私はどうしても自分の気持ちを表現できなくて胸のつかえを取ることが出来なかった。そしてこの私の気持ちは、こんな小さなペンの細い線では捉えきれないのだと思った。
それが自分に都合のいい逃避であることは誰よりもよく知ってはいたが、それでも私は抱きかかえるほどの筆がほしいと考えた。私はその巨大な筆を千歳川の流れに浸して、真黒な墨をたっぷりとその穂に含ませ、思いの果てるまでこの雪原に描線を描いてみたい。それはきっと素晴らしいに違いないだろう。私の空想はあたかも大地を揺るがすような表現となって夢の中に表れた。
だが現実は貧弱な私の絵がスケッチブックの紙の上に張り付いているばかりで、それはただ哀れを誘う一枚の紙切れに過ぎなかった。
その悔しさのはざまから幾らかの詩句が浮かんで来た。私はいさぎよくスケッチをあきらめ、浮かんでくる詩句をスケッチブックに書き留め始めた。詩は私の良し悪しが分からず何のためらいもなく、ただ流れ出る詩句を速記のように写し取るのだった。ちらりとその稚拙さを思ったが、そんなことはどうでもいい事だった。私に必要なのは、張り裂けんばかりの心のうねりを外に吐き出すための表現だったのだ。
スケッチブックになぐり書きした詩句は数ページに及ぶ次のようなものだった。
HPのしてんてん
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