温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

鹿部温泉 温泉旅館吉の湯

2014年02月04日 | 北海道
 
間欠泉で有名な道南の鹿部温泉には源泉が30箇所もあるそうでして、豊かな出で湯を活かした旅館や公衆浴場によってちょっとした温泉街が形成されていますが、その中には「亀の湯」や「鹿の湯」など、「吉祥漢字一文字」+「の湯」というパターンによって名付けられた温泉施設も複数あり、今回はその中でもめでたい「吉」という文字を冠する温泉旅館「吉の湯」で日帰り入浴してまいりました。こちらのお宿は間欠泉から300~400mほど北、ちょうど漁港の船溜まりの裏に位置しており、国道沿いにもわかりやすい看板が立っていますが、建物は装飾性の少ないシンプルな外観で、(訪問時は)道路から玄関越しに窺った館内も薄暗く、もしかしたら今日はお休みなのかと玉砕覚悟で訪ったところ、帳場にいらっしゃったお宿の方は快く入浴利用を受け入れてくださいました。


 
帳場から右に伸びる廊下を進んだ突き当たりが浴室です。


 
暖簾の手前の壁には、鹿部間欠泉をバックにして撮られている旅館の初代オーナーさんの写真が飾られていました。そのキャプションによれば、写真は大正13年に撮影されたものであり、温泉を掘削している時に間欠泉が発見されたんだそうです。また写真の右隣には現在の温泉の湯使いに関する説明が表示されており、敷地内で湧出する約80℃のお湯を熱交換器によって夏季は65℃、冬季は50℃まで冷ましているが、それでも熱い場合は鹿部の綺麗な水道水で加水していると記されていました。


 
建物の外観同様に脱衣室も質素でシンプルですが、さすが旅館だけあって室内は綺麗で清掃がよく行き届いています。またカゴにはタオルが積まれていましたが、これはおそらく宿泊客のために用意されているものかと思われましたので、私は持参のタオルを使いました。


 
お風呂は男女別の内湯が一室ずつ。男女両浴室の仕切り塀に洗い場が設けられ、ピカピカのシャワー付き混合水栓が4基設置されています。またその仕切り塀の上には瓦が載せられており、和風な雰囲気を醸しだしていました。


 
浴室内も管理が行き届いており、桶や腰掛けがきちんと整頓されていました。ケロリン桶のピラミッドって、いかにも日本の温泉らしい光景ですね。また壁には湯もみ板も用意されています。湯もみ板があるということは、先程の説明書きにもあったように、本当に熱いお湯なのでしょう。



縁に天然石を用いて化粧している浴槽は、西部劇のガンマンが腰にぶら下げている革製ガンホルダーのような形状をしており、槽内はタイル貼りで、容量は8人前後といったところ。槽内で循環している気配は無いので、加水した上での放流式と思われますが、縁から洗い場への溢れ出しは少なく、湯船のお湯のほとんどは、最も手前にあるオーバーフロー管を経由してから排水口へと流下していました。


 
こちらのお宿では敷地内に湧出する2つの源泉をブレンドしているんだそうでして、浴室内の湯口から吐出されているお湯は、直に触ったら火傷しそうなほど熱いのですが、そのアツアツのお湯が石の間を流れて浴槽へ落ちてゆくまでの流路が、温泉成分の付着によってとんでもないことになっていました。赤みを帯びる濃いアイボリー色の石灰分が、流路の両側を埋め尽くさんばかりにコンモリとこびりついているのであります。


 
その様子を拡大してみました。お湯が湯船へ落ちるところでは、石灰華が鱗状の模様を形成し、それが幾重にも層を重ねて大きな瘤状の造形を作り出していました。ビジュアルからして、とても濃そうなお湯ですね。お湯はほぼ無色透明ですが、じっくり観察しますと石灰華と同じく赤みを帯びたアイボリー色に弱く濁っているようにも見えます。口に含んでみますと、甘塩味とニガリ味、そして土類味や芒硝っぽい味が舌に伝わり、弱い土類臭や石膏臭および芒硝臭がふんわり香ってきました。湯船に身を沈めて両腕でお湯を掻いてみるとトロミがあり、湯中ではツルスベと引っかかりの両浴感が混在していました。なお源泉温度が熱いためか投入量はやや絞り気味なのですが、それでも湯船では結構熱く、体感で44℃前後でした。熱さといい、弱い懸濁といい、塩味といい、同じ道南の「湯の川温泉」など函館周辺のお湯を彷彿とさせてくれる特徴ですが、こちらのお湯は函館系のお湯に、更に硫酸塩泉感や重炭酸土類泉感をミックスさせたような、ちょっと複雑な知覚を有する独特なテイストのお湯でした。湯上がりの温浴効果も非常に高く、いつまで経っても汗が引かず、まるで体の芯に熱せられたコークスを埋め込まれたかのような、パワフルな温かさが持続しました。


吉の湯1号及び2号混合泉
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 79.5℃ pH7.4 22L/min(自噴) 溶存物質3.246g/kg 成分総計3.301g/kg
Na+:918.1mg(82.62mval%), Mg++:19.7mg, Ca++:102.0mg(10.53mval%),
Cl-:1056mg(62.37mval%), SO4--:494.7mg(21.57mval%), HCO3-:460.4mg(15.81mval%),
H2SiO3:64.1mg, HBO2:61.8mg, CO2:55.0mg,
(平成20年12月16日)
熱交換により温度を下げた上で加水

北海道茅部郡鹿部町鹿部45  地図
01372-7-2211

日帰り入浴時間13:00~20:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず(おそらく帳場預かり)

私の好み:★★+0.5
コメント
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