温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

ヨシヤーの湯

2019年03月07日 | 山梨県
今回はご紹介する鉱泉は、温泉探険をメインテーマとする数々のブログに度々登場している、マニアにはよく知られた箇所です。



場所は前回記事で取り上げた増富温泉の近く。塩川を堰き止めてできたダム湖は、その名をみずかき湖と称します。前回記事で私が登った瑞牆山の名前を冠しているわけですが、瑞牆という漢字は殆どの人が読めませんので、親しんでもらえるよう名峰の名前をひらがな表記にしたのでしょうね。
さて、湖畔に沿って伸びる道を車で走ってゆくと、上画像のような東屋が建つ駐車スペースがありますので、そこで車を停めます。



周囲はこんな山に囲まれています。ちょうど湖の最奥部にあたるため、景色に占める湖水の割合は少なく、目に入ってくるものはひたすら山ばかりです。ちょうど紅葉の時期に訪れたため、山は紅や黄色に染まっていました。



駐車スペースの前には湖の水際まで下りられる階段があるので、そこを下ってゆくと・・・



下りきった先の広場に、上画像のような看板、そして鉱泉が注がれている水槽が一つ置かれていました。先ほどの階段を含め、あまり人が訪れそうに無い場所にもかかわらず、ダムの管理下にあるためか、よく整備されているのが印象的です。



正面に立ってみました。
マニアックな温泉ファンの方々もブログなどで取り上げていらっしゃる「ヨシヤーの湯」に到着です。



解説板によれば、元々この谷合に水田があり、以前から鉱泉が湧出していたんだとか。その鉱泉は1km下流の塩川集落に引かれて、湯治にも使われていたそうですが、ダム建設に伴い塩川集落が湖底に沈んでしまうため、この鉱泉を残して集落を偲ぼうというコンセプトで、現在の「ヨシヤーの湯」の水槽が設けられたようです。ヨシヤーというユニークな名前は、葦(ヨシ・アシ)が茂っていた場所で湧出していたことに由来しているんだそうです。



時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」で当地の地図を調べてみました。
(同じ地図はこちらからもご覧いただけます)
上画像で、左側はダム湖ができる以前の昭和50年、右側は現在の地図です。同じ場所を示した地図を違う年で比較しています。これによれば、昭和50年に谷頭の水田があった箇所と、現在「ヨシヤーの湯」の水槽が設置されている場所は、ほぼ同じであることが分かります。



人が入るには小さい水槽は、浴槽と呼べるほどの容量は無く、鮮魚店の生け簀みたいです。先人のブログを拝見すると、果敢というか無謀というか、この水槽に入った強者もいらっしゃるようですが、私は遠慮させていただきました。というのも・・・



小さくて体が入りそうにないのはもちろんのこと、かなり冷たいのです。パイプから注がれている無色透明の鉱泉は、私の体感で20℃未満。サウナの水風呂として入るのならともかく、私が訪れたのは紅葉も終わりかけていた晩秋の日暮れ時。こんな温度の冷鉱泉に入ったら確実に風邪を引いてしまうでしょう。塩川集落があった頃でも沸かして入浴していたそうですから、このまま入るのは余程の好事家でしょう。かく言う私も頭のネジが何本か外れているクレイジーですので、本音を言えば入りたかったのですが、ここでは手を浸すだけにして、鉱泉をテイスティングしてみることにしました。m

説明看板によれば「塩味が強」いと書かれているのですが、同じ文章にデータも記載されており、1リットルに含まれるナトリウム及びその化合物が845mgで、塩化物イオンが1390mgとのことですから、たしかに食塩泉としての要素を有しているものと推測されますし、山の中で湧出する鉱泉にしては塩分が多いには違いありませんが、塩辛かったり、しょっぱいと表現するほどではありませんから、以前から私が感じたように薄塩味程度だったものと思われます。その一方で、この鉱泉は炭酸味がとても強く、口に含むとシュワシュワ感が口の中に広がり、独特の味が舌にしっかりと残りました。
付近の増富温泉も炭酸カルシウムを多く含む鉱泉ですから、同じような系統の鉱泉として炭酸が多いのもうなづけます。とはいえ、金気はありません。端的に言えば薄塩味&炭酸といった特徴の冷鉱泉です。もしご興味があり、且つ衆人の目線など気にしないという御仁でしたら、真夏なら入浴できるかもしれませんね。


山梨県北杜市須玉町小尾

いつでも入場可
無料

私の好み:評価対象外




コメント (8)
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増富温泉 津金楼

2019年03月02日 | 山梨県
半年前の記録で申し訳ございません。
2018年秋、日本百名山のひとつである山梨県瑞牆山を登りました。瑞牆と書いてミズガキと読むことを、私は登る直前に知ったのですが、そんな無知な私でも十分に楽しめる魅力的で素晴らしい山でした。



今回の登山のスタート地点である「みずがき山自然公園」にて。
園内の紅葉、そして荒々しい岩肌が特徴的な瑞牆山。
この公園に車を停め、瑞牆山を登りながら反時計回りで周遊してまいりました。



不動滝ルートを登ること約2時間で頂上に到着。



裏道的な存在である不動滝ルート(黒森コース)を登っている時にはわからなかったのですが、紅葉シーズン終盤にもかかわらず、山頂には多くの登山客が登頂達成を悦んでいました。この山に登る多くの方は、瑞牆山荘側のルートを利用するでしょう。



山頂で背嚢をおろし、持参したおにぎりを頬張りながら360度の大パノラマを堪能。
↑画像は前年に私が登った八ヶ岳。自分が登ったことのある山を、別の山の山頂から眺めることって、特別な感慨がありますね。



山頂付近ではまるでキノコがニョキニョキ生えるように奇岩が屹立していました。ちょっと日本離れしたこの光景に、登山者は誰しもが反射的にカメラを向けていました。かく言う私もその一人。
そんな奇岩の彼方には南アルプスの稜線が左右に広がっていました。山稜が重畳する壮大な景観を眺めながら頬張るおにぎりは、どんな三ツ星レストランの料理よりも美味しいはずです。なおこの日の富士山は雲に隠れてしまい、姿を現すことはありませんでした。



さて、無事下山した私は、登山の汗を流して疲れを癒すべく、麓の温泉街である増富温泉へと向かいました。温泉街には数軒のお宿が営業していますが、今回訪ねたのは温泉街の一番奥に位置している「津金楼」です。大湯元を名乗っているお宿であり、なんと明治18年創業という老舗でもあります。玄関で声をかけて日帰り入浴をお願いしますと、快く受け入れてくださいました。



湯銭を支払った時、宿の方に「増富温泉は入ったことありますか」と聞かれました。後述しますが、増富「温泉」と称しているものの、当地で湧出している温泉の温度は20℃前後であるため、事情を知らない方がいきなり非加温で冷たいままの「温泉」に接すると驚いてしまうのでしょう。しかもこちらのお風呂には非加温浴槽がありますから、その入浴方法をご存知ないお客様ではないか、という配慮に基づいて声をかけて下さったんだと思います。
こんな屁理屈をこねられる私は当然ながら事情を知っていますので、「大丈夫です」と答えてお宿の方の説明を遠慮させていただきました。
帳場前にある階段で2階へ上がり、廊下を進んで浴室へ向かいます。館内は綺麗にされているものの、寄る年波を隠すことはできないようで、館内の随所に昭和の鉄筋コンクリ建築らしいレトロな雰囲気が横溢していました。


 
途中で大広間の前を通過します。このお座敷って休憩室として使えるのかな? なおその前には冷水のサービスが用意されていました。



長い廊下を歩き、やっとのことで浴室入口に到着です。脱衣室の内部も昭和から時が止まったかのような佇まいですが、特に不自由なく使えますので問題ありません。


 
男女別のお風呂は内湯のみ。男湯の場合、入って右側に洗い場が設けられており、カランが4ヶ所並んでいます(うちシャワー付きは3基)。


 
一方、洗い場の反対側には大小の浴槽がそれぞれ1つずつ並んでいます。
脱衣室側にある小さな方(↑画像)には加温された鉱泉が溜められています。小さいと言っても6~7人は入れそうな容量を有しており、非加温浴槽からの流れ込みを防ぐためか、隣の浴槽よりちょっと高くセッティングされています。
この浴槽では加温したお湯を循環させていますが、冷たい源泉もチョロチョロ注がれており、結果的に41℃前後という長湯したくなるような夢心地の湯加減に調整されていました。お湯からは金気味と石灰味が感じられるほか、若干の甘みや塩味も得られますが、どの特徴も非加温源泉よりは弱まっているように感じられました。またお湯の色はモスグリーンのような色を帯びて濁っていました。



一方、窓に面しているこの浴槽は源泉100%の冷たい鉱泉が張られた主浴槽。山や渓流の景色を眺めながら湯浴みできます。容量は失念してしまいましたが、かなり大きいので相当人数が同時に入れそうです。


 
岩積みの湯口から冷たい非加温源泉が投入されており、完全掛け流しの湯使いを実践しています。明るい黄土色に濁るお湯がオーバーフローする床一面には、千枚田のような析出がしっかりと現れています。また湯口周りの壁面にも鱗状の模様ができています。炭酸カルシウムが多いのですね。
浴槽では濁っているお湯も、湯口から出た瞬間は無色透明。空気に触れたり大気中に出て減圧されることにより濁りが生じるのでしょう。先程から冷たい冷たいと申し上げておりますが、そうは言っても20℃くらいなので、湯船に入る瞬間こそヒヤっと冷たいのですが、一度入ってしまえば体がすぐに慣れ、むしろ気持ち良く、ずーっと長い間浸かっていられます。増富温泉はラジウム鉱泉としても知られており、虚実はさておき、ラジウムの効能、つまり放射能泉の効能を得るには加熱してはいけませんから、この非加温源泉は当地の温泉の恩恵を受けるために欠かせない施設なのであります。

湯口のお湯をテイスティングしてみますと、山の中の鉱泉とは思えないほどしょっぱく、鉄さび系の金気味や土気味、そして炭酸味が強く得られます。また、出汁味も含まれており、金気の匂いも嗅ぎ取れます。口に含むとシュワシュワ感が口腔の粘膜に伝わってきたのですが、でも肌への泡付きは無かったように記憶しています。湯中ではキシキシ引っかかる浴感が肌に伝わります。こうした特徴を見ていきますと、泉質名こそナトリウム-塩化物温泉ですが、実際には重炭酸土類泉のような特徴を兼ね備えた実に面白い鉱泉であることはわかります。
塩分や炭酸のおかげなのか、非加温の湯船に浸かっても湯上がりは体の芯からポカポカするのが実に不思議で面白いところ。登山で疲労した筋肉をひんやりした湯舟でクールダウンしながら、不思議な温浴効果で心身をのんびり癒すことができました。ラジウム云々は正直なところ眉唾なのですが、食塩や炭酸の効果は本物だと思います。しかもこの鉱泉は自然湧出している自家源泉。温泉ファンでしたら是非入っておきたい一湯です。
派手さこそありませんが、質実剛健と言うべき実力派の良質な鉱泉でした。


津金楼源泉
ナトリウム-塩化物温泉 26.0℃ pH6.3 13.7L/min(自然湧出) 溶存物質10254.8mg/kg 成分総計1115.1mg/kg
Na+:2940.5mg(80.80mval%), Mg++:18.8mg, Ca++:269.7mg(8.50mval%), Fe++:7.6mg,
Cl-:3927.3mg(74.33mval%), Br-:9.6mg, I-:0.4mg, SO4--:606.5mg(8.47mval%), HCO3-:1543.1mg(16.97mval%),
H2SiO3:206.6mg, HBO2:176.1mg, CO2:860.3mg,
(平成21年5月15日)

山梨県北杜市須玉町小尾6699
0551-45-0711
ホームページ

日帰り入浴10:00~16:00
800円(1時間程度)
貴重品帳場預かり、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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甲府市 山宮温泉

2018年11月28日 | 山梨県
 
甲府市街から昇仙峡へ向かって伸びる県道を北上していると、住宅地の中にいきなり現れる温泉旅館が今回取り上げる「山宮温泉」です。旅館とはいえ、実際には地元にお住いの方が銭湯兼居酒屋食堂として愛用なさっており、ローカル色の強い温泉と言えるでしょう。

県道沿いに細長い造りをしているこの温泉は2015年にリニューアルされたばかり。新しい建物の1階が入浴施設で2階が食堂となっており、棟続きで昇仙峡側に並ぶ建物がどうやら宿泊棟のようです。駐車場は周囲に点在しているので、もし施設に近い場所に空きが無くとも、案内表示を頼りに、他の駐車場を探しましょう。



引き戸を開けて玄関に入り、湯銭と一緒に下足箱のキーを番台に預けると、引き換えに黄色い番号札(リストバンド)が手渡されます。入浴のみならこのバンドを使う機会はないのですが、館内で飲食など各種サービスを受けるときは、このバンドで退館時に一括精算します。
お風呂は番台の右手の廊下を進んだ先にあります。2つある浴室は男女入れ替え制となっており、私が訪問した日は手前側(廊下右側)のお風呂が男湯、奥が女湯でした。脱衣室のロッカーはコイン不要で任意の場所を使えます。室内にはドライヤー・扇風機・エアコンなど各種設備が完備されており、やや狭いが綺麗なので、気持ち良くに使えます。



(館内写真はパンフレットより転載させていただきました)
お風呂は内湯のみで、露天はありません。ウナギの寝床のような建物の外観から想像できたものの、正直なところあまり広くなく、建物の形状に沿って奥に長い浴室内は、その日の汗を流そうとするお客さんで大変混雑していました。それだけ人気の温泉なのですね。

入って右側の壁沿いに洗い場が配置され、シャワー付きカラン7基が一列に並んでいるほか、入口すぐ右側には、ぬるめの源泉を用いた掛け湯も用意されています。カランのお湯もおそらく源泉かと思われ、明らかに水道水とは違う質感、具体的には温泉由来と思しき味がしっかり感じられました。

浴室入って左手の窓側には各種浴槽が並んでいます。手前から順に、サウナ、一人分の水風呂、源泉浴槽、加温浴槽の順です。最も奥の加温浴槽は4~5人サイズで、42℃くらいまで加温されており、お湯は完全な循環仕様で底部よりしっかり強力吸引されています。お湯からは塩素の臭いも放たれていました。
一方、源泉(非加温)浴槽は7~8人サイズで、加温槽との仕切りの上に湯口があり、加温・源泉非加温それぞれに対してお湯が注がれています(加温槽には循環加温湯、源泉槽には非加温源泉湯をそれぞれ投入)。この源泉槽は人気があり、特に訪問時のような夏の夜は、ぬるくて爽快なので人気集中。しかも皆さん長湯傾向にありますから、回転が悪いので余計に混んでしまいます。でも一度源泉浴槽に入れば誰しもが長湯したくなってしまうはず。なお私が訪問した日曜夜7時には常時5~6人が源泉槽に入っていました。

なお館内掲示されている分析書には湯使いに関する表示はありませんが、私の推測ですと、源泉浴槽は非加温で加水循環消毒の無い完全掛け流し、加温浴槽は循環消毒も行われているようでした。



(館内写真はパンフレットより転載させていただきました)
なお、私の訪問日に「女湯」だったもう一つの浴室はこちらです。こちらのお風呂は結構広そうですね。
どうやらこちら側は外に出られ、屋外には壺湯が設けられているんだとか。

お湯の見た目は無色透明。分析書には「無味無臭」と記載されているのですが、実際には食塩泉らしい知覚的特徴を有しており、具体的にはほんのり微かに塩味や、硬水のような味が得られました。またカランの湯からはわずかにモール泉のような臭素感(特に香り)も感じられました。湯中では印象的ではないもののしっかりとしたツルスベ浴感があり、また源泉槽では泡付きも確認できました。なお、この泡が源泉由来なのか、あるいは単に投入時の勢いによるものかは不明です。

いや、下手な屁理屈はどうでも良いのです。36℃前後の非加温源泉は、単に不感温度帯のぬる湯であるばかりでなく、実に滑らかな浴感も持ち合わせているので、入浴時の体への負担が軽く、心身が非常に落ち着くのです。副交感神経によるリラックス効果が期待できるでしょう。決して広くないお風呂であるにもかかわらず、浴室全体で12人前後は常に利用していました。洗い場も時々埋まっているような状況です。それだけこの温泉は地元の方から人気なのです。



お風呂のみならず、食堂も賑わっていました。私はお風呂上がりに2階の食堂で夕食をとったのですが、店内には座敷もあればテーブル席もあり、老若男女が食事を楽しんでいらっしゃいました。
甲府市民に愛される大人気の温泉でした。


ナトリウム-塩化物温泉 36.9℃ pH7.6 湧出量未測定(動力揚湯) 溶存物質1411.9mg/kg 成分総計1411.9mg/kg
Na+:420.6mg(81.30mval%), Ca++:76.7mg(17.01mval%),
F-:6.8mg, Cl-:745.0mg(92.68mval%), Br-:2.4mg, I-:0.4mg, HCO3-:74.5mg,
H2SiO3:55.0mg, HBO2:17.9mg,
(平成21年4月27日)

山梨県甲府市山宮町2532−1
055-251-4263
ホームページ

10:00~22:00 第1水曜定休(祝日の場合は営業)
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (10)
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増富温泉 増富佼成寮

2018年11月21日 | 山梨県
今回記事から山梨県へ移ります。

 
ラジウム温泉として名が知られ、古くから文人墨客にも愛されてきた山梨県の増富温泉。その温泉街へ向かう一本道を真っ直ぐ進んでゆくと、温泉街へ入る手前に小さな看板が現れます。その看板にへ導かれるように左折して路地に入ると・・・


 
すぐに今回の目的地である「増富佼成寮」に辿り着きました。その名の通り立正佼成会の施設なのですが、信者ではなくても誰でも利用できます。いかにも寮らしく質実剛健というべきか、療養保養施設のような無機質な印象の外観からは、豪華さや非日常性といった要素は伝わってきませんが、建物自体は綺麗であり、しかも積極的に日帰り入浴をアピールしていますので、今回入浴のみの利用でお邪魔することにしました。


 
玄関の下足場には黒い大きなボタンがあり、それを押すとスタッフの方が出てくるので、その人に入浴料を支払って中に入ります。玄関に置かれたガラスケースの中には、温泉の配管から採ったと思しき大きなスケールが展示されていました。後述しますが、こちらの温泉は炭酸やカルシウムが多いため、配管内はすぐに炭酸カルシウムで詰まってしまうのでしょうね。



玄関を上がって真正面に進んだ突き当たりに浴室の暖簾がさがっていました。私の訪問日、女湯は右側、男湯は正面でしたが、その日の宿泊客の状況によって暖簾を替えるようです。ドアを開けて中に入ると病院みたいなカーテンが掛けられており、その向こうが脱衣室となっていました。


 
タイル貼りのお風呂は内湯のみ。正面の窓下に浴槽が据えられており、その手前左右に洗い場が配置されています。なお右側にはシャワー付きカランが2個と高い位置に設置されたシャワーが1つ、左側にはシャワー付きカランが3つ並んでいます。


 
浴槽は(目測で)4m×1.8m程の大きさ。湯船に張られたお湯は緑色を帯びた黄金色にしっかり濁っており、底面どころかステップすら目視できないほど強く濁っていました。また浴槽周りのタイルは、元の素材がわからないくらいに茶色い炭酸カルシウムがコーティングされ、鱗状の模様もしっかりと付着していました。

こちらでは放流式の湯使いを実践しています。浴槽縁の切り欠けから溢れ出るお湯は少なく、殆どは浴槽右奥から湯面に突き出ているオーバーフロー管より排出されています。またお湯を口に含むと、塩辛くはないものの明瞭な塩味が口の中に広がるほか、金気味、しっかり炭酸味、焦げたような(燻したような)匂いや風味、そして金気の匂いが感じられました。また炭酸ガスの量が多いためか、湯口に顔を近づけるとゴホゴホと咽てしまいました。

湯加減は40℃未満(38℃前後?)というぬるめの長湯仕様。私の訪問時、先客のお爺さん二人は、ともにじっくりと長湯をご堪能。また私とほぼ同じタイミングで入ったお爺さんは、私によく話しかけてくれた上に、1時間以上延々と入り続けていらっしゃいました。「爺さんずいぶん長湯だね」と心の中でつぶやいてしまったのですが、実際に入浴したところ、眠りたくなるほどの気持ち良い湯加減に、私もついつい1時間ほど長湯してしまいました。はぁ、俺もジジイの仲間入りかな。
なお源泉は48℃近くあるので、おそらく冷ましているもの(あるいは加水)と思われます。私が湯船の中に入ると肌に細かな泡が付着し、またキシキシと引っかかる浴感に包まれました。



お湯は自家源泉です。浴槽中央に設けられた湯口からお湯が注がれているのですが、そこから単純に落とすのみならず、湯口にホースを突っ切んで、空気に触れることなく浴槽内部までお湯を供給する方法も併用しています。これにより酸化して変色などしやすいお湯の変質や温度低下を抑えているのですね。お湯を大切にする工夫に感心しました。

ぬるめの湯加減ですが炭酸パワーと食塩泉効果のため非常によく温まり、いつまでもポカポカします。宗教関係施設なので心理的なハードルが高いのですが、温泉街の入浴施設「増富の湯」はいつも混んでいますから、混雑を回避したい場合に利用したい穴場的施設です。


立正佼成会増富佼成寮源泉
含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物温泉 49.2℃ pH6.6 35.3L/min(掘削自噴) 溶存物質11.298g/kg 成分総計12.064g/kg
Na+:3053.7mg(79.92mval%), Mg++:38.5mg, Ca++:326.2mg(9.80mval%), Fe++:7.4mg,
Cl-:4382.3mg(73.22mval%), Br-:9.3mg, I-:4.2mg, HS-:0.7mg, SO4--:587.9mg(7.25mval%), HCO3-:1992.9mg(19.34mval%),
H2SiO3:166.4mg, HBO2:237.1mg, CO2:763.4mg, H2S:2.1mg,
(平成27年3月31日)

JR中央本線・韮崎駅より山梨交通バスの増富温泉行で「増富佼成寮」下車すぐ
山梨県北杜市須玉町小尾5579-1
0551-45-0062
ホームページ

日帰り入浴11:00~19:00
550円
ロッカー(無料)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★




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山梨県甲斐市 ホテルリブマックスリゾート甲府

2018年05月25日 | 山梨県

拙ブログで何度も取り上げている甲府盆地の温泉は、私が大好きなモール泉やそれに準するタイプのお湯が主流であり、それゆえ毎年必ず私は当地へ足を運んでいるのですが、まだまだ未訪問の施設も多く、訪問の度に甲府盆地の奥深さを実感させられます。今回取り上げる「ホテルリブマックスリゾート甲府」は、竜王付近の国道20号沿いに位置しており、かつては「ホテルリフレッシュガーデンクレスト」という名称でしたが、近年全国へ勢力を伸ばしている不動産業者のリブマックスが数年前に居抜きで買収し、名称を改めて新たなスタートを切ることになりました。
こちらのホテルでは、宿泊の他、温泉の日帰り入浴も可能ですので、どんなお湯に出会えるのか、2017年の冬に行ってみました。日帰り入浴利用客はまずエレベータで5階へ上がります。

エレベータホール前の靴用ロッカーに下足を預け、フロントで料金及び靴箱のカギと引き換えに、脱衣室のロッカーキーを受け取ります。脱衣室は旧施設時代の設備をそのまま流用しているらしく、室内には妙に古めかしいスチールロッカーがズラリと並んでいました。


  
建物の5階に位置し、かつ2方向が窓で明るく開放的な浴室。視界は南東方向に展けており、窓の外には富士山が聳えていました。この日は天気が良かったので、景色を眺めているだけでも気分爽快。頗る気持ちの良いロケーションです。



洗い場には計17基のシャワー付きカランが設置されていました。カランから出てくるお湯は、おそらく温泉ではないかと思われます。


 

内湯の主浴槽は、5m弱四方の古代檜風呂。富士山を臨む見晴らしのよい窓際に据えられており、大きな湯船で景色を眺めながら湯あみをすると、雄大な気分に浸れます。ただ、旧名称時代から使われ続けているのか、私の訪問時は浴槽がかなり草臥れており、桧の木の繊維が剥がれてお湯の中に浮かんでいました。どうやらこの状況は施設側としても認識していたらしく、本記事を書くにあたって公式サイトを拝見したところ、今年(2018年)5月末まで改修工事のため檜風呂が利用できないとの記載がありました。
この檜風呂では適温まで加温された供給されており、浴槽縁からしっかりとオーバーフローしていました。おそらく放流式の湯使いかと推測されます。湯加減は40℃ちょっと。熱すぎずぬるすぎずといった塩梅の湯温ですので、のんびり長湯することができました。



内湯には他にも、ジャグジー、サウナ(ドライとミストの2種類)、水風呂など諸々の浴槽が設けられているのですが、私は利用していませんので詳細についてはわかりません。なおドライサウナの前は垢すり場所になっており、時々お客さんが台の上に寝そべって、おばちゃんの施術を受けるのですが、天井から垂らされているカーテン1枚で仕切られているだけで、浴室内から丸見え。オッサンが垢を擦られている光景を否応なく目にするはめになり、何とも複雑な心境に陥りました。


 
さて、階段で屋上へ。上がってすぐのところにある狭い室内には、薬湯と思しき小さな浴槽が設けられていましたが、この手のお風呂があまり好きではない私は、見学のみでパスすることに。


 
屋上は西側の視界が開けており、南アルプスや八ヶ岳などの山々を一望することができました。一方、この屋上の東側は各種設備類(機器類)がたくさん並んでおり、正直なところ殺風景かも。視界が開けている西側も、単に金属のフェンスがあるだけですから、見晴らしは良いものの、周辺から湯浴みしているこちらの姿が丸見えです。神経質な方にはちょっと難しいかもしれません。


 
屋上機器類の手前にある小さな浴槽はワイン風呂。ご当地名産の赤ワインを注いでいるのでしょうね。


 
私がこちらの施設で最も気に入ったのが、この円筒形の壺湯です。一人サイズの浴槽が二つ並んでおり、非加温の源泉がそのまま注がれているのです。源泉の湧出温度は36.5℃ですから、浴槽では更に下がっており、私が利用した初冬ですとかなりぬるく感じられたのですが、一度肩まで浸かるとむしろ心地よく、いつまでも浸かっていられます。あまりに気持ち良いので、ついウトウトしてしまいました。
ほぼ無色透明のお湯に体を沈めると、肌に無数の気泡が付着し、全身ツルスベの滑らかな浴感に包まれます。そしてお湯を口に含むと、微かな塩味と仄かな金気味、そしてふんわりと香るモール臭が感じられます。湯上がりはさっぱり爽快。実に心地よいお湯であり、典型的な甲府盆地の温泉です。冬にはぬるいものの、夏に入ればきっと爽快感が得られるでしょう。これからのシーズンにおすすめの一湯です。


リフレッシュガーデンクレスト温泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素園温泉 36.5℃ pH7.92 260L/min 溶存物質1.130g/kg 成分総計1.149g/kg
Na+:300.7mg(85.21mval%), Ca++:30.3mg(9.84mval%),
Cl-:416.9mg(7300mval%), HCO3-:241.3mg(24.52mval%),
H2SiO3:104.6mg, CO2:19.4mg,
(平成21年12月22日)

山梨県甲斐市富竹新田1536-1
055-279-2929
ホームページ

10:00~24:00(受付23:30まで) 年中無休
1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5



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