温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

高原火山水街道 自噴 松ヶ峰温泉

2020年07月17日 | 栃木県

前回記事に引き続き、栃木県で新たに開業した温泉施設を取り上げます。妙に仰々しい名前の温泉施設が、2019年12月に開業しました。その名も「高原火山水街道 自噴 松ヶ峰温泉」。
矢板市や塩谷町などでは、ご当地が誇る高原山の麓で湧出する名水「尚仁沢湧水」にあやかって「たかはら山麓水街道」と称した観光キャンペーンを行っていますので、おそらくこれに因んでネーミングされたものと思われますが、とはいえちょっと長い名前なので、施設の方には申し訳ないのですが、拙ブログでは以下「松ヶ峰温泉」で統一させていただきます。


初めて行く場合には説明が難しい場所なのですが、矢板市街から国道461号線を西へとにかく進んでいけば、やがて上画像のように幟がたくさん並んでいる箇所に行き着きますので、この幟を目標に車を進めると良いでしょう。
ところでこちらの場所、実は矢板市と塩谷町の境界上にあるんです。地理院地図で確認しますと、敷地のほとんどは塩谷町に属するようですが、アプローチの一部は矢板市に含まれていますので、こちらの温泉を利用する際には、市町の境界を行き来することになるんですね。世間に一定数存在する境界マニアにも喜んでもらえそうな、なかなか面白い温泉です。


さて国道からアプローチを進んで、敷地の中へ入ってみますと、どちらかと言えば温泉施設より工事現場の詰所と表現した方がしっくりくる雰囲気。「ここで大丈夫なのかしら」と不安を抱きつつ、このプレハブの詰所っぽい平屋の前に車を止めて右手にまわりますと出入口があり、引き戸を開けるとすぐ先の受付におじさんがいらっしゃって、カウンターには温泉の案内資料が平積みされていたので、ここに至って温泉施設であることに間違いないことを確信し、おじさんに湯銭500円を支払いました。支払いの際、おじさんにどこから来たのかと聞かれたので、てっきりコロナ感染者が増えている東京者の入場を断られるのかと勘違いしたのですが、どうやら地元の方は300円になるため、その点を確認したかったようです。


ニューカマーの施設なはずなのに、全体的にどことなく使い込まれた感じがする館内。脱衣室も浴室も、既に10年以上前から営業しているような貫禄というか草臥れ方をしています。


室内の片隅へ追いやられるように配置された洗い場にはシャワー付きカランが2つ設けられているのですが、このカランも相当使い込まれた感があり、本当に新しい施設なのかしら、と疑問を抱かざるを得ません。なおカランから出てくるお湯は温泉です。


洗い場の反対側にある内湯の浴槽は(目測で)3.5m×2.5mの四角形。
湯口からやや熱めのお湯が注がれており、しっかりかけ流されています。


立派な露天風呂もあるんですね。とはいえ駐車場からすぐ見えちゃいそうな場所にあり、且つ目の前には民家があるため、しっかりと目隠しが立っていました。そもそも眺望が期待できる立地ではないので、いわゆる露天風呂というよりも、外の風を感じながら入浴できる設備といった程度の認識が良いかもしれません。


露天風呂を逆側から(浴室を向いて)見たところ。梁のH鋼が剥き出しなので、やっぱり工事現場に見えてしまいますが、れっきとした温泉浴場なのです。なお露天の浴槽が2.5m四方の8人サイズ。内湯より若干ぬるいような気もしますが、適温で心地よく入浴できます。こちらもしっかりかけ流されていました。


露天から外を眺めますと、すぐ目の前には、波板にペンキで描いた風景画が立てられていました。上述したように塩谷エリアでは名水「尚仁沢湧水」に因んだ「たかはら山麓水街道」と称する観光キャンペーンを打ち出していますので、この絵は「尚仁沢湧水」を描いたものなのかもしれません(あくまで私の勝手な推測です)。


お湯は無色透明で、口に含むと薄い塩味と少々の芒硝風味が感じられます。また弱い鉱物油臭も嗅ぎ取れます。泉質名はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉なので、まさにその名前が示す通りの特徴が表れているのですが、分析表を見て驚いたのが総硫黄の数値。硫化水素イオン0.8mg、チオ硫酸イオン1.0mg, そして遊離硫化水素が0.1mgと表記されており、合計した数値(総硫黄)は1.9mgになるのです。日本の温泉法では総硫黄2.0mg以上で硫黄泉を名乗れますから、こちらの温泉はわずか0.1mg足らないために硫黄泉が名乗れない状態なのです。でも、実際に湯船に浸かったり、あるいは湯口のお湯を口に含んでみても、それほどの硫黄感は感じられず、せいぜい鉱物油感が少々あった程度でした。硫黄に関する数値と体感の差はどのように説明したらよいのでしょうか・・・。ま、そんな屁理屈はさておき、湯船に浸かると食塩泉らしいスベスベ感と硫酸塩泉らしいキシキシ感が拮抗しながら肌に伝わり、体の芯まで力強く温まります。しかも源泉かけ流しという立派な湯使いですから、お湯は常に新鮮です。


さて、退館時に受付のおじさんと簡単にお話しさせていただきました。曰く、源泉は25年前からあったらしいのですが、いろいろな事情があってお客さんに提供することができず、長い間工事関係者向けに使われていたようです。そして公衆浴場として営業する準備がようやく整った昨年(2019年)12月にようやくオープンしたんだそうです。なるほど、脱衣室には令和元年(2019年)11月付の栃木県温泉浴用許可済証が貼られていますので、施設は多少使い込まれていても、一般向けの営業施設としては新規開業に間違いありません。なお長い施設名には「自噴」の二文字が含まれており、受付のおじさんも源泉から自噴することを誇らしげに語っていらっしゃいましたが、分析表によれば動力揚湯となっており、どちらが正しいのかよくわかりません。ま、ここは余計な詮索をせず、黙ってお湯を楽しんだ方が良いでしょう。この一帯の温泉施設は循環利用の施設が比較的多いので、しっかりかけ流してくれる温泉浴場がオープンしたことはとても喜ばしいですね。また近くに来た時には立ち寄りたい一湯となりました。


ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 59.1℃ pH7.8 40.9L/min(動力揚湯) 溶存物質2.3501g/kg 成分総計2.3590g/kg
Na+:489.0mg(21.27mval%), Ca++:257.8mg(12.86mval%),
Cl-:420.9mg(34.84mval%), Br-:1.7mg, I-:0.8mg, HS-:0.8mg, S2O3--:1.0mg, SO4--:1030mg(62.94mval%), HCO3-:28.1mg,
H2SiO3:78.8mg, HBO2:21.5mg, CO2:8.8mg, H2S:0.1mg,
(平成31年4月22日)

栃木県塩谷郡塩谷町大字熊の木字カラフ1422番地
0287-45-2568
ホームページ

10:00-20:00(最終受付18:30) 年中無休(臨時休館あり)
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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