※2014年に閉館し、建物も取り壊されてしました。
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リゾート地のイメージが強いニセコの地にあって、「ニセコ薬師温泉」はリゾートという言葉が持つニュアンスとは全く逆のベクトルを示す、昔ながらの鄙びた湯治宿風の温泉として、温泉ファンの間では夙に有名な存在ですね。前回取り上げた「ニセコ黄金温泉」を出た後、湯本温泉か五色温泉を目指すべく、山の方へ上る感じで車を走らせていたのですが、偶々路傍に立つ薬師温泉の看板が目に入ったため、急遽立ち寄ることにしました。
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建物は道路を挟んで二棟あり、まずは右側の食堂棟1階にある券売機で料金を支払います。このマシンが驚くほどポンコツで、今どきこんな古い機械が現役であることに感動すら覚えます。なお100円玉しか使えないのですが、隣に両替機があるので、500円玉や1000円札で支払う場合はその両替機で100円玉に崩しましょう。
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料金を支払ってプラ券を入手したら、向かいの本館へ。キツネやハチの注意書きは相変わらずですが、よく見ますとキツネのイラストが変わっていますね。
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ロケに来たタレントのサインがたくさん飾られている館内は、薄暗くて物音ひとつ聞こえず、ひと気も感じられないのですが、「ごめんください」と声をかけるとどこからともなく宿のおばちゃんが現れてプラ券を受け取り、お風呂がある方を指さしました。日の当たる窓ガラスのまわりには、季節柄、カメムシが大発生していました。
●透明湯
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「薬師温泉」には「透明湯」と「濁り湯」という2つの源泉があり、前者には男女別の、後者には混浴の浴室が用意されているわけですが、今回はまず「透明湯」から入ることにします。
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失礼ながらいつ崩壊してもおかしくないような古い建物であり、脱衣室も相当草臥れていますが、外来入浴客が多いためか、旅館でありながら有り難いことにコインロッカーが設置されています。壁の張り紙には、浴槽が深いので注意してほしいという旨が説明されていますが、そのイラストからモグラ叩きを連想してしまうのは私だけでしょうか。
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昔ながらの湯治宿風情を色濃く残す浴室には、1.3m×3.5mのプールみたいな浴槽がひとつあり、洗い場にはシャワー付き混合水栓が2つ用意されていますが、温泉情緒を醸し出すような飾りなどは見当たらりません。そして長年にわたる使用のため、室内には温泉成分の付着がこびりついて、全体的に茶色く染まっています。こうした歓楽的要素が一切ないお風呂にこそ、温泉ファンは心を踊らせてしまうのですね。
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浴槽は女湯と一体となっていて、身長165cmの私ですと胸まで浸かるほどの深さがありますから、プールに取り付けられているようなステップ付きの手すりに掴まりながら湯船に入ります。
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お湯は浴槽の底から気泡を伴って湧いており、湯面にはアブクがひっきりなしに上がっています。入浴前の湯船は浴室名の通りに無色透明ですが、私が湯船に入ることによってお湯が撹拌されると、ベージュ色の沈殿が大量に舞い上がり、湯船はたちまち褐色に濁りました。
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このお湯で特筆すべきは高濃度の炭酸ガスでしょうね。湯船に足を入れただけで脛でシュワシュワと泡が弾け、その弾けた刺激がピリピリと伝わってくるほど、お湯全体がソーダ水のようにアワアワしており、口に含んでみると薄い塩味や出汁味の他に強い炭酸味が感じられ、入浴中は全身が泡だらけになってしまいました。お湯の温度は40℃くらいで、いつまでもじっくり浸かっていられます。と言っても、沈殿の量が半端じゃなく、しかもその色や形が不気味なので、秘湯に慣れない人ですと気持ち悪がってしまうかも。
●濁り湯
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続いて混浴の「濁り湯」へ。
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総木造の古い湯屋に湯船がひとつあるだけで、昼尚暗く、一つの照明がボンヤリと照らすばかり。また洗い場などのお風呂らしい設備も無く、床面積の殆どは浴槽によって占められています。まさに秘湯の名に相応しい趣きですね。「濁り湯」の名の通りに橙色に強く濁ったお湯が木の湯船に張られており、その濁り方の強さゆえ、底面どころか湯面から数センチ下すらも見えません。こちらも足元湧出ですから、湯面では常にプクプクと泡が浮かび上がっています。湯加減は「透明湯」よりも低い37~8℃であり、不感温度に近い温度ですから、私は1時間以上も浸かり続けてしまいました。
お湯は炭酸味が強い重炭酸土類泉的な味を有し、湯面からは金気臭と土気臭が漂っています。そして肌には忽ち炭酸ガスの気泡が付着して、全身泡だらけになってしまいます。ぬるいにもかかわらず湯上がりにポカポカ感が持続するのは、炭酸ガスの温浴効果がなせる業でしょうね。なお、言わずもがなですが「透明湯」「濁り湯」ともに完全掛け流し。
薬師温泉の鄙びた独特の佇まいは、お客さんによって好みが分かれるところですが、建物の老朽化に負けること無くいつまでも温泉ファンを魅了し続けてほしいものです。
成田温泉
弱食塩泉 39℃ pH5.6 蒸発残渣2.156mg,
Na+:0.500mg, Ca++:0.187mg,
Cl-:0.819mg, HCO3-:0.364mg, SO4--:0.148mg,
(昭和32年3月25日)
(「透明湯」と「濁り湯」の両方に同じ手書きの分析表が掲示されているため、どちらの源泉のデータなのかよくわかりません)
北海道磯谷郡蘭越町日出370 地図
0136-58-3057
日帰り入浴6:00~21:00
300円
ロッカーあり、他備品類なし
私の好み:★★
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リゾート地のイメージが強いニセコの地にあって、「ニセコ薬師温泉」はリゾートという言葉が持つニュアンスとは全く逆のベクトルを示す、昔ながらの鄙びた湯治宿風の温泉として、温泉ファンの間では夙に有名な存在ですね。前回取り上げた「ニセコ黄金温泉」を出た後、湯本温泉か五色温泉を目指すべく、山の方へ上る感じで車を走らせていたのですが、偶々路傍に立つ薬師温泉の看板が目に入ったため、急遽立ち寄ることにしました。
こちらには以前にも訪れており、4年ぶりの再訪となります。当時(上写真)と現在を比較しても、外観などは殆ど変わっていないようです。
初回訪問時は、入口扉に張ってあったキツネやハチに関する注意(開けっ放しにすると侵入しちゃうという注意)を見て、関東人である私は北海道らしさを感じたものです。また当時の扉の脇には「北海道第三区二級旅館」という古い札が掛けられていました。
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建物は道路を挟んで二棟あり、まずは右側の食堂棟1階にある券売機で料金を支払います。このマシンが驚くほどポンコツで、今どきこんな古い機械が現役であることに感動すら覚えます。なお100円玉しか使えないのですが、隣に両替機があるので、500円玉や1000円札で支払う場合はその両替機で100円玉に崩しましょう。
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料金を支払ってプラ券を入手したら、向かいの本館へ。キツネやハチの注意書きは相変わらずですが、よく見ますとキツネのイラストが変わっていますね。
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ロケに来たタレントのサインがたくさん飾られている館内は、薄暗くて物音ひとつ聞こえず、ひと気も感じられないのですが、「ごめんください」と声をかけるとどこからともなく宿のおばちゃんが現れてプラ券を受け取り、お風呂がある方を指さしました。日の当たる窓ガラスのまわりには、季節柄、カメムシが大発生していました。
●透明湯
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「薬師温泉」には「透明湯」と「濁り湯」という2つの源泉があり、前者には男女別の、後者には混浴の浴室が用意されているわけですが、今回はまず「透明湯」から入ることにします。
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失礼ながらいつ崩壊してもおかしくないような古い建物であり、脱衣室も相当草臥れていますが、外来入浴客が多いためか、旅館でありながら有り難いことにコインロッカーが設置されています。壁の張り紙には、浴槽が深いので注意してほしいという旨が説明されていますが、そのイラストからモグラ叩きを連想してしまうのは私だけでしょうか。
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昔ながらの湯治宿風情を色濃く残す浴室には、1.3m×3.5mのプールみたいな浴槽がひとつあり、洗い場にはシャワー付き混合水栓が2つ用意されていますが、温泉情緒を醸し出すような飾りなどは見当たらりません。そして長年にわたる使用のため、室内には温泉成分の付着がこびりついて、全体的に茶色く染まっています。こうした歓楽的要素が一切ないお風呂にこそ、温泉ファンは心を踊らせてしまうのですね。
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浴槽は女湯と一体となっていて、身長165cmの私ですと胸まで浸かるほどの深さがありますから、プールに取り付けられているようなステップ付きの手すりに掴まりながら湯船に入ります。
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お湯は浴槽の底から気泡を伴って湧いており、湯面にはアブクがひっきりなしに上がっています。入浴前の湯船は浴室名の通りに無色透明ですが、私が湯船に入ることによってお湯が撹拌されると、ベージュ色の沈殿が大量に舞い上がり、湯船はたちまち褐色に濁りました。
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このお湯で特筆すべきは高濃度の炭酸ガスでしょうね。湯船に足を入れただけで脛でシュワシュワと泡が弾け、その弾けた刺激がピリピリと伝わってくるほど、お湯全体がソーダ水のようにアワアワしており、口に含んでみると薄い塩味や出汁味の他に強い炭酸味が感じられ、入浴中は全身が泡だらけになってしまいました。お湯の温度は40℃くらいで、いつまでもじっくり浸かっていられます。と言っても、沈殿の量が半端じゃなく、しかもその色や形が不気味なので、秘湯に慣れない人ですと気持ち悪がってしまうかも。
●濁り湯
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続いて混浴の「濁り湯」へ。
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総木造の古い湯屋に湯船がひとつあるだけで、昼尚暗く、一つの照明がボンヤリと照らすばかり。また洗い場などのお風呂らしい設備も無く、床面積の殆どは浴槽によって占められています。まさに秘湯の名に相応しい趣きですね。「濁り湯」の名の通りに橙色に強く濁ったお湯が木の湯船に張られており、その濁り方の強さゆえ、底面どころか湯面から数センチ下すらも見えません。こちらも足元湧出ですから、湯面では常にプクプクと泡が浮かび上がっています。湯加減は「透明湯」よりも低い37~8℃であり、不感温度に近い温度ですから、私は1時間以上も浸かり続けてしまいました。
お湯は炭酸味が強い重炭酸土類泉的な味を有し、湯面からは金気臭と土気臭が漂っています。そして肌には忽ち炭酸ガスの気泡が付着して、全身泡だらけになってしまいます。ぬるいにもかかわらず湯上がりにポカポカ感が持続するのは、炭酸ガスの温浴効果がなせる業でしょうね。なお、言わずもがなですが「透明湯」「濁り湯」ともに完全掛け流し。
薬師温泉の鄙びた独特の佇まいは、お客さんによって好みが分かれるところですが、建物の老朽化に負けること無くいつまでも温泉ファンを魅了し続けてほしいものです。
成田温泉
弱食塩泉 39℃ pH5.6 蒸発残渣2.156mg,
Na+:0.500mg, Ca++:0.187mg,
Cl-:0.819mg, HCO3-:0.364mg, SO4--:0.148mg,
(昭和32年3月25日)
(「透明湯」と「濁り湯」の両方に同じ手書きの分析表が掲示されているため、どちらの源泉のデータなのかよくわかりません)
北海道磯谷郡蘭越町日出370 地図
0136-58-3057
日帰り入浴6:00~21:00
300円
ロッカーあり、他備品類なし
私の好み:★★