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「艦長はそこに寝ている北斗です。」
「北斗が艦長?まだ生まれたばかりの子だよ。
スケール号、お前も私のことを覚えていないのか。」
「覚えていますよ、ケンタ。あなたはとってもいい艦長でした。
おかげで私達はとってもいいパートナーでしたね。」
「スケール号、覚えていてくれてありがとう。」
「でもあなたはもう艦長ではありません。」
「しかし北斗はまだ赤ちゃんだ、それがどうして艦長に?」
「北斗はまだ宇宙の子です。その力が必要なのです。」
「しかしそれは無茶な話だ、スケール号。北斗は歩けない。」
「大丈夫ですよ。これに北斗を寝かせてください。」
スケール号が言うと、音も無く揺りかごが浮かんで飛んできたのです。
「ほぎゃー、ほぎゃー」
北斗の泣き声がジイジの耳に届いてきました。
「おーおー、怖くないぞ北斗、お腹すいたのかなぁ。
母さん帰ったらおっぱいいっぱいもおらおうね。」
あやしながらジイジは抱きあげました。
「さあ、北斗をその揺りかごに。」
スケール号の声です。
ジイジは、いつまでもぐずっている北斗を揺りかごに寝かせました。
すると不思議なことが起こりました。
弱々しくて不安そうに泣く北斗の顔が明るく輝いたのです。
先ほどジイジがカーテンを開けた時、びっくりして眩しそうに輝いていた北斗の顔でした。
その顔がにこりと笑ったのです。
北斗はすぐに満足したように眠りました。
とても静かにです。
ジイジは嬉しくなりました。
「スケール号、ありがとう。」
「安心してください。北斗は大丈夫です。」
「どうしても連れて行くのだね。」
「はい。そしてあなたもです。ケンタ。」
「私も?」
びっくりしてジイジは聞き返しました。
「あなたは北斗に必要な人なのです。博士。」
「のしてんてん博士はスケール号を作ったすごい方でしょう。
でも私は単なるジジイだよ。」
「あなたはもっとすごいものをつくったのですよ。」
「何のことだか、さっぱりわからない。」
ジイジは驚きましたが、スケール号の言葉は決して疑いません。
自分の何がすごいのか、そんなことはどうでもいいことでした。
そんなことよりまたスケール号と一緒に冒険できると思うと嬉しくなってきたのです。
そのためだったら、博士と呼ばれてもかまわない。
ジイジはそう考えたのです。
「おじいさんは博士だったのでヤすか」
「あの有名なのしてんてん博士でしたか。ごめんなさい。」
「脅かしたりして悪かったダす。」
もこりんもぴょんたも、そしてぐうすかもジイジの前で頭を下げました。
「もこりん。ぴょんた。ぐうすか。これからよろしくな。」
「はいでヤす、博士。でもあんまり難しい話はいやでヤすよ。」
もこりんがさっそく皆を笑わせました。
こうして、ジイジと北斗を乗せたスケール号が宇宙の彼方へ、
音も無く飛びたったのでした。
(つづく)
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