温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

八甲田ホテル その2(お食事)

2025年01月09日 | 青森県
前回記事の続編です

前回記事では豪雪の厳冬期にレンタカーで「八甲田ホテル」へアクセスするまでの過程と、ホテルの立派な造り、そしてお部屋の様子をご紹介しました。今回記事では夕食と朝食を取り上げます。
人里から完全に隔絶された八甲田山中にある「八甲田ホテル」で宿泊する場合、自分で食糧を持ち込まない限り、素泊まりという選択肢はありえません。周囲に飲食店や商店はありませんし、特に冬期は21時から翌朝7時半まで、酸ヶ湯へアクセスする国道103号・国道394号ともに途中のゲートで閉鎖されるため、夕食のために人里へ降りてモタモタしているとホテルへ戻って来られなくなります。そもそもこのホテルに泊まるお客さんは素泊まりで済ませようなんてケチなことは言わないかと思いますが、せっかく宿泊するのですから、ホテルご自慢の料理に舌鼓を打って、ブリリアントな時間を過ごしましょう。

●夕食

こちらのディナーは、宿泊予約時にフレンチのコースと和食のコースから選択できるのですが、和食処が2024年9月にリニューアルされたそうですので、今回はそんな和食処でいただくことにしました。


すっきりとした合理的かつ現代的な構造でありながら、木材の多用や暖色系照明によって和の趣きもしっかり感じられる、ぬくもりたっぷりの食事処。


まずは窓外の雪を眺めながら生ビールで喉を潤します。


まずは前八寸。ガラスの器に盛られた料理は、右上から時計回りに、青森サーモンのスモーク、ワカサギの南蛮酢、青菜のお浸し、岩もずく、そして筒井紅蕪豆腐と白蕪のすり流し。
続いて椀物で、青森県の中でも旧南部藩領や下北地方に伝わる郷土料理の「けいらん」が入った真鯛の潮汁。


お造りは、マグロ、ヒラメ、ボタンエビといういかにも青森県らしいラインナップ。
そして焼き魚は青森県産ブリの酒焼きで、兵庫県六甲の名産である有馬山椒によりピリッとさせたタレをつけていただきます。山椒の辛さと風味がブリの美味さを引き立ててくれました。


強肴、所謂メインディッシュは低温調理した津軽鴨ロース。鴨の上に添えられているのは紅玉リンゴです。


タコの炊き込みご飯、味噌汁、そしてデザートで締めくくります。
食べて美味しいだけでなく、見て美しく、香って芳しく、ご当地産食材の持ち味や魅力が存分に活かされた、大変結構なお食事でした。

●朝食

朝食は和食処とは別のレストランでいただきます。ディナーでフレンチのコースを頼めば、おそらくここでいただくことになるのかと思います。


さすがフレンチディナーが提供されるレストランだけあって実に豪華な造り。調達するだけでも非常に苦労したのではないかと想像される太くて立派な丸太を組んだログハウス建築の高い天井から、ホテルオリジナルの特注シャンデリアが吊り下げられており、材工合わせて算盤を弾いたらとんでもないことになりそうだ、と下世話な想像をしながら室内を見回し・・・


窓外の真っ白な雪を眺めて、案内された席へ座ります。


朝食は和食と洋食から選択可能で、私は和食を選択しました。塩鮭、玉子、煮物のほか、青森県が日本屈指の生産量を誇る長芋、深浦の特産品である「つるつるわかめ」、リンゴのコンポート、リンゴジュース、そして青森県の新ブランド米「はれわたり」など、ご当地の食材をふんだんにつかった品の数々。そして…


津軽の郷土料理である貝焼き味噌です。自分で火を点け、生卵を溶いて中へ注ぎ、程よく固くなったら自分で火を止めて食べます。ご飯が進む美味しさで、ついついお櫃ごとご飯をおかわりしてしまいました。

●棟方志功




食後に気づいたのですが、館内には青森を代表する版画家棟方志功の作品が複数展示されていました。生前の棟方志功は、このホテルの本館に相当する酸ヶ湯温泉旅館を度々訪ねていたようですから、その時の縁で作品が提供されたのかもしれませんね。

お待たせしました。
次回記事では肝心のお風呂について取り上げます。

次回に続く。

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八甲田ホテル その1(現地まで・お部屋)

2025年01月07日 | 青森県
(2024年12月訪問)
あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。
さて、ここ数年の拙ブログでは1年以上前に訪ねた際の記録を週1回のペースで小出しに投稿しており、今後もしばらくは同様のペースで記事をアップしてゆくことになりそうですが、せめて新年一発目ぐらいは新しく且つちょっと豪華な感じの訪問記をご紹介することによって賑々しくスタートを切りたいので、今回記事では昨年末に一晩利用した青森県八甲田山中の「八甲田ホテル」について取り上げます。

「八甲田ホテル」は泣く子も黙るほど有名な「酸ヶ湯温泉旅館」と同じ酸ヶ湯温泉株式会社が運営するホテルで、「酸ヶ湯温泉旅館」同様に年間営業です。八甲田の山中にある酸ヶ湯温泉といえば毎冬の記録的な積雪で全国ニュースに取り上げられますが、「八甲田ホテル」はその酸ヶ湯から更に1キロほど奥に位置しており、冬期の国道103号線はこの「八甲田ホテル」で完全に通行止となり、その先は数メートルもの分厚い積雪によって行く手が阻まれます。

酸ヶ湯までは青森駅や新青森駅から路線バスが通年運行されていますが、冬期とそれ以外では運行ダイヤが異なっており、しかも利用者減少なのか近年のドライバー不足なのか理由はわかりませんが、いつの間にやら運行本数が減らされていて、現在の冬期運行ダイヤですと、酸ヶ湯行最終便は青森駅10:50発→酸ヶ湯温泉12:30着というかなり早い時間設定となっており、これですとチェックインがかなり早くなり、旅程の自由度も減ってしまいます。
青森駅付近を14時に出る酸ヶ湯温泉旅館の送迎バスを利用することもできますが(事前連絡必要)、せっかく大好きな青森県へ行くのだから他の温泉もハシゴしたかったので、今回はレンタカーを運転して「八甲田ホテル」へ向かうことにしました。


もし新青森駅から車で直接「八甲田ホテル」へ行くのであれば、国道7号などで青森中央インター方面へ東進してから国道103号線をひたすら南下すれば良いのですが、上述のように津軽地方の温泉をハシゴしたかった私は、新青森駅付近でレンタカーを借りてから国道7号で弘前方面へ向かい、リンゴ畑越しに聳える岩木山を眺めながら何ヶ所かの温泉をめぐり・・・


湯めぐり後はまず国道102号で黒石市街を抜け、温湯温泉の先で左折して国道394号線に入り、あとは八甲田山へ向かって真っ白な雪の山道をひたすら登って行きました。
山道とはいえしっかり除雪されているので、雪道運転に慣れていれば問題なくアクセスできるかと思いますが(むしろ市街地の方が怖いかも)、とはいえ時おり上の画像のようなホワイトアウト状態に見舞れましたので、慎重に前方を確認しながらハンドルを握ったのでした。


城ヶ倉大橋を渡って国道103号線に合流したところで、前方を走るJRバスに追いつきました。あれ?この時間帯に定期便なんてあったっけ?と思いつつ車両後部の行先表示を見たところ、このバスは回送でした。おそらく酸ヶ湯14:50発の青森駅行として運行されるのでしょうけど、どうせ酸ヶ湯まで回送するのならば客扱いしてくれたら良いのになぁ、と短絡的に考えてしまった私は現地の事情を知らないズブな素人なのでしょう。


「酸ヶ湯温泉旅館」を左に見ながら通過して更に奥へ進みます。


冬期の国道102号線は酸ヶ湯温泉から約1キロほど先の地点で通行止となり、その先はご覧の通り、八甲田山中に積もった豪雪の壁によって遮られます。この雪の壁の手前で右に曲がってアプローチ路を数百メートル入ると・・・


「八甲田ホテル」に到着です。
冬期に車で到着した場合は、まず正面出入口(車寄せ)に車を止めてチェックインし、鍵をフロントに預けます。するとスタッフの方が車を駐車場へ移動してくださいます。いわゆるバレーパーキングみたいなものですが、これはサービスの一環というより、駐車場をこまめに除雪する必要があり、その都度お客さんの車を移動させなくてはならないため、このような措置を取っているものと思われます。


1991年に建てられたこのホテルは基礎以外は全て木造で、しかも立派な丸太が組まれたログハウスのような構造となっており、エントランス廻りの様子から見ても、建設費は相当なものだろうということは想像に難くありません。


スタッフの方に館内を案内されながらたどり着いたこちらが、今回私に宛がわれたお部屋です。一人旅にもかかわらずかなり広いお部屋なので少々持て余してしまいましたが・・・


清掃が行き届いた綺麗な室内は暖房がしっかり効いており、二重窓なので断熱性も問題なし。
窓の外は深い雪ですが、室内は浴衣で過ごせます。


室内にはトイレやバスなど水回りも完備。


ステンレスのポットに入っている冷水は八甲田の伏流水とのことで、お風呂上がりに飲むと清冽な喉越しが実に美味い。またその水を沸かして淹れるホテルオリジナルのドリップコーヒーも美味。
市街地から遠く離れた、本来は人々の生活と隔絶されているはずの深い山と厚い雪に囲まれた場所なのに、むしろ市街地よりも快適に過ごせるだなんて、なんだかとっても不思議な感覚です。

ここまでのご紹介でかなり長くなってしまいました。
次回記事ではお食事を、その次でお風呂の様子を取り上げます。

次回へ続く。


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島新田温泉 金城の里 2023年7月再訪

2024年12月20日 | 新潟県

(2023年7月訪問)
今回ご紹介する「島新田温泉 金城の里」は拙ブログで2010年に取り上げたことがあり、それ以来の13年ぶりの再訪となります。
2010年に取り上げた際に、この温泉施設は「清掃工場建設に伴う地域住民対策のような意味合いで設けられたため、地元民以外の外来客に対してあからさまに宣伝していない」という旨を述べたのですが、その後この温泉を取り巻く環境が変わったらしく、寧ろ多くのお客さんに利用してもらおうというスタンスを取っているように見受けられ、ガイドブックやネットの観光案内など、いろんな媒体で紹介されるようになりました。


こちらがその清掃工場。施設の目の前に位置しています。
当然ながら温泉浴場はこの工場の余熱を利用しているのでしょう。


券売機を入浴券で購入し、窓口に差し出して入館します。
そして上画像の広間を抜けてお風呂へ向かいます。


今回の訪問では、駐車場に多くの車が停まっている様子を見て、さぞかし混んでいるのだろうなと想像できたのですが、入館したら館内は案の定多くのお客さんで賑わっており、人気の程が窺えました。なお脱衣室はエアコンが効いており、快適に利用できます。


場内混雑及び撮影禁止のため、当日のお風呂の様子は撮影しておりませんが、浴場の内部は13年前の訪問時とほとんど変わっていないようですので、以前の記事で掲載した当時(2010年)の画像を再掲載いたします。ご了承ください。
男女別のお風呂はそれぞれ内湯のみで露天風呂はありませんが、天井が高く窓も大きいので、内湯でも非日常的な開放感を得られるかと思います。また床には緑色凝灰岩の石材が敷き詰められており、足裏から伝わる感覚が良好です。

窓に沿って据えられている長方形の浴槽は目測で3m×6mほどの大きさ。縁には黒い御影石、浴槽内はスカイブルーのタイルが用いられています。


洗い場にはシャワー付きカランが2手に分かれて計8ヶ所設けられており、各ブースの間には仕切り板が取り付けられていますから、隣客との干渉を気にせず体を洗えます。なお450円(2023年の訪問時は350円)という格安料金にもかかわらず洗い場にボディーソープやシャンプーが備え付けられているのが嬉しいところ。


湯口の形状も2010年と変わっていませんでしたが、肝心の湯使いが若干変わっているようでした。と申しますのも、以前は弱いながらもタマゴ臭が嗅ぎ取れ、口に含むとほのかなタマゴ味とほろ苦みが感じられたのですが、今回入ってみますとそのような源泉由来の特徴はあまり感じられず、無色透明及び無味で、しっかりと塩素消毒臭が放たれていたのです。格安料金で大きなお風呂の温泉に入れるのですから、どうしても混雑は避けられず、不特定多数のお客さんを受け入れる施設としては衛生管理の上で塩素消毒が必要となるのでしょう。やむを得ませんね。なお湯使いに関しては、以前はかけ流しで、館内表示によれば現在もかけ流しのようです(でも循環装置が稼働しているように見えたのですが、私の勘違いかしら…)。

いずれにしても450円で温泉に入れるのですから、物価高騰の昨今ではとても有り難い施設ですね。


アルカリ性単純温泉 35.7℃ 83L/min(自噴) 溶存物質252.7mg/kg 成分総計252.9mg/kg
Na+:56.9mg(87.02mval%),
Cl-:12.2mg, SO4--:17.9mg, HCO3-:103.7mg(60.93mval%), CO3--:9.0mg,
H2SiO3:40.3mg,
(平成25年10月8日)
加温あり
加水・循環なし
消毒あり(塩素系薬剤を使用)

新潟県南魚沼市島新田764-2
025-782-1739

10:00~21:00(最終受付20:30) 月曜定休
450円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★




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某所の保養施設的な温泉

2024年12月13日 | 新潟県
(2023年7月訪問)
今回は諸事情により外観を写さずお風呂の画像だけを掲載いたしますが、このブログをご覧の一部のマニアな方なら一目見てすぐに場所を特定できるかと思います。地方には従業員の福利厚生や地域への貢献を目的として、企業や団体が自前の温泉浴場を設けて対象者に開放しているケースがあります。今回ご紹介する温泉浴場もまさにその典型例であり、従業員のみならずご近所の方に厚意で開放されています。
こちらの温泉は以前からネット上にポツポツと情報が上がっており、だからという訳ではありませんが、私も某日に利用させていただきました。


階段を上がった先にある浴場は、ご覧の通り、とても立派なお風呂。有料施設のお風呂だとしても違和感ありません。
なおお風呂は1つしかないので貸切で使います。


湯口から温泉がドバドバ惜しげなく注がれています。湯量豊富なんですね。
こちらでは豊富な温泉を活用して夏季にマンゴーの栽培もおこなっているんだとか。
なお画像手前に写っている錆びた配管は以前湯口として使われていたもの。サビサビ且つトゲトゲの形状がこの温泉の歴史を物語っているようです。現在はこの配管ではなく、その奥に設けられた塩ビ管から加水された源泉が投入されています。お湯はほぼ無色透明で、口に含むと出汁味含む塩味が感じられる他、弱い金気と弱いタマゴ味及びタマゴ臭が感じられます。肩まで湯船に浸かると全身がツルツルスベスベの滑らかな浴感に包まれてとっても気持ち良く、それでいて温浴パワーも力強いので、お風呂上がりにはいつまでも汗が引きません。

ところで、私がこちらを訪問した2023年夏の時点で、建物の裏手では新しい建物が建設中であり、話によれば外来者でも利用できる温泉浴場とのこと。あれから1年以上が経過しましたが、新浴場の情報は聞こえてきません。どうしちゃったんだろう・・・

新浴場が開業してこの温泉のすばらしさが多くの方に伝わることを願いながら、今回この記事をアップ致しました。

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森上温泉

2024年12月06日 | 新潟県

(2023年7月訪問)
前回記事に引き続き新潟県の温泉を巡ります。と言っても今回訪ねるのは入浴施設ではありません。
新潟県道24号線を北上して旧山古志村から旧栃尾市方向へ車を走らせてゆくと、こんな場所に行き当たります。
路傍に水色のコンテナ、そしてベンチが置かれていますね。


道路の逆方向(北側)から見るとこんな感じ。


周囲は山間の田園地帯で、観光施設はおそか、商店すらありません。道沿いに民家がぽつんぽつんとあるばかりです。


青いコンテナには無色透明の水が引かれており、その傍らには「森上温泉」と書かれた看板が立っていますね。温泉マニアの間で有名な野良の温泉です。


温泉と書かれているものの、黒いホースから出てくる水の温度は20℃前後でしょうか。温泉というより鉱泉と言った方が良いのかもしれませんね。


黒いホースは茂みの奥の方から引かれているようですね。
どうやら湧出地点では硫黄感を有しているそうですが、この吐出点ではそのような特徴も消えてしまうのか、無色透明無味無臭のごく普通の山水みたいな状態でした。好事家のマニアの方はここで入浴なさるそうですが、ここ数年頓に気力が衰えている私は、この水に手を触れる程度で済ませ、入浴は断念しました。


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