(2)-1
ある日、珍しく温かい陽射しがカーテンを通して部屋に差し込んできました。
ジイジは意味なく心がうきうきしてカーテンを開けたのです。
ピンク色の花びらが一枚とんでいました。
近所の梅の花が満開なのかもしれません。
その時、北斗のかわいい力み声が聞えてきました。
そして泣き出したのです。
窓際に置かれた小さなベッドに寝かされた北斗の顔が輝いていました。
「おうおう、すまなかったな、眩しかったね。」
ジイジが反射的にカーテンを閉めて、北斗に謝りました。
その時だったのです。
「ゴロニャーン」
ジイジには聞き覚えのある猫の声でした。
「艦長、迎えに来たでヤす。」
「艦長、お迎えに上がりました。」
「艦長、お迎えに参りましたダすよ。」
ジイジが声の方を振り返ると、三匹の勇士の姿がありました。
その後ろに銀色に光る猫がうずくまっていたのです。
「もこりん、ぴょんた、それにぐうすかじゃないか。」
ジイジはなんだか胸が熱くなってしまいました。
モグラのもこりん。ウサギのぴょんた。ナマケモノのぐうすか。みんな昔のまんまです。
「忘れないで会いに来てくれたのだね。まだ艦長と呼んでくれるのだね、夢じゃなかったのだ。
私は信じていたよ。みんなあの時のまんまじゃないか。」
「私達は艦長を迎えに来ただけですよ、おじいさん。」
ウサギのぴょんたが言いました。
「おじいさん、そこを退くでヤす。」
モグラのもこりんも言いました。
「おいおい、私は艦長だよ。ほら、一緒に神ひと様にも会いに行ったじゃないか。
もこりん、忘れたのか、艦長のケンタだよ。」
「おじいさんなんかしらないでヤすよ。」
もこりんがほっぺたをふくらませて言いました。
「おじいさん、じゃまはなしダす。」
ぐうすかが両手を上げて見かけだおしの技を出しました。
相手を怖がらせるぐうすかの得意技なのです。
「しかし君たちは今艦長と呼んでくれたじゃないか。」
「そうです、私達は艦長を迎えに来たのです。」
「だから私が艦長だよ。忘れたのかね。」
「ゴロニャーン」
スケール号の声、そう思ったとたん
ジイジの耳にネコの鳴声が言葉になって聞こえてきました。
(つづく)
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