のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

セリナの物語17

2007-08-26 | 小説 セリナ(短編)

家に帰ると妻が出迎え、子供が駆け寄ってくる。
私はカバンを妻に預け、子供を抱え上げて肩車をする。
そんなシーンをよく夢想した。安物のドラマの刷り込みに過ぎなかったのかも知れないが、結局実現することはなかった。
結婚と破局までの5年間、妻との間に子供に恵まれることはなかったのだ。今となってはそれは幸いだったと言うべきかも知れない。

それにしても私の中ではいまだ妻という言葉が息づいている。
あれから10年という歳月が過ぎたが、妻への愛の形を持ち続けているのだ。
妻は今頃幸せな家庭を築いているだろう。二人の子供にも恵まれたと風の便りに聞いた。それは喜ばしいことだった。
妻の幸せを願う。それが私の愛の形なのだと信じ続けてきた。

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