-2

 

スケール号の中は北斗艦長を讃える歌の大合唱が響き渡りました。

「艦長が目を開けたでヤす!」

最初にもこりんが声を上げました。

「艦長が目を覚ましたダすよ!」

ぐうすかも大喜びです。

「艦長、帰りましょう。」

ぴょんたは耳をパタパタさせて北斗の上を飛んで見せました。

「君は艦長なんだよ、北斗。」

北斗はまん丸に見開いた目をジイジに向けています。

「何も知らなくていいんだよ。初めてなんだからね。」

ジイジは北斗の目から伝わってくる言葉に答えているのです。

「大丈夫だよ、ジイジも艦長だったんだ。

だから言うとおりにしてごらん、スケール号はその通りに動くからね。」

北斗の口元が少し笑ったように見えました。

ジイジはそれから北斗の目の中に入って行くように心を集めて、スケール号の操縦方法を教えてあげるのでした。

それはジイジにも、考えるだけで伝わる宇宙語の感触を全身で味わう初めての経験でした。

でもそれは北斗にも同じだったわけではありません。

北斗は生まれた時から宇宙語そのものだったのです。

ジイジはスケール号が言った意味が分かるような気がしました。

「赤い操縦桿を握って、スケール号跳べ!って言ってごらん」

「はふー」

北斗が声を上げました。

「ゴロニャーン」

スケール号が反応して一気に屋根をすり抜け大空に舞いあがったのでした。

北斗艦長はまだ操縦かんを握れません。まだとっても手が小さいのです。

でも北斗の真っ黒の目は、思うだけで操縦かんを動かせるのです。

それが宇宙語だとジイジは思いました。

「やったやった!」

スケール号の中は大騒ぎです。

「はㇷはやー」

北斗が両手を振って言いました。

手はまだ自分の耳にやっと届く長さなので握りこぶしが耳たぶを押し上げます。

「さあ艦長は、総員位置につけと言ってるぞ。諸君。」

ジイジは艦長だった昔の自分に戻ったような気分になって言いました。

「アイアイサー」

「分かったでヤす」

「居眠りしないで頑張るダすよ。」

三匹の乗組員は元気いっぱいです。基地に戻るのが嬉しくてならないのです。

「北斗艦長、よくやった!君は本当に艦長なんだ!」

ジイジはしっかりと北斗の目を見ながら言いました。

「さあ、みんなの基地に戻ろう。君にはもうできるよ。基地に帰ろうと言えばいいだけだ。」

「はふー」

「ゴロにゃーン」

スケール号の気持ちが鳴声にも表れています。

スケール号は新しい艦長のもと、ぐんぐん空を飛んで行きました。

あっという間に白いビルが見えてきました。

それがスケール号の基地、世界探査同盟の白いビルだったのです。

 いつもゆっくりのぐうすかが真っ先に食堂に走っていきました。

「ずるでヤす、ぐうすか。」

もこりんが追っかけます。

後ろからぴょんたが長い耳をパタパタさせて空を飛びました。

「ずるいダす、ぴょんた」

追い越されてぐうすかが悔しがりました。

でもほとんど同時に三匹はいつもの席に座ることができました。

「変わらないなぁ君たちは。」

ジイジが笑いながらやってきました。

艦長を乗せた揺りかごがぴったり横についています。

 「みんなお帰り」

食堂のおばさんがフルーツジュースをお盆に乗せて持ってきました。

「やったー」

みんなは大喜びです。

「おなかがすいただろうからね、今日は特別にハチミツたっぷりのホットケーキだよ。」

「ねえね、おばさん。上にクリームとイチゴも乗せてほしいダす。」

「はいはい。それから北斗君はほ乳びんのミルクだったね。聞いてるよ。」

「ふぎゃー、ふぎゃー」

突然艦長が泣き出しました。

「ミルク嫌なの艦長?」

心配そうにぴょんたが博士を見ました。博士と言いうのはジイジのことです。

「ははは、ぴょんた。君は優しいね。大丈夫だよ。艦長はね、おばさんに早く早くと催促しているだけなんだからね。」

「そうなんだ。」

 「いただきます!」

いつもこれが一番うれしい風景だったな。ジイジは思いました。

 

 

 

(つづく)


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