能生地区の権現岳の雪渓に案内してもらったが、海岸から20分強、人家まで10分弱という近さに驚く。
雪渓には岩壁から崩落した花崗岩の礫が点在しており、30年ほど前に多くの人が亡くなった「柵口雪崩」の現場であることを知った。
途中にある巨大な柵はキングコングの檻のようだが、二度と惨事を繰り返さないために作られた防護柵であるらしい。
山岳地帯から海岸までの急峻な地形は、稀有な絶景を産み出しもするが、それは災害多発地帯に住む人々の苦難の歴史が刻まれた風景でもある。
土木工学の概論本には、国内有数の地滑り地帯、河川氾濫地帯、波浪災害地帯と、各項目ごとに糸魚川が紹介されていて、呆れたことがある。
雪解け水がコロコロと流れる音だけが聴こえていた。