温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

畑毛温泉 大仙家

2023年02月16日 | 静岡県

(2022年3月訪問)
今回記事から日本国内の温泉へ戻ります。静岡県伊豆半島の付け根に当たる函南町と伊豆の国市の境界付近には、200年近い歴史を有する畑毛温泉(奈古谷温泉)があり、現在は数軒の旅館が営業しています。今回はその中でも規模の大きな「大仙家」のお風呂に入ってきましたのでレポート致します。
路線バスが通るメインストリートに面したこちらの旅館は大正時代に創業し、平成5年に全面改築して現在に至っています。外観からして上品且つスタイリッシュであり、駐車場に止まるお客さんの車もみな高そうな車種ばかり。私のような下賤の客は門前払いを食らうのではないかと緊張しながらエントランスを入り、フロントのスタッフさんに日帰り入浴したい旨を伝えると、豈図らんや丁寧に対応してくださいました。なお普段は日帰り入浴を受け付けていないそうですが、今回は特別な条件により受け入れてくださいました。


高い天井のロビーはリゾートホテルを思わせる雰囲気でラグジュアリー感たっぷり。感心した私は、頭の悪いガキンチョのように口を開けたままホールを見上げたところ、涎が垂れそうになり、一層お宿に似つかわしくない客になってしまいました。あぁ情けない。


お風呂はロビーから右手の廊下を進んだ先です。途中で上画像のようなギャラリーを通過するのですが、ガラスケースに収められた品々の時価はいくらなのかしら、などと下賤な発想を抱いてしまう私は、やはり客として相応しくないのかもしれません。


温泉ゾーンは3棟の八角堂から成り立っています。手前側の1棟はまるごと更衣室で、男女で半分ずつ使い分けています。ウッディな更衣室は広くて綺麗。さすが歴史ある上品な宿は違うなぁと感心しながら、快適に利用させていただきました。


八角堂の残りの2つは男女それぞれの浴場です。
浴室も天井高くて広々としており、非日常的な感覚を享受できます。男湯の場合、この浴場に入って右側に洗い場は加温浴槽が、左側には源泉別浴槽が配置されています。
洗い場にはシャワーが8個並んでいますが、うちひとつ(最も入口に近い箇所)は水栓の取り付け位置が若干高くて専用の椅子が用意されているバリアフリータイプです。


後述しますが、こちらのお風呂には2種類のぬるい源泉が引かれており、洗い場側の浴槽には2つの源泉をミックスして42℃程に加温循環させたしたお湯が張られています。源泉別の浴槽はぬるい状態を維持させているため、体を温めたい場合は加温浴槽を利用することになります。


洗い場と反対側の窓側には源泉別の浴槽が据えられています。2つの源泉は「大仙湯」と「韮山湯」です。


お宿の自家源泉である「大仙湯」は私の体感で32~3℃程というぬるさで、入りしなこそ少々冷たいような感じがしますが、肩までしっかり浸かる頃には既にこのぬるさに体が慣れ、むしろこのぬるさが最高に気持ち良く、じっくり長湯しているうちに微睡んでしまうこと必至です。
紺色のタイルの湯船には湯口からお湯がたくさん注がれていますが、分析表によれば湧出量は毎分11リットルしかないため、おそらく循環させながら源泉湧出時のぬるさを再現させているのかと推測されます(間違っていたらごめんなさい)。なお温泉分析表に記載された大仙湯の源泉名は「大仙湯 奈古谷24号」です。当地の温泉地名は今でこそ「畑毛温泉」で統一されており、函南町と伊豆の国市(旧韮山町)に跨っていますが、かつて韮山側は「奈古谷温泉」という別の温泉名を名乗っていました。表向きは消えてしまった奈古谷の名は自家源泉の源泉名としてまだ生き残っているのです。


一方「韮山湯」は共同源泉で湧出量は毎分609リットルもあるのですが、私の利用時に湯口から吐出されている湯量はチョロチョロ程度でした。こちらは「大仙湯」より若干低い30℃弱ですので、入ってしばらくは冷たさを感じますが、やがて体に馴染んでゆくとこの上なく気持ち良く、ぬる湯好きなら湯船に永遠に入り続けたくなることでしょう。

両源泉のお湯とも無色透明無味無臭で肌触りにもこれといった特徴は無いのですが、分析表によれば「大仙湯」は溶存物質2.080gを有する芒硝泉であるのに対し、「韮山湯」は0.213gという薄さのアルカリ性単純泉であり、また上述のように湧出量も大きく違うため、見た感じでは似た者同士でも、実際にはかなり中身が異なります。とはいえ、両源泉ともにぬる湯の名湯であることに違いはなく、長く浸かっていると副交感神経が優位になって心身が落ち着いてきます。かけ流しではなくても素晴らしいお湯であることに間違いありません。


露天風呂は42℃程でしょうか、やや強めに加温されていました。
なお露天風呂エリアには他にサウナ小屋もあります。

ぬるいお湯に長く浸かって静かにゆっくりと湯あみの時間を過ごす。
時間を思う存分に使うことこそ本物の贅沢です。
そんな贅沢を楽しめる素敵なお風呂でした。


(大仙湯)
大仙湯 奈古谷24号
ナトリウム-硫酸塩温泉 37.6℃ pH8.8 11.0L/min(動力揚湯) 溶存物質2.080g/kg 成分総計2.080g/kg
Na+:657.6mg(97.25mval%),
SO4--:921.9mg(65.85mval%), Cl-:201.6mg(19.53mval%), HCO3-:238.0mg(13.38mval%),
H2SiO3:27.0mg,
(平成28年3月31日)

(韮山湯)
韮山温泉土地第3号泉
アルカリ性単純温泉 29.2℃ pH8.7 609L/min(動力揚湯) 溶存物質0.213g/kg 成分総計0.213g/kg
Na+:44.7mg(79.51mval%), Ca++:9.5mg(19.26mval%),
HCO3-:72.4mg(49.17mval%), SO4--:34.5mg(29.75mval%), Cl-:12.3mg(14.46mval%), CO3--:4.8mg,
H2SiO3:33.6mg,
(平成22年11月26日)

静岡県伊豆の国市奈古谷655
055-979-7000
ホームページ

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コメント
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