「今は幸せです。私のことはどうか忘れて、あなたも幸せになってください。
芹里奈」
妻からの最後の手紙だった。
三行半にも満たない短いものであったが、それまでに話尽くした後の、妻の凝縮された心が私には見えていた。差出人の住所が書かれていない手紙だった。
まだ日本にいるのか、韓国の人となったのか、さすがにそこまで知ろうとする気持ちはなかった。
もし返信するなら、きっと私も同じことを書いただろう。
そんなことを考えながら激しい胸の痛みを抑えて、引き裂いた手紙をテープで復元し、封筒に返した。
あれは今もアルバムに挟んであるはずだ。
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