欠損した三ケ月のペンダントのリメイクを依頼された。

茶色の先端のペンダント孔が欠損した部分。とろりとした質感だから、小滝川上流部あたりの原石だろうか?
向きを変えてみたら鳥か魚に見えてきたので、様子をみながら少しづつ修正していく。途中からヒスイが鳥です!と主張を始めた。

私の加工は最初に5割ほどのイメージから始めて、作りながら形を整えていく流儀なので、特にリメイクは楽しいし、最初のプラン通りにつくると予定調和の嫌ったらしさを感じる。

人の作ったヒスイ製品に手を加えるのは無礼であるとリメイクを断る職人は多いが、モノは所有者に帰属すると私は考えているから、所有者が希望すれば極力は断らない。
しかし何度かは「参りました!」と、手を入れる隙が見いだせずにお断りしたこともある。「わたし如きが畏れ多い」と、逢ったことのない作者に敬意を感じるのだ。
同じことを高名な和裁職人から聞いたことがあるから、モノ作りのプロに共通した感覚であるらしい。

刀剣や甲冑なども所有者が変わることでリメイクされてきた歴史があるし、和服だってそうだ。幕末から明治の好事家たちも、競って古物を自分の趣味に合わせた意匠に変えて愛玩してきた。
所有者の意向で形を変えて生き続けるのが日本のモノ文化。捨てられたり、タンスのコヤシになるよりはずっといいと思う。