温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

野田花井温泉 のだ温泉ほのか

2019年12月11日 | 東京都・埼玉県・千葉県
前回記事の埼玉県春日部市から東武野田線に乗って千葉県北部の野田市へとやってまいりました。そう、東武野田線です。東武さんが懸命にイメージアップを図ろうとも、依怙地な私はアーバンパークラインだなんて頓珍漢なカタカナ名称で呼んであげません。野田線は野田線です。ま、そんな戯言はさておき、大宮から岩槻・春日部・野田・柏、そして船橋といった郊外都市を結ぶこの野田線沿線には、意外にも温泉を使用したスーパー銭湯が多いのです。それもそのはず、前回記事で述べたように、県こそ違えど沿線全域が古東京湾だったエリアに該当しますので、この沿線でボーリングをすれば。質の良し悪しはともかく高確率で化石海水型の温泉が湧き上がってくるのです。ということは、この路線にほぼ並行している国道16号沿道も温泉が多いエリアと言うことができ、16号線で考えれば沿道の多摩丘陵エリア(町田・相模原等)にも温泉のスーパー銭湯が点在していますから、東京の都心から半径30~40kmのエリアは知る人ぞ知る温泉郷と呼べるのかもしれません。


東武野田線の各駅停車に乗り、野田市の梅郷駅で下車しました。カタカナの路線愛称は好き嫌いが分かれるところかと思いますが、急行運転を開始したり複線化を進めたり新型車両を導入したりと、東武鉄道が近年野田線に対して実施している各種改善策には目を見張るものがあり、個人的見解としては大変立派だと感心しております。
2016年に運転を開始した野田線の急行はこの梅郷駅にも停車しますので、私はこの恩恵を受ける形で新型60000系の急行電車に乗り込み、梅郷駅で下車したのでした(と言っても春日部から梅郷まで急行も各駅に停まるのですが…)。

駅から目的地までは路線バスに乗り換えます。
駅の西口ロータリーに設けられたバス停の屋根には・・・



緑の莢に入った豆が載せられ、その莢には「まめバス」と書かれていました。
目的地までは野田市のコミュニティーバス「まめバス」に乗るのです。てっきり野田名産の醤油の原料に由来した名前なのかと思いきや、豆のような小型車体であることや市民のマメな利用を願っていること、そして枝豆の出荷量全国一であることが、その名称の由来なんだとか。



なるほど、本当に豆みたいな小さい車体なんですね。このかわいらしいバスに揺られること約6分。花井というバス停で下車しました。



バス停前の通りに面して大きな看板が立っていました。施設名称の下に「源泉かけ流し」の文字が躍っています。



バス停から1分も歩かないで、今回の目的地である「のだ温泉ほのか」の正面玄関に到着しました。

「ほのか」は札幌やその近郊を地盤とする北海道のスーパー銭湯チェーンですが、数年前に千葉県蘇我へ進出し、2016年12月にはこの野田で本州第2号店をオープンさせています。オープンと言っても新規開店ではなく、この施設はかつて東武系の「グランローザ潮の湯」という温浴施設でしたが、一旦閉館した後、「ほのか」の運営会社に経営権が移って、「のだ温泉ほのか」として2016年にリニューアルオープンしました。
東武はここでの温浴施設運営から手を引きましたが、同じ敷地内にあるビジネスホテルは引き続き東武の系列会社が運営しています。



玄関から中に入り、受付にて下足箱のキーを預け、それと引き換えに館内精算用チップ付きのロッカーキーを受け取ります。

館内の内装はバリ島のリゾートをイメージしているような感じです。館内図によれば、円筒形の建物の中央に岩盤浴ゾーンがあり、その2階にレストランが設けられています。そして円筒の外周部に温泉浴場が配置されています。

料金はお風呂の入浴料と岩盤浴の利用料(タオルと岩盤浴着付)がセットになっていますので、両方とも利用するとしまして、まずはお風呂から入ってみましょう(お風呂だけの料金設定ってあるのでしょうか?)。
なお、ここから先の画像はありません。公式ホームページの画像をお借りしようかとも考えたのですが、使いたい画像はどれも入浴中のモデルさんが写り込んでいるため、今回はお借りすることもせず、文章だけで説明してまいります。あしからずご了承ください。お風呂の様子をご覧になりたい場合は、お手数ですが公式ホームページをご覧ください。


脱衣室はとても広くて明るく、清潔感に満ち溢れています。広い空間を活かし、ロッカーもたくさん用意されており、週末でも混雑を感じさせません。また洗面台やパウダーゾーンにもゆとりがあるため、全体的にストレスフリーです。温泉入浴する場合は当然脱衣するわけですが、岩盤浴利用時もここで岩盤浴着に着替えます。

大きな円筒形をした建物の円周部に浴室が配置されているわけですから、その浴室は当然ながら扇形のような形状になっています。浴室に入ってすぐ目の前には掛け湯があり、一見するとお湯が濁っているようですが、これは槽の構造が原因であると思われ、実際にはごく普通の真湯です。
この掛け湯を過ぎた左手にはサウナ、右手にはあかすり室、そして正面には水風呂が設けられています。こちらの水風呂は大きくて深いため、複数人数がゆったり且つどっぷりとクールダウンできます。話が前後しますが、お風呂の後に利用した岩盤浴で体がかなり熱くなってしまった私は、お風呂に戻って水風呂でしっかり冷却し、全身を走る爽快感に思わず身震いしてしまいました。温浴において水風呂が果たす役割って、とっても重要ですね。

水風呂の裏手と言いますか、浴室の中央から左手奥にかけてには洗い場が配置されています。約20基ほどのシャワー付き混合水栓が取り付けられ、それぞれにボディーソープ・シャンプー・コンディショナーが備え付けられています。各カランの半数近くには袖板が付けられており、また一区画当たりの幅が広い為、隣のお客さんとの干渉を気にせずゆったり使えます。

内湯の浴槽は窓に沿って2種類据え付けられています。その2種類とは真湯の泡風呂と温泉循環ろ過槽。温泉槽はちょっと深めの造りで入り応えあり、私が訪問した真夏の某日、温泉槽の湯温が40℃というちょっとぬるめにセッティングされていました。後述しますがこちらの温泉は温まりがパワフルな「熱の湯」ですから、猛暑の日はお湯を冷ましているのかもしれませんね。なお内湯の壁面上部には、こちらの源泉は湧出時の温度(44.8℃)が千葉県1位、そして湧出量(毎分450L)は千葉県6位であることをデカデカと誇示していました。温度が県下トップで湧出量も県内屈指という優秀な源泉が、山岳地帯やその麓ではなく、真っ平らな江戸川(利根川流域)の氾濫原にあるというのが、温泉が多い他県では見られない千葉県らしい特徴ではないかと思います。

一方、露天は周囲を壁に囲まれていますが、広さは確保されているためまずまずの開放感が得られ、デッキチェアーも数台用意されているので、誰しも風を感じながら気持ち良く湯浴みが楽しめるでしょう。この露天ゾーンには源泉かけ流し岩風呂と真湯の浴槽があります。真湯といっても何らかの入浴剤かそれに準ずるものが日替わり(週替わり?)で溶かしてあるらしく、私が訪問した日は重曹でした。重曹は猛暑に相応しいさっぱりとする浴感をもたらす成分ですから、季節などによって趣向を凝らしているのでしょう。

源泉岩風呂は深さが浅めと一般的という2段階構造になっています。そこに張られたお湯はうっすらと飴色を帯び、かつ同色の細かな湯の華が無数に舞っているため、やや濁っているように見えます。浴槽縁に並べられた岩の表面は、温泉成分の付着により黒く変色しており、温泉成分の濃さがビジュアル的に伝わってきます。
湯船の浅いところに岩組みの湯口があり、体感で45℃近くはあると思しき結構熱いお湯が、やや絞り気味で投入されています。この絞り加減が絶妙なのか、湯船は40℃前後というぬるめの湯加減がキープされており、猛暑でも気持ち良く入浴することができました。真夏はこの程度に調整されているのでしょうし、厳冬期は絞ることなく熱いまま注がれているものと推測されます。そして岩の縁からは、投入量と同程度のお湯がオーバーフローしていました。この露天風呂に関しては一応放流式の湯使いですが、状況に応じて加温や加水が行われており、放流式と同時並行で循環消毒も実施されているようです。なお完全に循環されている内湯の温泉槽も当然しょっぱいのですが、味も色も薄く、湯の花も見られません。お湯のコンディションは露天風呂の方がはるかに良好です。

この施設の旧名称は「潮の湯」ですが、そのストレートなネーミングが言い表しているように、こちらのお湯は典型的な化石海水型の温泉です。露天岩風呂の湯口から出てくるお湯を手に掬って鼻に近づけてみますと、化石海水型の温泉にありがちな刺激臭がプンと鼻を突いてきます。分析表によれば臭素イオン47.5mg、ヨウ素イオン11.6mgと、この温泉は刺激臭を有するハロゲンを大変多く含んでいます。と同時に消毒臭も感じられましたが、これは致し方ないところ。ちょっと舐めてみますと非常に塩辛く、一緒に苦汁味も舌へ伝わってきました。溶存物質22.18g/kgというとんでもなく濃い食塩泉であり、湯中では滑らかなツルスベ浴感が得られ、温浴効果の高い泉質ですからぬるめでも非常に良く温まります。濃い食塩泉ですから冬は湯上がり後も長時間ポカポカが長続きしますが、夏は迂闊に長湯すると体力を奪われ疲れてしまいますから、長湯は避け、湯上がり時にも適宜真湯などで上がり湯を掛けた方が良いかと思います。



こちらは、館内に掲示されていた約20万年前の古東京湾の図。当地がかつては海底にあったことが一目瞭然ですね。20万年前の海水が悠久の年月を経て温められ、2019年のいま、自分の目の前で浴用として供じられているわけです。なんとロマンチックなことでしょう。でも、石油と同じ地下資源ですから、汲み出し続けているとやがて枯渇する運命でもあるわけです。一度きりで使い捨てる掛け流しという湯使いを持て囃す私のような考え方は、将来のリソースを食い荒らす極めて罪深い現世利益追求型ではないのか、と少々反省してしまいます。しょっぱいお湯に浸かりながら、自分の気持まで塩辛くなってしまいました。
そんな屁理屈はさておき、お湯自体はとても良く化石海水らしさを存分に味わえますので、お近くへお出かけの際に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。本文では触れませんでしたが、いろんな小部屋がタイプ別に分かれている岩盤浴も面白かったですよ(岩盤浴についてのコメントが全く無くてごめんなさい)。


含よう素・ナトリウム-塩化物強温泉 44.8℃ 溶存物質22.18g/kg 成分総計22.20g/kg
Na+:7526mg(86.99mval%), NH4+:18.1mg, Mg++:207.3mg, Ca++:570.4mg(7.56mval%), Fe++:3.6mg,
Cl-:13320mg(98.69mval%), Br-:47.5mg, I-:11.6mg, HCO3-:248.3mg,
H2SiO3:54.4mg, HBO2:71.7mg, CO2:19.4mg,
(平成29年4月26日)
加水あり(源泉成分が強いため)
加温あり(温度を適温に保つため)
循環ろ過あり(源泉の有効利用のため、衛生管理のため)
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)

東武野田線・梅郷駅から野田市「まめバス」に乗って6分で花井下車すぐ。
千葉県野田市花井1丁目1-2
04-7123-4126
ホームページ

9:00~25:00 年中無休
平日1220円、土休日1420円。大小タオル+岩盤浴着+岩盤浴バスタオル付き
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (3)
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