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ニセコ湯本温泉の源泉である「ニセコ大湯沼」は大地のパワーが伝わってくる景観が美しい観光名勝であり、その大湯沼で湧く硫黄の温泉は「雪秩父」などの施設で入浴することができますが、沼のお湯自体は熱すぎますし、観光客の視線が降り注がれますから、この沼で野湯をするにはちょっと無理があるんですよね。ということで、大湯沼から奥に位置し、北海道の温泉マニアによく知られた野湯である「ニセコ小湯沼」へ向かうことにしました。
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以前は大湯沼から遊歩道が伸びていましたが、その道は廃道になってしまったそうですから、私は事前に調べておいた情報に基づいて林道へ乗り入れ、我が車が停車している上画像のポイントから西の方角に伸びる杣道を歩くことにしました。歩き始める前に、足元をゴム長靴に履き替え、熊よけの鈴も装着し、準備万端♪
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スタートしてから一部を除いて緩やかな下り坂が続きます。さすがに雪の季節を目前にした晩秋の山ですから、一年草の藪はすっかり枯れており、ルーティングにはちっとも苦労しませんでしたが、しかしクマザサは両側から道を覆い尽くさんばかりに繁っていましたから、腰を屈めながら笹ヤブの中を進むほかありません。
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歩き始めてから4~5分で視界が開け、ちょっとした広場に到達です。前方からは小川のせせらぎが聞こえてきますので、小湯沼を源とする馬場川がすぐそばで流れているのでしょう。
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この広場から馬場川の流れに沿う形で進む方角を北に変えます。といっても川からは離れているので、ひたすら藪の中を歩くことになるんですけどね。広場の右手に見える、切れ込みのような細い踏跡からヤブの中へ突進です。全行程の中ではこの踏跡を見つけるところが最大の難関かもしれませんが、少なくとも私の場合は、この手の探索を繰り返しているうちに道を見つける嗅覚が鋭くなっているので、苦もなく即座に発見できちゃっいました。
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広場からは登りが続きます。そして両側から茂るクマザサも行く手を遮ります。地面を這うほど深く腰をかがめながら、ただひたすら前進あるのみ。
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坂の途中には苔むした岩が露出する箇所もあり、しかもところどころに泥濘もありますから、結構滑りやすくて注意を要しました。
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やがて登り勾配が緩やかになり、幅員も若干広くなって、腰をかがめる角度も深くせずに済むようになると・・・
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スタート地点から13分ほど歩いた地点で、笹ヤブに埋もれて傾いている「小沼入口」の案内杭を発見。
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案内杭から1分もしないうちに俄然視界が開け、目的地の小湯沼にたどり着きました。灰色に濁る沼の向こう側に聳えるチセヌプリはうっすら雪化粧しています。ちなみに、この時の気温は7℃。しかも頭上には鉛色の雲が垂れ込めていました。
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小湯沼を源として、大湯沼の脇を流れ、国民宿舎「雪秩父」の露天風呂をかすめ、まっすぐ南へ流れて、昆布と蘭越の中間辺りで尻別川と合流する馬場川。上画像の地点がその流れの実質的なスタート地点なのでしょう。夏になればこの川でも野湯が楽しめるようですが、この日は気温が低いために川の温度も10℃台まで下がっており、とてもじゃありませんが入浴できませんので、ここは見学のみに留めておきました。
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岸を歩いて辺りを散策です。灰色に濁る沼のあちこちで温泉が湧出しており、水際では無数の泡が上がっていて、さながら別府の坊主地獄のようでした。
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ちょうど半周したあたりで、人工的に掘られたと思しき湯溜まりを発見。
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明らかに野湯を目的として掘られたものと推測され、そのロケーションたるや素晴らしいものがあるのですが、温度計を突っ込んでみたところ29.1℃という、かなりぬるい湯加減であることが判明。冬のような冷たい外気が温泉の熱を奪ってしまうのでしょうね。
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せっかくここまで来ておきながら、ただ見学するだけでは温泉バカの名が廃る。30℃に満たないものの、決して冷たいわけじゃないから、気合を入れたら入浴も無理じゃない。ということで、誰もいないことを幸いに、その場で脱衣して、まずその湯溜まりに入ってみることにしました。
こうしてご覧になってもわかるように、結構大きな湯溜まりでして、深さもいい具合です。底からお湯が湧いていますから、実際に浸かってみますと温度計の数字よりも多少は温かく感じました。
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続いて沼自体の温度も計測してみました。温泉の湧出箇所にはムラがあるため、ポイントによって温度が異なっているのですが、この時は最も熱いところでも21.2℃でして、冷たいわけじゃないのですが、かといって入浴するに相応しい温度でもなく、実に中途半端な感じなのであります。
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でも上述の湯溜まりに入るべく裸になったついでなので、この沼でも入ってみることにしました。
入った感想を一言で申し上げるならば「怖かった!」
たしかに沼の表面は温度計の数字通りなのですが、温泉は底から湧いているので、足もとは火傷しそうなほど熱い。しかも底なし沼のように泥が堆積しているため、迂闊に足を踏み入れると、そのまま沈んで底に引きずり込まれそうになってしまう…。熱さの恐怖と、底なしの恐怖。これら2つの恐ろしさに、万一のことがあっても誰も助けてくれない「孤独」という要素が加わって、沼では落ち着いて野湯を楽しむことが出来ず、しかも空からチラチラと小雪が舞い始めたため、今回は残念ですが早々に撤退することにしました。ま、入浴を果たしただけでも良しとしましょう。
湯泥で全身灰色の泥だらけになった体を、沼に注ぐ清冽な沢の水で洗い落とし、タオルで水滴を拭って着替えようとすると、肌の至る所に黒い斑点が付着しているではありませんか。よく見るとその斑点はブヨなのでした。こんな寒い季節にもかかわらず、湯沼の温かさによって生きのび、最後の生命力を振り絞って吸血活動に勤しんでいたのでしょう。私はまんまとその餌食になってしまったのでした。
慌ててブヨを払い落とし、急いで着衣して冷えきった体の体温を維持しつつ、小雪が舞い散る中、クマザサの藪を小走りで戻っていったのですが、それから一週間は強烈な痒みと腫れが止まらず、あまりの痒さに掻き壊してしまった箇所は今でも跡が残っています。野湯を楽しむことって、なかなか一筋縄ではいかないものですね。
野湯につき分析表なし
北海道磯谷郡蘭越町字湯里 地図(国土地理院)
野湯につき無料
私の好み:★★