蓼科の別荘地に一風変わった露天風呂があると聞き、行ってみることにしました。
場所は三井が分譲した富士見町の別荘地「三井の森」の中。
八ヶ岳の唐沢鉱泉へと続く道沿いに、人の中で人がバーベルを上げているような不思議なイラストが描かれた看板と、そのイラストを立体化した像(上画像)が立っており、両者に挟まれる形で一本の未舗装路地が森へと延びています。看板に記されている施設名は「たてしなエグゼクティブハウス」。独特な雰囲気を醸し出すそれらの看板や像を目にした私は、新興宗教やスピリチュアル関係の施設を想像してしまい、果たしてこの看板の先に進んで良いものか躊躇してしまいましたが、看板をよく見ますと、申し訳程度に「尖石の湯」という小さな札が立てかけてありましたので、これによってようやく温泉施設らしきものがあることを確認できました。
この砂利の路地に入ると、まもなく右手に道が分岐しますので、そこを右折するとすぐ駐車場に到着します。ところが、そのことに気付かなかった私は、右に折れず真っ直ぐ進んで、轍が深くえぐれた下り坂へと突入してしまいました。坂を下りきると三井の森のテニスコート付近に出るのですが、付近に温泉を示す看板や幟などは立っていません。「尖石の湯」とやらは一体どこにあるのやら・・・。
テニスコートの北側の森に隠れるようにして大きな建物が建っていましたので、玄関から声をかけて尋ねてみますと、どうやらここが「たてしなエグゼクティブハウス」であり、「尖石の湯」の受付もこちらで良いとのこと。わかりにくいロケーションなので迷ってしまいましたが、とても丁寧で優しく対応して下さるスタッフの方にほっと安堵しながら、建物の中へお邪魔しました。
建物の中はとっても綺麗。八ヶ岳という立地に相応しい、木のぬくもりが感じられる感じ良い内装です。館内にはいろんな書籍が置かれていますが、そのラインナップを見ますと、いわゆるスピリチュアル系のものが多く、やはりこの施設は独特な方向性を有していることがわかります。スタッフの方曰く、こちらでは温泉入浴を絡めた断食道場も行っているらしく、断食中は風呂に入ったり本を読んだりして過ごすんだそうですよ。
さて、スタッフの方に入浴料を支払ったら、裏口のような出入口から表に出て、露天風呂へと向かいます。上述の駐車場はこの出入口に面しているので、この施設を訪問するときには、私のようにテニスコート側へ出ず、この駐車場側から施設に入るべきでしょう。
露天風呂へと向かうアプローチは、意図的に草や樹木を茂らせており、自然の中に入り込んでいくような雰囲気が作り出されています。また右手には縄文時代の竪穴式住居みたいなものが建てられています。遺跡が発掘されたところなので、そのレプリカなのでしょうか。誤解していたら申し訳ないのですが、どうやらこちらでは古代遺跡とスピリチュアルな事柄を絡めているように思われるので、こうしたレプリカは施設にとって欠かせない要素なのかもしれません。男女に分かれた露天風呂は手前側が女湯。そして・・・
奥が男湯となっていました。自然と溶け込むことに主眼を置いている施設ゆえ、案内関係は必要最小限に留められており、よく見ないと男女の区別がつきにくいかもしれません。暖簾の下にはボーリングのピットが置かれていました。このピットで地中を掘削して源泉を掘り当てたのでしょうね。
お風呂は露天風呂のみで、内湯やシャワーなどはありません。ただお湯に浸かるだけです。受付の際には、このことが説明されます。もしシャワーでしっかり体を洗いたい場合や、内湯でちゃんと温まりたいといった場合は、他の入浴施設を利用した方が良いかもしれません。縄文時代にシャワーなんて無いんだから、温泉と言う自然の恵みをありのままの姿で享受するならば、余計な設備を用意しない露天風呂が一番だ、というような設計思想なのかも。
暖簾を潜ると目の前に現れるのは自然木を使った東屋。熊本県の黒川温泉を蘇らせた人(故人)が設計したらしく、いかにもそれらしいコンセプトの造りです。具体的には、和と自然の素材を融合させたような、でも意図的なものも感じられる空間設計とでも言いましょうか。東屋の下にはベンチとテーブルが置かれており、テーブルの上には籠が用意されていました。仕切りなどの無いこの屋根の下で着替えます。
露天風呂そのものは広く、周囲の林がまるごと露天の敷地のような広がりになっています。独特の方向性がある施設なので、正直なところあまり期待していなかったのですが、露天風呂としてはかなり雰囲気が良く、清々しい木立の中は適度に木漏れ日が入ってくますし、下草刈りもちゃんと行われているので、藪のような鬱陶しさもありません。とても気持ちよい環境です。
浴場内での石鹸やシャンプーの使用は禁止されています。環境保護がその理由なんだそうです。しかもシャワーもありません。とはいえ、一応洗い場(というか掛け湯場)があり、手桶の他、温泉のお湯と水がチョロチョロ注がれています。
浴槽は勾玉のような形状の岩風呂です。もしかしたらそんな形状も遺跡を意識しているのかな。湯使いは完全かけ流しで、浴槽の奥に湯口があり、手前からしっかりオーバーフローしています。浴槽内には藻が生えており、それゆえ大変すべりやすいので注意を要します。
いわゆる塩化土類泉に属するお湯で、同じ蓼科エリアですと保科館に近く、東北でしたら田代元湯や遠刈田のようなタイプのお湯かと思われます。萌黄色と言うか浅葱色と言うか、やや黄色みを帯びた淡いモスグリーンに濁っています。お湯からは土気と金気、焦げっぽい風味、石膏甘み、少々の塩味が感じられます。また金気と土気の匂いも少々得られます。湯中ではキシキシと引っかかる浴感が肌に伝わり、しっとりと肌全体を包み込むようなモイスチャー感が実に優しい。しかも、ちょっとぬるめの長湯仕様でしたので、入浴中の私はついウトウトしてしまいました。
風呂上がりにはフローリングの広い館内で、アンケートの記入を求められました。はっきりとは憶えていないのですが、お風呂の感想や、他にどんな温泉へ行ったことがあるか、といった質問項目があったように記憶しています。この記入時には、冷たくした温泉水を飲むことができます。瓶の中の温泉水は若干黄色っぽく、コップに注いで飲んでみますと、ちょっと塩味があり、やや金気もあり、土気もあり硫酸塩の味もある、重い感じの味覚が口の中に広がりました。
上述のように場所がわかりにくいためか、休日なのに混雑とは無縁。静かでのんびりと露天入浴を楽しむことができました。蓼科の温泉穴場スポットと言えるでしょう。なお、この「尖石の湯」を運営するグループダイナミックス研究所では、川崎市にも「志楽の湯」という温泉入浴施設を運営しています。私は「志楽の湯」も何度か利用したことがありますので、そちらにつきましては、また後日改めてご紹介するつもりです。
ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩温泉 53.5℃ pH7.4 78.4L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質2885mg/kg 成分総計2921mg/kg
Na+:681.9mg(77.32mval%), Mg++:43.0mg(9.23mval%), Ca++:60.9mg(7.92mval%), Fe++:2.8mg,
Cl-:350.3mg(25.30mval%), Br-:1.1mg, I-:0.3mg, HS-:0.2mg, SO4--:1014mg(54.06mval%), HCO3-:490.1mg(20.57mval%),
H2SiO3:150.5mg, CO2:36.4mg,
(平成29年12月22日)
長野県茅野市豊平10246−1
0266-76-5211
ホームページ
日帰り入浴の営業日は基本的に土日祝日だが、平日営業の日もあり。公式サイトの営業カレンダーを確認のこと。
4/1~10/3→10:00~17:00、11/1~3/31→10:00〜16:00
1030円
シャンプー・石鹸類使用不可
私の好み:★★★
場所は三井が分譲した富士見町の別荘地「三井の森」の中。
八ヶ岳の唐沢鉱泉へと続く道沿いに、人の中で人がバーベルを上げているような不思議なイラストが描かれた看板と、そのイラストを立体化した像(上画像)が立っており、両者に挟まれる形で一本の未舗装路地が森へと延びています。看板に記されている施設名は「たてしなエグゼクティブハウス」。独特な雰囲気を醸し出すそれらの看板や像を目にした私は、新興宗教やスピリチュアル関係の施設を想像してしまい、果たしてこの看板の先に進んで良いものか躊躇してしまいましたが、看板をよく見ますと、申し訳程度に「尖石の湯」という小さな札が立てかけてありましたので、これによってようやく温泉施設らしきものがあることを確認できました。
この砂利の路地に入ると、まもなく右手に道が分岐しますので、そこを右折するとすぐ駐車場に到着します。ところが、そのことに気付かなかった私は、右に折れず真っ直ぐ進んで、轍が深くえぐれた下り坂へと突入してしまいました。坂を下りきると三井の森のテニスコート付近に出るのですが、付近に温泉を示す看板や幟などは立っていません。「尖石の湯」とやらは一体どこにあるのやら・・・。
テニスコートの北側の森に隠れるようにして大きな建物が建っていましたので、玄関から声をかけて尋ねてみますと、どうやらここが「たてしなエグゼクティブハウス」であり、「尖石の湯」の受付もこちらで良いとのこと。わかりにくいロケーションなので迷ってしまいましたが、とても丁寧で優しく対応して下さるスタッフの方にほっと安堵しながら、建物の中へお邪魔しました。
建物の中はとっても綺麗。八ヶ岳という立地に相応しい、木のぬくもりが感じられる感じ良い内装です。館内にはいろんな書籍が置かれていますが、そのラインナップを見ますと、いわゆるスピリチュアル系のものが多く、やはりこの施設は独特な方向性を有していることがわかります。スタッフの方曰く、こちらでは温泉入浴を絡めた断食道場も行っているらしく、断食中は風呂に入ったり本を読んだりして過ごすんだそうですよ。
さて、スタッフの方に入浴料を支払ったら、裏口のような出入口から表に出て、露天風呂へと向かいます。上述の駐車場はこの出入口に面しているので、この施設を訪問するときには、私のようにテニスコート側へ出ず、この駐車場側から施設に入るべきでしょう。
露天風呂へと向かうアプローチは、意図的に草や樹木を茂らせており、自然の中に入り込んでいくような雰囲気が作り出されています。また右手には縄文時代の竪穴式住居みたいなものが建てられています。遺跡が発掘されたところなので、そのレプリカなのでしょうか。誤解していたら申し訳ないのですが、どうやらこちらでは古代遺跡とスピリチュアルな事柄を絡めているように思われるので、こうしたレプリカは施設にとって欠かせない要素なのかもしれません。男女に分かれた露天風呂は手前側が女湯。そして・・・
奥が男湯となっていました。自然と溶け込むことに主眼を置いている施設ゆえ、案内関係は必要最小限に留められており、よく見ないと男女の区別がつきにくいかもしれません。暖簾の下にはボーリングのピットが置かれていました。このピットで地中を掘削して源泉を掘り当てたのでしょうね。
お風呂は露天風呂のみで、内湯やシャワーなどはありません。ただお湯に浸かるだけです。受付の際には、このことが説明されます。もしシャワーでしっかり体を洗いたい場合や、内湯でちゃんと温まりたいといった場合は、他の入浴施設を利用した方が良いかもしれません。縄文時代にシャワーなんて無いんだから、温泉と言う自然の恵みをありのままの姿で享受するならば、余計な設備を用意しない露天風呂が一番だ、というような設計思想なのかも。
暖簾を潜ると目の前に現れるのは自然木を使った東屋。熊本県の黒川温泉を蘇らせた人(故人)が設計したらしく、いかにもそれらしいコンセプトの造りです。具体的には、和と自然の素材を融合させたような、でも意図的なものも感じられる空間設計とでも言いましょうか。東屋の下にはベンチとテーブルが置かれており、テーブルの上には籠が用意されていました。仕切りなどの無いこの屋根の下で着替えます。
露天風呂そのものは広く、周囲の林がまるごと露天の敷地のような広がりになっています。独特の方向性がある施設なので、正直なところあまり期待していなかったのですが、露天風呂としてはかなり雰囲気が良く、清々しい木立の中は適度に木漏れ日が入ってくますし、下草刈りもちゃんと行われているので、藪のような鬱陶しさもありません。とても気持ちよい環境です。
浴場内での石鹸やシャンプーの使用は禁止されています。環境保護がその理由なんだそうです。しかもシャワーもありません。とはいえ、一応洗い場(というか掛け湯場)があり、手桶の他、温泉のお湯と水がチョロチョロ注がれています。
浴槽は勾玉のような形状の岩風呂です。もしかしたらそんな形状も遺跡を意識しているのかな。湯使いは完全かけ流しで、浴槽の奥に湯口があり、手前からしっかりオーバーフローしています。浴槽内には藻が生えており、それゆえ大変すべりやすいので注意を要します。
いわゆる塩化土類泉に属するお湯で、同じ蓼科エリアですと保科館に近く、東北でしたら田代元湯や遠刈田のようなタイプのお湯かと思われます。萌黄色と言うか浅葱色と言うか、やや黄色みを帯びた淡いモスグリーンに濁っています。お湯からは土気と金気、焦げっぽい風味、石膏甘み、少々の塩味が感じられます。また金気と土気の匂いも少々得られます。湯中ではキシキシと引っかかる浴感が肌に伝わり、しっとりと肌全体を包み込むようなモイスチャー感が実に優しい。しかも、ちょっとぬるめの長湯仕様でしたので、入浴中の私はついウトウトしてしまいました。
風呂上がりにはフローリングの広い館内で、アンケートの記入を求められました。はっきりとは憶えていないのですが、お風呂の感想や、他にどんな温泉へ行ったことがあるか、といった質問項目があったように記憶しています。この記入時には、冷たくした温泉水を飲むことができます。瓶の中の温泉水は若干黄色っぽく、コップに注いで飲んでみますと、ちょっと塩味があり、やや金気もあり、土気もあり硫酸塩の味もある、重い感じの味覚が口の中に広がりました。
上述のように場所がわかりにくいためか、休日なのに混雑とは無縁。静かでのんびりと露天入浴を楽しむことができました。蓼科の温泉穴場スポットと言えるでしょう。なお、この「尖石の湯」を運営するグループダイナミックス研究所では、川崎市にも「志楽の湯」という温泉入浴施設を運営しています。私は「志楽の湯」も何度か利用したことがありますので、そちらにつきましては、また後日改めてご紹介するつもりです。
ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩温泉 53.5℃ pH7.4 78.4L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質2885mg/kg 成分総計2921mg/kg
Na+:681.9mg(77.32mval%), Mg++:43.0mg(9.23mval%), Ca++:60.9mg(7.92mval%), Fe++:2.8mg,
Cl-:350.3mg(25.30mval%), Br-:1.1mg, I-:0.3mg, HS-:0.2mg, SO4--:1014mg(54.06mval%), HCO3-:490.1mg(20.57mval%),
H2SiO3:150.5mg, CO2:36.4mg,
(平成29年12月22日)
長野県茅野市豊平10246−1
0266-76-5211
ホームページ
日帰り入浴の営業日は基本的に土日祝日だが、平日営業の日もあり。公式サイトの営業カレンダーを確認のこと。
4/1~10/3→10:00~17:00、11/1~3/31→10:00〜16:00
1030円
シャンプー・石鹸類使用不可
私の好み:★★★