軽井沢に別荘をお持ちの方から「北軽にも秘湯があるよ」と勧められ、昨年(2013年)秋の某日に北軽井沢へ出かけることにしました。そのお話によれば、拙ブログで以前取り上げたことのある「北軽井沢温泉 絹糸の湯」から近いとのことでしたので、北軽だから看板ぐらい出ているだろう、現地に行って適当に走っていれば辿り着くだろう、そう高をくくって事前に調べることなく車を走らせていたのですが、実際に現地へ行ってみますと国道146号線の路傍にはそれらしき看板がちっとも見当たらず、スマホの地図で場所を確認して最短コースと思しき道を入ってみたものの、畑の先が行き止まりになってしまってバックを強いられ、すっかり迷子になってしまいました。しばらく右往左往した後、町立西中学校前の丁字路から東側へ伸びる路地に入って坂を下ってゆくと、やがて道は小さな川を渡るのですが、その橋の手前に「隠れの湯 あと300m」と書かれた小さな看板を発見。その看板を目にして安堵しながら、川沿いの道を南下しました。
あと300mというものの、その道は部分的に未舗装で、デコボコには泥水が溜まっています。本当にこの道で大丈夫なんだろうかと再び不安を覚え始めたころ、徐々に視界が開けて畑が広がりはじめ、道の右側に「露天風呂」と染め抜かれた幟を見つけました。路地の奥にはキャンピングトレーラーが数台とめられています。
そのキャンピングトレーラーの奥には駐車場があり、木々に囲まれた路地のドン詰まりに直線的な傾斜屋根が印象的な小屋が建てられていました。今回の目的地「かくれの湯」に到着です。その名の通り、黒基調のシックな建物は周囲の自然環境に身を隠しているようであり、また初見では辿りつきにくい立地も「かくれ」の名に相応しいですね。
高原のアトリエを思わせる小洒落た外観ながら、日本の入浴施設としての伝統を継承しているのか、下足箱は昔ながらの銭湯でよく見られる松竹錠が採用されていました。なお料金は玄関の券売機で支払います。館内ではお食事もできるようでして、この券売機は食券の販売も兼ねていました。
館内で店番をしている女性の方に入浴券を手渡し、お座敷の食堂を通過して浴室へ向かいます。2つある浴室は「希泡の湯」および「美泡の湯」と名付けられており、温泉に含まれる泡を浴場の売りにしていることが、その名前から窺えます。暖簾が容易に差し替えられるようになっており、男女入れ替え制なのか否かは確認し忘れちゃいましたが、この時の男湯は「希泡の湯」でした(男女固定制だったらゴメンナサイ)。
貴重品用ロッカーの上にランプが置かれている脱衣室は、中型ロッカー(100円リターン式)や棚・籠の他、洗面台やドライヤーなどひと通りのものが用意されており、コンパクトながら使い勝手はまずまずです。なおこの室内のみならず、館内のいろんなところに懐かしいグッズが飾られており、レトロな雰囲気を基本コンセプトとしているようでした。そういえば、先ほどの松竹錠もその好例ですよね。
先ほど浴室名に関して、泡を売りにしていると述べましたが、室内の壁には「天然炭酸」と大きく書かれた新聞記事の切り抜きが貼り出されており、この記事自体は当温泉とは無関係で、炭酸の美容効果を取り上げたものなのですが、それを例に出して、炭酸が多く含まれる当温泉も同様の効果が期待できますよ、とアピールしているようでした。
内湯は小ぢんまりとしており、この日は若干湯気が篭り気味でしたが、浴槽をはじめ床や壁など全面的に木材が用いられており、また露天風呂に面して窓も大きく確保されているので、伝統的な湯屋らしいぬくもりと高原らしい明るさを兼ね備えた空間となっていました。洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基設けられています。
総木造の浴槽は4~5人サイズ。箱から樋が突き出たような形状の湯口より源泉がドボドボと音を立てて投入され、窓側の隅にあるオーバーフロー管より排湯されています。この時の湯加減はちょっと熱い44℃前後でした。加水の有無がわかりませんが(多分非加水かと思われます)、槽内には循環に関わる設備は見当たらず、放流式の湯使いであることに間違いありません。
続きまして、窓サッシを開けて露天風呂へ。
ちょっとした谷頭に向かって開けているこの露天風呂は、森の中の池を思わせる大きな岩風呂でして、両側が小高くなっているために眺望はききませんが、視界にはお風呂以外の人工物が一切目に入ってきませんので、高原のそよ風を感じつつ、小鳥の囀りを耳にしながら、爽快な湯浴みを楽しむことができました。なお木々に囲まれている場所柄、そして晩秋という季節柄、湯船には落ち葉がたくさん浮かんでいましたが、ちゃんと網が用意されていたので、それでササッと掬ってから入浴しました。
この湯船には、竹筒の湯口から源泉がドボドボと注がれています。もちろんこちらも放流式の湯使いであり、湯面に突き出ているオーバーフロー管より谷を流れる沢へ向かって排湯されていました。ちょっと熱めの内湯と異なり、外気によって冷やされる露天は長湯したくなる41℃くらいになっていました。
面白いことに屋外にも洗い場があり、水栓3基とともに、桶やシャンプー類もちゃんと用意されています。洗い場の壁には「この蛇口は源泉です。2分間位開栓したままお待ち下さい。41℃位の温泉が出ます」と書かれている通り、蛇口を捻ると源泉が出てきました。
お湯は淡く青みがかった山吹色に弱く濁っており、湯口付近では気泡によって白い濁りも発生していました。また湯中では薄茶色の浮遊物(湯の華)が見られ、細かな気泡も無数に浮遊しています。口に含むと金気味や土気味に出汁味や渋味、ほろ苦み、そして炭酸味が感じられ、金気臭や土類臭の他、何がか燻されたような匂い、そして湯口でふんわりとしたタマゴ臭が嗅ぎ取れました。さすがに施設側が泡をアピールするだけあって、お湯に浸かったときの泡付きが激しく、とりわけ内湯で顕著であり、肌とお湯が接する際には炭酸の気泡が弾けるシュワシュワ感が得られました。この泡付きのおかげなのか、土類泉のようなギシギシ浴感の中でスルスル感も拮抗しており、肌の滑りが結構滑らかなのです。その滑らかな浴感と高原の澄んだ空気が相俟って、ついつい長湯したくなるのですが、ここのお湯は秘めたる強いパワーを有しており、私好みの湯加減だった露天で長湯しているうちに、ボディーブローを食らったかのような脱力感に苛まれ、堪らず湯船から上がったものの、しばらくは心臓が激しく鼓動して汗がなかなか引きませんでした。相当の実力を持った個性的なお湯のようですね。もちろん炭酸のお湯ならではの温浴効果も存分に発揮されました。
立地も存在も「かくれ」ているこちらのお風呂は、掛け流しのお湯を堪能できる上に炭酸の泡付きも楽しい、隠しておくには勿体無い良泉でした。
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 48.6℃ pH6.5 220L/min(動力揚湯) 溶存物質3.22g/kg 成分総計3.72g/kg
Na+:628mg(66.30mval%), Mg++:95.9mg(19.14mval%), Ca++:74.6mg(9.03mval%), Fe++:5.81mg,
Cl-:435mg(30.23mval%), SO4--:332mg(17.01mval%), HCO3-:1305mg(52.70mval%),Br-:1.2mg,
H2SiO3:216mg, HBO2:43.5mg, CO2:503mg,
群馬県吾妻郡長野原町応桑1985-175 地図
0279-82-1526
ホームページ
11:00~19:00 火曜定休
平成26年1月~3月は祝・土・日のみの営業
ロッカー(貴重品用は無料、中型は100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★