温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

那須野ヶ原温泉 ホテルアオキ

2020年07月23日 | 栃木県

栃木県は、山間部のみならず県内のいろんなところで温泉が湧いており、特に県北の那須野が原と呼ばれる扇状地には無名ながらも良質な温泉が点在しています。今回訪ねる「那須野ヶ原温泉 ホテルアオキ」のもそんな温泉のひとつ。
県北を代表する大田原市の郊外に位置しており、周辺には特に有名な観光地や企業・工場があるわけでもないのですが、それでも長年にわたって営業しつづけている地元資本のビジネスホテルです。このホテルには温泉の大浴場があり、外来入浴も積極的に受け入れていますので、訪ねてみることにしました。
上画像に写っている、昭和の香りがプンプン漂う丸いアーチ状の正面玄関はホテルの宿泊客専用のようで・・・


日帰り入浴客はその右脇の通路を入っていきます。


バックヤード然とした通路を進んだ先にある、昭和50年代の保健所みたいな佇まいの入浴利用客専用玄関から館内へお邪魔します。玄関入って右側にあるカウンターにはスタッフが常駐しており、カウンター前に設置された券売機で料金を支払い、カウンターのスタッフさんに手渡します。
その受付から数段ステップを上がった右手に男女それぞれのお風呂入口が並んでおり、さらに奥には休憩用のお座敷が用意されています。暖簾をくぐった先の脱衣室も少々年季が入っており、訪問時はなぜか薄暗かったのですが、空間自体はそこそこ広いので、さほどストレスなく利用できるのではないでしょうか。なお室内にはエアコンが設置されていたものの、訪問時には運転されておらず、そのかわりに扇風機が回っていました。


訪問時には他のお客様がいらっしゃったので、画像は記録しておりません。その代わりに今回記事では公式サイトの画像をお借りしています。なお上画像は公式サイトで紹介されている女湯の内風呂であり、男湯はこれと異なったレイアウトですので、あらかじめご承知おきください。

内風呂はかなり広く、大きな窓があって天井も高いのですが、経年によるものなのか、はたまた当初からのデザインなのか、全体的にくすんだ色合いが採用されているため、広い空間のわりには薄暗い感じが否めません。男湯の場合は、脱衣室から入って左側に洗い場が配置されており、シャワー付きカランが計10個一列にズラっと並んでいます。また出入口付近には水風呂やサウナもあります。

一方、右側には半円形の大きな主浴槽が据えられており、その直径は5~6メートル近くあったはず。この浴槽に対し、湯口からふんだんに温泉が注がれており、縁から惜しげもなくオーバーフローしていました。館内説明によれば源泉の湧出温度は52℃であり、そのお湯を加温加水循環消毒の無い完全かけ流しで各浴槽へ供給しているそうです。ちょっとしたプールを思わせる大きな浴槽において、そこに張られたお湯は冷めることなく、むしろ一般的な湯船よりも若干熱めの43℃前後が維持されていましたから、投入量がいかほど豊富であるか、温泉に詳しい方ならご想像いただけるかと思います。なお、主浴槽のほか、窓際には4~5人サイズの泡風呂もあり、こちらにも温泉がかけ流されていました。


男湯の場合は、主浴槽と泡風呂の間にある専用出入口から屋外に出て、半円形を描く女湯のガラスブロック外壁のまわりをぐるっと回ると、露天風呂にたどり着けます。実際には大した距離ではないのでしょうけど、初めて利用すると思いのほか長い距離を歩かされているような気分になり、しかも全裸ですから「この先本当に露天風呂があるのか」とちょっと不安になっちゃいました。

こちらの露天風呂は日本庭園風の設えで、浴槽の周りに男性的な岩を配置し、庭木を整えています。訪問時は灌木がしっかり刈り込まれていて綺麗でした。岩風呂の上には大きな屋根が掛けられているので、多少の雨なら凌げるでしょう。この露天岩風呂は庭園の池を思わせる造りで結構大きく、10人は余裕で入れそうなサイズ。この湯船に浸かったら、庭の池で泳ぐ錦鯉の気持ちが幾許かは理解できるかもしれませんね。
お湯は積み上げられた岩の上から落とされています。内湯同様に露天もかけ流しですが、張り紙によれば夏は熱く冬はぬるくなってしまうため内湯を使ってほしいとのことでした。つまり温度調節しないで温泉を投入しているわけであり、下手な小細工をしていないという点ではむしろ歓迎したいところです。

さてお湯に関するインプレッションですが、見た目は無色透明であり、且つ泉質名がアルカリ性単純泉なので、それだけ捉えるとつまらなそうなお湯に思えますが、ところがどっこい、実に個性的なお湯なのです。この施設ではどうやら保健所から飲泉の許可を得ているらしく、露天風呂には紙コップが用意されていますので、実際に湯口からお湯を汲み取って飲泉してみますと、硫酸塩泉っぽい複雑な風味が口に広がるほか、微かに塩味やゴムのような風味がするようなしないような・・・。そして香ばしい味がするようなしないような・・・。とにかく、そんじょそこらのアルカリ性単純泉とは違い、食塩泉と硫酸塩泉を掛け合わせたような独特な風味が感じられたのです。
匂いに関しては、露天風呂の湯口では焦げたような匂いが淡く感じられた一方で、内湯では卵黄っぽい風味が鼻孔に伝わってきたのも不思議。分析表によれば硫化水素イオンがちょっぴり含まれているので、これが硫黄的な風味をもたらしているのでしょうけど、内湯と露天で現れ方に違いがみられる理由はよくわかりません。
味や匂いはアルカリ性単純泉らしくないユニークな個性が確認できますが、浴感についてはアルカリ性単純泉の王道と称すべきツルツルスベスベの滑らかな感触が全身に伝わり、とりわけ炭酸イオンが比較的多く含まれているため、その滑らかな感触がはっきりと感じられます。

栃木県のメジャーな観光エリアからは多少離れますが、ふんだんな湯量を活かして全浴槽かけ流しの湯使いを実践しているばかりでなく、そのお湯自体が実に個性的で良質であるという、温泉ファンにはたまらない施設です。宿泊はもちろん、お近くへお出かけの際はひとっ風呂浴びに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。


アルカリ性単純温泉 52.7℃ pH9.3 溶存物質821mg/kg 成分総計822mg/kg
Na+:271.3mg,
Cl-:339.7mg, HS-:0.2mg, SO4--:62.4mg, HCO3-:66.4mg, CO3--:14.3mg,
H2SiO3:49.4mg,
(平成22年2月23日)

栃木県大田原市中田原1625-1
0287-23-8100
ホームページ

9:00~21:30(最終受付21:00) 第3木曜定休
700円(おもて那須手形利用可能)。
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする