温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

タイ チェンマイ県サムーン郡 メートー温泉

2014年04月24日 | タイ
今回のタイ北部における温泉めぐりを計画するにあたって事前に調査をしていたところ、チェンマイの市街から北西に位置する山間部のサムーン郡には魅惑の温泉が点在しているとの情報を得たのですが、当地で温泉がある場所はかなりの秘境らしく、私一人で現地へ赴くには不安を覚えたので、タイ北部の様々な情報を発信なさっているブログ「チェンマイ・田舎・新明天庵だより」のYさんに同行をお願いすることにしました。レンタカーでまずは山岳民族のカレン族が暮らすメートー村の「メートー温泉」を目指します。


 
チェンマイから田舎町サムーンを通過し、アップダウンが激しい山間のクネクネ道を走ること約2時間半。途中の道路は舗装こそされているものの、標識は全てタイ語表記であり、しかも道路や交差点が方向感覚を狂わすような微妙な曲がり方をしているので、私のような初見の人間ならば迷ってしまうこと必至です。画像右(下)のスクリーンショットで示していますように、私は事前にGoogleのストリートビューで場所や周辺風景を確認していましたが、それでも再度一人で行くことはできないかもしれません。メートー集落がある仙境にはこのゲートを潜って急坂が続く細い道を更に1キロほど奥へと進んでゆきます(コンクリ舗装されているので、普通の乗用車で問題なく走行できますよ)。



集落の中心にある学校を通り過ぎ、小川を渡った数十メートル先の右手に、川原へ下りられる場所があり、そこに温泉が湧いているのであります。牛の群れのそばで川の方へ下りている後ろ姿は、今回案内して下さったYさんです。
ちなみに、この記事を書くにあたって色々と調べていたら、私が旅行計画を練っていたときには上述のゲートまでしか及んでいなかったGoogleストリートビューは、2014年4月現在ではこの温泉の目の前まで表示されるようになっていました(↓のスクリーンショットを参照あれ)。てことは、こんな秘境まであの全方位カメラ付きの車がやってきたということですね。Google恐るべし…。



 
そもそもこの温泉は利用されること無く垂れ流しにされていたんだそうですが、温泉の存在を知った現地滞在の日本人有志が、せっかくの自然の恵みを有効活用するべく、村人の関心や協力も受けながら、自費を投じて入浴できるように整備したんだそうです。完成に至るまでの紆余曲折の過程は、Yさんの「チェンマイ・田舎・新明天庵だより」における特集記事で詳しく描かれていますので、ご一読下さい(以下にリンクを張っておきます)。温泉を通じた日本とタイ山岳民族との文化交流の様子が伝わってきます。


ブログ「チェンマイ・田舎・新明天庵だより」内のドキュメント「温泉の恵みで生徒や村人に笑顔を!」
その1その2その3その4その5その6その7その8その9その10その11その12


温泉が自噴する源泉には屋根掛けされており、屋根の柱には「名湯温泉」と日本語で記された立派な銘板が掲示されていました。メートー集落の温泉だから「名湯」の字を宛てたわけですね。これは昨年改修工事(といっても日本人有志によるDIY作業)が行われた際に、取り付けられたものなんだそうです。ここはすぐ目の前に川が流れており、雨季になって増水すると、せっかく整備した温泉が濁流に呑まれてしまうんだそうでして、その修復工事が昨年に実施されたのでした。なお、なぜ源泉の上に屋根が掛けられているのかという点について、Yさんの見解によれば「湧出源の点在するぬかるみ全体をコンクリート壁で四角に囲って、雨水や枯葉などが入らないように屋根を付けたのであろう」とのこと。


ブログ「チェンマイ・田舎・新明天庵だより」内の連載記事「タイ・チェンマイの野天風呂温泉“名湯温泉”看板完成!」
その1その2


 
ちなみに屋根の下はこんな感じになっています。約40℃の温泉がそこここから自噴しており、それをコンクリの槽で囲ってストックしているのですが、湧出時点の温度が約40℃ですから、貯湯しているうちに冷めてしまい、槽内のお湯はかなりぬるくなっていました。さすがにぬるいお湯では入浴に不向きですから、比較的熱いお湯が湧出するポイントにカバーを被せて、後述する土管風呂に湧いたばかりのお湯をダイレクトに送れるような配管を、日本人有志の方々が取り付けてくださっています。


 
そういえば、私達がこの地へ到着する前から、温泉の前では牛が群れをなしており、私が彼らに近づいても、ちっとも怖がらないばかりか、むしろ人懐っこく、「撫でてくれ」と言わんばかりにこちらに頭を擦り寄せようとしてきます。なぜ牛達が温泉の前に集っているのかといえば、ミネラル分を多く含む温泉を飲泉するのが好きなんですね。近くには清らかな水の渓流が流れているにもかかわらず、牛達は川に見向きもせず、こぞって温泉を飲もうとしていました。温泉を積極的に飲泉して健康増進や治療に活かしている事例はヨーロッパ各地で見られますが、東南アジアの牛達は、日本人が整備した温泉で、ヨーロッパ流の温泉健康法を実践しているのであります。


 
当地には2つの土管(ヒューム管)風呂があり、低い方は洗濯用兼子供風呂、高いものは入浴用です。高い方に入浴しますと、肩までしっかり浸かることができました。また高い方の底は玉砂利敷きとなっており、以前はここからも温かいお湯が湧出していたんだそうですが、私が入った時には湧出が止まっていました。
源泉から引かれている供給配管は二股に分かれて双方にお湯を注いでいます。バルブの開閉や配管の向きを変えることによって、お湯を出したり止めたりすることも可能です。



配管から出てくるお湯は34.5℃でpH7.7でした。結構ぬるいのですが、常夏の南国で全身浴するなら寧ろこのくらいの方がサッパリ爽快かもしれませんね。本来はもっと高い温度らしいのですが、高温源泉が自噴するポイントに被せてある被覆物がちょっと浮いているかズレている等の理由によって、源泉貯湯槽内にストックされているぬるいお湯が配管へ浸入してしまい、この温度まで下がってしまっていたようでした。Yさんは「修理せなあかんな」と困った表情を浮かべていましたが、なにしろ手作りの温泉ですから、すぐに不具合が現れてしまうのでしょう。温泉を管理することって本当に難しいんですね。なおこのお湯は無色透明で無味無臭、癖のない優しく柔らかなフィーリングです。中性で低張性高温泉の単純温泉といったところでしょうか。


 
せっかくなので記念撮影させていただきました。仙境とはいえ、川の対岸には学校の女子寮があり、生徒たちから丸見えですので、きちんと水着を着用して入浴しております。私が低い土管に浸かってノンビリしていると、やがて川の中にいた水牛がこちらへやってきて、おもむろに飲泉をはじめました。普通の牛のみならず、水牛まで飲泉を好むんですね。
このようにメートー温泉のお湯は牛達の口に触れている可能性が高いので、衛生面を気にする方にはおすすめできませんし、また周囲を牛達が踏み荒らしていたので辺りは泥々にぬかるんでおり、時折「芳しい」牛糞の匂いも香ってきましたので、普通の露天風呂を想像すると期待を裏切られてしまうでしょう。逆に私のように野趣溢れる温泉が好きな方には堪らない環境です。
尤も、当記事の上の方で紹介しておりますドキュメント「温泉の恵みで生徒や村人に笑顔を!」を拝読していますと、工事竣工時には土管風呂のレンガが敷かれていたようですが、雨季に川が増水したことにより、浴槽やコンクリの腰掛けは残ったものの、レンガは流されてしまったようです(参考:ドキュメント「温泉の恵みで生徒や村人に笑顔を!」・その9)。

この野趣あふれる露天風呂は、飲泉好きな牛達や、DNAレベルで温泉をこよなく愛する日本人が利用するばかりでなく、お風呂の周辺には使い捨てのシャンプーの袋などが捨てられていたので、地元の方々も日々の生活でこの温泉を活用していることが窺えます。実際に対岸の学校の生徒たちもここで温泉を浴びてるんだとか。現地滞在邦人の有志の方々の努力によって、現地の生活にも温泉が浸透するようになったのですから、その尽力は間違いなく報われているでしょう。これぞ温泉を通じた文化交流ですね。
とはいえ、衛生観念の違いと言ってはそれまでですが、ボディーソープやシャンプーの袋などのゴミを、風呂の周りに捨てて散らかしたままにしている点が残念です。Yさんはこの温泉のみならず、チェンマイ周辺の各温泉で衛生的に保つ風習を根付かせるべく、自らゴミ拾いを実践することによって現地の啓蒙に努めているそうですが、ゴミ問題はなかなか改善しないと嘆いていらっしゃいました。私としても、ただ入浴するだけでは能がありませんので、日本から持参したゴム袋を片手に、Yさんと一緒にメートー温泉のクリーンアップを手伝わせていただきました。


 
山間部の秘湯を満喫した後には、対岸にあるメートー学校をちょっと見学させていただきました。校門の前には牛が屯しており、校門から校庭への侵入を試みる度に生徒に追い返されることを繰り返していました。なお画像の左に写っている白い衣装を着ているのは、カレン族の女子学生です。私が訪れた日は金曜日でしたが、この学校では毎週金曜日に自分が属する民族の衣装を着用することになっているんだそうです。


 
山間の秘境とは思えない立派な校舎ですね。画像右(下)は温泉から見た女子寮の建物です。寮のベランダでは、土管風呂で入浴する異国人の私を、生徒たちが好奇の眼差しで見つめていました。温泉があるメートー地区は、タイの山岳民族のひとつであるカレン族が暮らす小さな集落です。山岳民族はかつて焼畑や樹木伐採、そしてアヘン栽培等で生計を立てていましたが、タイ政府によってそれらが禁止されると経済的に行き詰まってしまい、また都市部へ就職しようと思っても、自らの民族の風習や言語がタイの一般的なものと異なるために、なかなか仕事にありつけない状況にあったんだとか。そこで山岳民族の子どもたちに教育の機会を与えるべく、日本など海外のNPO法人によってこの学校が設立されたんだそうです。学校は幼稚園・小学校・中学校を併設しており、地元のカレン族のみならず、周辺地域(中には遠方の生活者も含む)に暮らすリス族やミャオ族(モン族)などの子供たちも集まっています。全校生徒は約300人弱で、うち半数以上は学校内に設けられた寮で生活しています。なお寮生活する生徒に関しては、学費のみならず、食費や生活費など一切合財が無償なんだそうでして、いまではタイ政府も助成金を支給しているそうです。
なおこのメートー学校に関しては、日本のNPO団体である「地球市民ACTかながわ」が積極的に支援を行っており、ホームページにも学校に関する詳しい説明がなされていますので、関心がある方は是非ご一読あれ(「地球市民ACTかながわ」ホームページおよびメートー学校に関するコンテンツ)。


 
訪問時はたまたま休憩時間だったらしく、生徒たちはお喋りしたりスポーツしたりと、各々自由に時間を過ごしていました。南国とはいえ高地ですから、昼間でも涼しくて快適です。いや、涼しいどころか、生徒達の話しによれば、この日(2月下旬某日)の朝は気温が7℃まで下がったそうでして、防寒具が必要なほどの冷え込みです。
上画像に写っているのはミャオ族(モン族)(※)の女子生徒でして、たまたま校門近くのベンチに座って揚げパンをつまみながらおしゃべりしていたので、ちょっとお邪魔させてもらいました。授業中は民族に関係なくみんなで交流するのですが、授業以外ではこのように自民族同士で集まる傾向にあるようです。言葉も文化も違うのですから、仕方ありませんね。画像左端に写っているオッサンはともかく、3人の女の子は皆小柄で小学生のような幼い顔つきにもかかわらず、落ち着いている上に年長者への配慮がきちんとしており、柔和な微笑みを絶やすことがなかったので、何年生なのか訊いてみたところ、なんと中学3年生なのでした。峻険な山岳で生活する民族は、俊敏性や機動性が求められるために小柄な体形になってしまうのかな。彼女たちもジャージの上から民族衣装を着用しており、黒地の服に施された色鮮やかな刺繍、とりわけ放射状の模様がとても綺麗で印象的でした。なおタイで暮らすミャオ族(モン族)は文化的な違いによって緑(青)モンと白モンの2グループに細分されるらしく、彼女たちいわく、画像で最も右側の子は緑(青)モン、その左隣の子と私の右に座っている子は白モンなんだとか。


(※)東南アジアや中国に暮らす少数民族のうち、自らを「モン」と称する民族には2種類あるので、とってもややっこしく、注意を要します。ひとつはミャンマーを中心に分布しているモン族で、人口は約800万人ほど、ペグー人という別称もあり、ほとんどがミャンマー国内で生活しています。もうひとつは中国の貴州省や湖南省あたりを中心にしてラオス・ベトナム・タイなど東南アジア各地に広がっているミャオ(苗)族であり、彼らは自分たちを「モン」と称しています。そして前者と後者は、同じ「モン」を称していながら、系統的には全く別なのです。なお私が会った彼女たちは後者のモン、つまりミャオ族です。

映画をよく観る方でしたら、クリント・イーストウッド監督の映画「グラン・トリノ」で、モン族と称する東南アジア系の民族が準主人公を含めて多数登場するのをご記憶かと思いますが、ここでのモン族は、私がメートー学校で出会った女の子と同じミャオ族であり、劇中では描かれていませんが、アメリカに住むミャオ族の多くは政治難民として移住した人々やその2世・3世です。ベトナム戦争時にラオスの赤化を防ぐべく、CIAの工作によってラオス国内のミャオ族の一部は民兵組織化され、アメリカの手先としてラオスの共産勢力であるパテート・ラオに対抗したのですが、結局ラオスは共産化されてしまい、右派のミャオ族はタイ経由で海外へ逃れていきました。その主な移住先がアメリカだったんですね。
駄文が長くなったついでに言及しますと、映画「地獄の黙示録」でマーロン・ブランドが演じたおどろおどろしい狂気の人「カーツ大佐」は、実際に存在したアメリカCIAのトニー・ポーがモデルになったとされていますが(否定する意見もあるそうですが)、そのトニー・ポーこそラオスでミャオ族民兵の組織化や軍事訓練を担当した人物とされています(真偽の程は定かではありませんが…)。


あれれ、女の子たちとも温泉とも全く関係のない話に逸れてしまいました。失礼しました。とにもかくにも、少数民族はその時々の政治や世界情勢に翻弄されがち。湯上がりでサッパリした肌に山のそよ風を受けつつ、女の子たちの微笑みを目にしながら、この学校の生徒たちには平和で笑顔あふれる生活を送ってほしいと願ってやみませんでした。が、まぁ、細けぇこたぁいいからさ、みんなで風呂入って仲良くしようぜ! タイの山間部では他でも温泉が湧いていますから、温泉を通じた文化交流が深まり、当地以外の山岳民族の皆さんにも温泉入浴の風習が広まると良いですね。サムーン郡の名湯「メートー温泉」は、文化交流の新しいカタチとして、後世に語り継がれる良き名答となるかもしれません。


温泉分析表なんてありませんが、おそらく単純温泉かと思われます。


GPS:18.826339N, 98.622427E,

いつでも利用可能
無料
備品類なし

私の好み:★★★
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タイ チェンマイ県ドーイサケット郡 ドーイサケット温泉

2014年04月22日 | タイ
 
チェンマイの市街中心部から北東へ車で約30分(30km強)ほど走った先にあるドーイサケット温泉(Doisaked Hot Springs)は、周囲に水田が広がるばかりの至って長閑な田舎の温泉ですが、サンカムペーン温泉の観光地化および料金の値上げを忌避する現地滞在邦人の皆さんは、こぞってこのドーイサケット温泉へとやって来るんだそうです。私もチェンマイ市内でレンタカーを借り、現地へ行ってみることにしました。


 
チェンマイからアクセスする場合は、118号線をチェンライ方面へ30キロ近くひたすら進んで小さな峠を越え、途中で右折して3005号線を2キロ進めば辿り着けます。118号線や3005号線の路肩にはこのような標識が立っていますので、私もGPSのお世話にならずに到達できました。距離的には、チェンマイでバイクを借りて日帰り旅行するにも丁度良いかと思いますし、3005号線をそのまま南下すればサンカムペーン温泉にも行けちゃいますので、2つの温泉をハシゴすることだってできるでしょう。


 
温泉一帯は公園のような広場となっており、宿泊施設はありませんが、個室風呂や売店などの他、マッサージコーナーやカフェなど、ひと通りのものは揃っているので、温泉に浸かって心身を癒やしながら、田舎の静かな環境で日がなノンビリ過ごすにはもってこいかもしれませんね。またこうした外来客向けの施設のほか、地元民が日常生活で使うための温泉をストックしている槽、いわゆる「ジモ専」がいくつもあり、温泉エリアに入ってまず目に入ってくるのがそれらの温泉槽群です。コンクリ造で四角形のタイプもあれば土管風呂のようなものもあったりと、その形態は様々です。


 
私は朝9時過ぎに当地を訪れたのですが、ちょうどジモ専の槽では、地域住民の方々が温泉を使って洗濯をしていました。時間帯によっては、頭からお湯を被って一日の汗を流している人々の光景も見られるようです。


 

一見すると養魚場みたいなジモ専の温泉槽。お湯は泥でちょっと濁っていますね。日本人温泉マニアの端くれとして、私はここで入浴してみたい衝動に駆られたのですが、各槽の畔には入浴NGの看板が立てられていますので、ここでは見学のみに留めておきました。こちらでは温泉を生活用水かわりに使ったり、あるいは沐浴するような感じで(しかも大抵は着衣のまま)掛け湯するのが、一般的な温泉の利用方法なのであります。



敷地内にはあちこちに温泉槽があるんです。この槽は元々上屋があったような造りでして、入浴してくれと言わんばかりの雰囲気ですが、ここにも入浴NGの看板が立っていました。縁に手桶が置いてあるので、ここは掛け湯するための槽なのでしょうね。


 
続いて公園内の最奥部へ向かいますと、そこにはフツフツと煮えたぎる熱湯が自噴する源泉が、濛々と湯気をあげていました。源泉の周囲に立てられた武骨なフェンスが、いかにこのお湯が熱くて危険であるかを物語っています。


 
源泉や湯気から伝わる熱気に圧倒されそうになりながらカメラを構えていますと、売店の方からおばちゃんがやってきて、籠に入れた野菜を温泉に浸して茹ではじめました。温度計を突っ込んだら75.4℃という高温を計測。



源泉のお湯は、小川に沿っているコンクリの流路を、川水をブレンドさせながら下ってゆきます。流下に連れて温度も程よく冷めるため、コンクリの川岸に腰を掛けて足湯を楽しむ方もいらっしゃいました。



小川を挟んだ足湯の対岸には、雑貨や食料品を売っている露店があり、南国らしい果物がたくさん陳列されていました。日本ってフルーツがかなり高価ですが、南国は僅かなお金で甘い果物を食べられますから、フルーツ好きの私にとっては天国のように思えてしまいます。


 
タイのリラクゼーション施設にマッサージは欠かせませんね。長閑な田舎の公園にもかかわらず、こんな立派なマッサージ小屋があるんですから、さすがマッサージ大国です。1時間120バーツですから、日本円に換算したら約380円ですよ。日本でしたら10分当たり1000円が相場ですから、1時間だったら6000円。つまり16分の1で済むんです。その価格差には目眩がしそうでした。


 
カフェが2軒もあるのには驚きました。それだけドーイサケット温泉を訪れる観光客が増えてきているのでしょうね。しかも店内ではWiFiが使えるみたいですよ。


 
観光客の増加はカフェのみならず、お風呂にも影響が及んでいるようであり、最近になってランナー建築っぽい小さなコテージが建てられ、その内部に設けられた2室のVIP風呂が供用を開始したそうです。後述する従来からの個室風呂ですと、その佇まいがあまりに渋くて一般客受けしないのでしょうね。私はチラっと中を覗いて画像を撮るだけに留めましたが、私が退室して間もなく、レクサスに乗ってやってきたファミリーが建物の真ん前に車を止め、このお風呂へと入っていきました。需要は確かにあるようです。



私が今回利用したのは従来からある普通の個室風呂です。当地で全身浴できるのは、この個室風呂か上述のVIP風呂のいずれかのみです。料金は上述の露店で支払います。どの人が担当係員なのかわかりませんでしたが、私の場合は近くにいたおばちゃんに、個室風呂の建物を指さしながら「ナンプーローン(タイ語で「温泉」の意味)」と言ったら、然るべき人を教えてくれました。タイの人は親切ですから、言葉が通じなくても身振り手振りで何とかなっちゃうんですね。


 
公園は広々としているのに、入浴できる個室は5室、VIP風呂の2室を合わせても7室しかないため、特に週末の夕方になると空き待ちが発生してしまうんだそうですが、私が訪れたのは平日の午前中だったので、先客は誰もおらず、自分の好きな個室を自由に選べました。といっても、どの部屋も同じような造りなので、どこを選んでも大差ないんですけどね。ドアを開けて入室します。


 

個室の内部は、少なくともサンカムペーン温泉やルンアルン温泉よりはゆとりがあり、タイル貼りの浴槽は2~3人は同時に入れそうなほど大きなものです。壁には服を掛けるフックが取り付けられている他、腰掛けや手桶も備え付けられています。ただ、バッグを置けるスペースが無かったため、私は腰掛けを荷物置き代わりにしました。


 
正方形の浴槽には予めお湯が張られており、その温度は38.1℃とタイ人向けのぬるめになっていました。でもこの温度じゃ物足りないので…


 
コックを開けて源泉をドバドバ継ぎ足し、日本人好みの温度まで熱くしました。湯口から吐出されるお湯は47.5℃でpH8.0。お湯からはタマゴ臭がふんわり漂い、口にすると明瞭なタマゴ味と微かな塩味、そして石膏甘味が感じられ、そしてスル&スベとした浴感が得られました。温度やpH、そして私の実感から申し上げれば、弱アルカリ性の低張性高温泉といったところでしょう。継ぎ足し式ですが純然たる放流式の湯使いであり、タマゴ感を有する源泉の質感をしっかりと味わせる良いお風呂でした。
静かで長閑な環境のもと、サンカムペーンよりも安くて広いお風呂で、放流式の温泉を堪能できるんですから、温泉にうるさい邦人の皆さんがこちらを選ぶのは必然かもしれません。また日常生活に温泉を活用している地元の方の暮らしに触れられる点でも、訪問する価値があります。
 

 
風呂あがりに売店へ寄ってカゴに入ったタマゴを買い、私も温泉タマゴを作ってみることにしました。売店のおばちゃん曰く「10 minutes」とのことなので、フェンスに立てかけてある竹竿の先にカゴをぶら下げ、源泉の熱湯に浸して待つこと10分。立派な温泉卵の出来上がりです。次の目的地へ向かう途中の車内で、小腹を満たすべく運転しながら温泉卵を頬張ったのですが、これが美味いのなんの。味付けなしでも十分美味しくいただけました。タイの温泉は楽しいですね。


公共交通機関は無いので、チェンマイ市街でトゥクトゥクをチャーターするか、あるいはレンタカーかレンタルバイクで、チェンマイ市街中心部より118号線をチェンライ方面へ走行し、ドーイサケットの街を過ぎて小さな峠を越えたら、標識に従ってゲートのある丁字路を右折し、3005号線を2kmほど南下。チェンマイから30~40分。
GPS:18.909920N, 99.245578E,


個室風呂利用可能時間7:00~19:00
一般個室40バーツ、VIP個室80バーツ

私の好み:★★★
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タイ チェンマイ県メーオーン郡 ルンアルン温泉

2014年04月21日 | タイ
 
サンカムペーンでタイ北部の湯めぐりを開始した私は、同温泉に隣接しているルンアルン温泉(Roong Aroon Hot Springs)を目指しました。サンカムペーン温泉が公立の公園であるのに対し、こちらは私営のリゾート施設です。敷地自体はサンカムペーン温泉の北側に隣接しているのですが、両者は入口が離れているので、サンカムペーンから敷地の外側(西側)をぐるっと2km近くも迂回しないといけません。またサンカムペーン温泉へ行くソンテオは、交渉すればルンアルン温泉にも寄ってくれるそうなのですが、それだけの言語力も度胸もない私はソンテオの利用も諦めざるを得ません。こうした事情により、当地を訪れるに当っては敢えてチェンマイでトゥクトゥクをチャーターし、両方へ楽にアクセスできるようにしたのです。

入口のゲートで守衛のおじさんに入園料20バーツを支払い、園内へと入ります。入って右側は水と緑が美しい景観を織りなすガーデンが広がり、左側にはマッサージ棟や食堂、そして温泉浴場など諸々の建物が並んでいます。


 
画像左は按摩さんが待機しているマッサージ棟。この建物やプールを通り過ぎて食堂へと向かいます。


 
食堂へ向かう前に、右前方で何やらお湯が噴き上がっているのを発見!


 
サンカムペーン温泉のように、こちらでも自噴の高温泉が天高く噴き上がっていました。辺りには温泉い含まれる硫化水素の匂いが漂っています。好奇心に引き摺られて、つい噴泉へ近寄ろうとしてしまったのですが、迂闊に近寄ると熱湯のミストが降り掛かってきますから、火傷しないように注意しましょうね(実体験に基づくアドバイス)。噴泉の手前は熱湯が張られている円形の槽があり・・・


 

私が屁っ放り腰で熱湯のミストから逃げている傍らで、お客さんが煮えたぎる熱湯にタマゴを入れて温泉卵をつくっていました。その傍で横たわっていた看板によれば、タマゴの茹で時間は、柔らかめに茹でるには7分、半熟なら9分、固茹でなら14分とのこと。タマゴを数分で茹で上げてしまうお湯はとっても熱く、この円形の槽に近づくだけでものすごい熱気が伝わってきます。


 
こちらで入浴するにはまず食堂へ趣き、真ん中にある小さなカウンターで受付を済ませます。私が料金を支払いますと、料金と引き換えに紫色のバスタオルを貸し出してくれました。さきほどの公営施設では何も貸してくれませんでしたが、こちらは同額の入浴料にちゃんとタオル分が含まれているんですね。これが公営と民営の差というものでしょうか。


 
壁には温泉分析表が掲示されていましたが、記載されているデータはサンカムペーン温泉のものと全く同じでした。いくら噴出箇所が接近しているとはいえ、源泉が異なればデータも多少は変わってくるはずなのですが、「どうせ近所だから同じだべ」と言わんばかりの大雑把さは、いかにも東南アジアらしい微笑ましいユルさですね。ま、分析表を掲示しているだけでもご当地では立派な方だと思います。また別の壁には「入浴前にはシルバーアクセサリを外してね」と喚起している札が下がっていました。これは温泉には硫黄が含まれているということを示していますね。


 
個室は男女別に分かれており、靴を脱いで男側を入ってゆきますと、こんな感じで十数室の個室が並んでいました。色調こそ違うものの、ほとんどサンカムペーン温泉と同じような造りですね。


 
どの個室も昔の病院の手術室みたいな白いタイル貼りで、アメリカンスタンダード製のバスタブが一つ据え付けられているだけの無機質で単調な造りです。人気を博しているサンカムペーンとは違い、静寂が支配しているこちらの温泉では私以外に利用客がいなかったので、どの個室を選んでも良かったのですが、決め手に欠けるからこそ優柔不断になってしまい、散々迷った挙句、この個室を選択しました。


 
まずは熱湯と水のコックを同時に開けて、湯加減を調節しながらバスタブにお湯を張ります。お湯・水ともに勢い良く出てきますから、ものの数分ですぐにバスタブはお湯で満たされました。
ちなみに室内はビショビショだったので、バッグを室内に置くことはできないのですが、室内には小さなバスケットが用意されていたので、そこに入れて凌ぐことにしました。


 
配管から出てくる温泉の温度は68.0℃、pHは9.3でした。お湯のコックを開けた途端、温泉由来のタマゴ臭がお湯とともに湯船へ放たれました。無色透明でタマゴ臭とタマゴ味、アルカリ性単純温泉でツルスベの気持ち良い浴感といった特徴は、お隣のサンカムペーン温泉とほとんど同じです。しかしながら、味や匂い、そしてツルスベ浴感など、体感できる諸々の特徴は、サンカムペーンよりも若干弱かったような気もします。加水の影響もあるのでしょうけど、源泉から一旦貯湯槽にストックし、その上で浴槽へと供給する構造上、利用客の多いサンカムペーンでは貯湯槽のお湯の鮮度も高くて知覚的特徴も失われずに済んでいたのに対し、私の訪問時はお客さんが少なかったルンアルンでは、貯湯槽での滞留時間が長くなって、その分、硫化水素らしい特徴が飛んでいってしまったのかなぁ…なんて素人ながらに考えてしまいました。

ま、そんな下衆の勘繰りはさておき、ほぼ同じ泉質の温泉であるお隣サンカムペーンと比べると、入園料は安く、個室風呂使用料は同額、しかも貸しタオル付き、あまり混雑せず空いていますので、コストパフォーマンス面ではこちらに軍配が上がりそうな気もします。でも自由に動ける交通手段がないと、ちょっと不便かもしれませんね。

さて、これでタイ北部の温泉の初級クラス入門編はおしまい。次なる目的地はいわゆるジモ専(地元民専用浴場)が併設されている田舎の温泉へと向かいます。


チェンマイ市街、トンラムヤイ市場前の川沿いの道から黄色いソンテオに乗ってサンカムペーン温泉まで約1時間、そこから徒歩約30分(約2km)
GPS:18.815663N, 99.225722E,


入園料20バーツ、個室風呂60バーツ

私の好み:★★




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タイ チェンマイ県メーオーン郡 サンカムペーン温泉

2014年04月20日 | タイ
久々に海外の温泉に焦点を当ててみましょう。今回からしばらくはタイ北部の温泉を特集してまいります。タイ北部は意外にも温泉の宝庫なのであります。まず初回は、タイ北部の大都市であるチェンマイから約35キロほど東の郊外にあるサンカムペーン温泉(Sankampaeng Hot Springs)です。こちらは『地球の○き方』などのガイドブックでも紹介されているほど有名であり、いつも多くの観光客で賑わっているんだそうです。
私が訪れたのは2014年乾季の某日。乾季のチェンマイは日中こそ30℃を超えるものの乾燥しているので日陰に入るととても涼しく、朝晩は長袖が無いと寒いくらいに冷え込みます。また乾季ですから雨の心配がほとんどありません。それほど暑くなく、しかも雨が降らないとなれば、まさに打ってつけの温泉巡り日和が続くわけです。厳冬の日本から飛行機を乗り継いでチェンマイ空港に降り立ち、その晩に宿泊するホテルに荷物を預けてから、ホテルの前で暇そうにしていたトゥクトゥクを適当に捕まえてチャーターし、現地へと向かいました。 チャーターと言っても難しいことではなく、運チャンに行きたい所を告げて値段交渉をするだけ。なお、私のようにトゥクトゥクをチャーターしなくても、チェンマイ市街のトンラムヤイ市場に行き、川沿いの道を歩いていると、定期ルートを走行する黄色いソンテオ(ピックアップトラックを改造した乗り合いバス)が客待ちしているので、それに乗れば大丈夫です。


 
チェンマイからトゥクトゥクに揺られること40~50分で、サンカムペーン温泉のエントランスゲートに到着です。こちらは温泉を中心にした公園となっていて、界隈の観光名所にもなっているらしく、駐車場には自家用車やタクシーなどと一緒に観光バスが止まっており、観光客を目当てにした屋台もたくさん並んでいました。チャーターしたトゥクトゥクは駐車場の端っこに待機させておき、私はゲート右側の料金所へと向かいます。


 
カウンターで公園の入園料100バーツを支払います。タイではよくあることですが、タイ人と外国人では料金設定が異なっており、タイ人なら安く入園できるのに、私のような外国人はその何倍もする料金を支払わなければなりません。なお受付の右隣りにある売店のカウンターに並べられているのは、カゴに入った鶏卵です。何のためにタマゴなんて売っているのかは、記事を読んでゆくとわかるはず。


 
ゲート内の通路に沿っておみやげ屋さんが並んでいました。こんなところでTシャツや帽子を買う人なんてどのくらいいるのかわかりませんが、多少なりとも外国人観光客がやってきそうなところでは商売を始めようとする現地の人の逞しい商魂には感心させられます。


 
 
南国の公園だけあって花々が彩り鮮やかです。とりわけブーゲンビリアやセージが綺麗でした。たとえ中年の男一人旅であろうとも、綺麗な花に囲まれりゃ心が否応なく弾んじゃいますよ。こんなガーデンを抜けて温泉を目指します。


 
ガーデンゾーンを抜けると、木々の間をクネクネと流れる川に出くわすのですが、この川には温泉が流れており、川岸の木陰に腰掛けながら温泉の川に足を突っ込んで足湯を楽しむ方がたくさんいらっしゃいました。この後に私はタイ国内で何箇所もの温泉を巡ったのですが、その体験から考察するに、タイ人は足湯が大好きのようです。また周囲には売店もあって、飲み食いしながら皆で賑やかに足湯の時間が過ごせるのであります。


 

足湯の川を遡ってゆくと、公園の最奥部には熱湯が天高く噴き上がっている自噴泉が!!
これがサンカムペーン温泉であります。


 
 
噴泉の近くには源泉を引いているプールがあり、縁には引っ掛け金具が取り付けられていて、ここにカゴを掛けて温泉卵をつくることができるのです。先ほどの鶏卵はここで温泉卵を作るために売られていたんですね。なお配管からドバドバ吐出されている温泉に温度計を突っ込んでみたところ、78.1℃というかなりの高温であることが判明。道理で近づくだけで猛烈な熱気が伝わってくるはずだ。親切なことに、傍には茹でる時間を案内している看板が掲示されており、柔らかめなら3分、半熟なら5~6分、固茹でなら10~15分なんだそうです。


 
サンカムペーン温泉は足湯や温泉卵のみならず、全身浴だって楽しめるのであり、だからこそ私はわざわざこの地へやってきたのです。噴泉からフラワーガーデンの方へちょっと戻ると、入浴のチケットを売っている小屋がありますので、そこで個室風呂(60バーツ)の料金を支払い、チケットを受け取ります。



後述するように個室風呂は、文字通りの個室に単なるバスタブがあるだけで、景色も風情もあったもんじゃありませんから、もし開放的な環境で入浴したいという方は、水着持参の上で、温泉を利用した温水プールへどうぞ。上画像はチケット小屋の奥にある温水プールの外観です。



私は全裸で生の源泉に触れたいので、迷わず個室風呂を選択しました。チケットを手にして個室風呂棟へと向かいます。入口正面に受付カウンターがありますので、スタッフにチケットを差し出します。



個室風呂とはいえ、使える個室も男女別にわかれています。また個室にも掛け湯専用の部屋と、全身浴ができるバスタブのある部屋に分かれています。掛け湯専用のお風呂というのはタイならではであり、日本にはありませんよね。男性用の浴室ゾーンは受付の右側にあり、上画像の左側のドアは掛け湯専用の個室エリア、右側のドアは全身浴用のバスタブがある個室エリアの各入口です。


 
画像左(上)は受付の上部に掲示されている分析表です。タイ語と共に英語も併記されているので、私でも読み取ることが出来ました。大きな数字から拾っていきますと、トータルの溶存物質量は628で、ナトリウム(Sodium)は19.9、硫酸イオンは16、塩素イオンは4(いずれも単位はmg/L)なんだそうです。これらの数値はちょっと疑わしいような気もしますが、文系の私が下手に突っ込むと藪蛇になるので、迂闊な指摘はやめておきましょう。一方、画像右(下)は壁に貼られた入浴に関する案内のひとつでして、左側は「青いバルブは水で、赤いバルブは熱湯だよ」、右側は「温泉入浴は15~20分がベスト」と書かれています。


 
さてバスタブ個室ゾーンへと入りましょう。こんな感じで左右に個室が並んでいるんですね。部屋数は十数室といったところ。空いている個室を任意で選んで使えます。



私はこの個室を選択しました。どの個室も同じ造りでして、一人サイズの白いバスタブが一つに、シャワーがひとつ、そして室内には荷物を置くための小さな台や服を引っ掛けるフックがあるばかりで、至って簡素です。なおシャワーからはぬるい水が出てくるばかりで、お湯は出てきません。


 
バスタブのお湯は使うごとに全部捨ててしまいますので、利用の際にはまずコックを開けてお湯と水を出し、バスタブにお湯を張ります。こうした利用の手順は、台湾の温泉の個室風呂と同様ですね。


 
日本からわざわざ温度計とpH計を持参してきた私は、お湯が溜まるのを待つ間に、吐出されるお湯の温度やpHを計測してみたところ、温度は71.8℃、pHは9.0でした。溶存物質量が628mgでpH9.0ということは、日本の温泉法の規定で分類するならばアルカリ性単純温泉に該当しますね。本当ならばお湯だけをバスタブに張りたいところですが、こんな高温のお湯にそのまま浸かるわけにはいきませんので、たっぷり加水しました。

湯船にお湯が満たされたところで実際に入ってみますと、お湯は無色透明、ふんわりとしたタマゴ臭が湯面から放たれており、口に含むとタマゴ味がしっかりと感じられました。結構アルカリ性に傾いているお湯だけあって、大量加水にもかかわらず、湯船の中で肌を擦ったときのツルツルスベスベ浴感がとても気持ちよく、私好みのタマゴ臭&味と相俟って、本格的な温泉を楽しむことができました。同じアジアの温泉で表現するならば、台湾の安通温泉谷関温泉知本温泉などと同じ系統の泉質だろうと思います。
利用の度にお湯を張り替えるのですから、いわば完全掛け流しであり、イオウ感を有するツルスベのお湯は実に気持ちが良いのですが、といっても灼熱の南国で全身浴をすることは、体にとってはかなりの負担であり、せっかくの良泉に巡り会えたにもかかわらず、湯船に浸かって数分で逆上せかかったので、早々にお湯から出てしまいました。タイの方々が全身浴ではなく足湯を好む理由が何となくわかった気がします。なお使用後はバスタブの栓を抜いて空っぽにしておきます。

この公園へやってくる観光客のうち、地元タイ人は足湯を楽しみ、欧米人は水着姿でプールで泳ぐ一方、好んでバスタブのお湯に浸かろうとするのは専ら日本人のようでして、私がお風呂に浸かっていた時も、他の個室からはおじさんたちの日本語が飛び交っていました。チェンマイを訪れる日本人にとって、もはやこの温泉は定番観光地となっているのかもしれません。
尤も、すっかり観光地化されているサンカムペーン温泉は、温泉好きの人間にとってはイロハのイに該当する初心者向きの温泉なんだそうでして、現地に滞在している邦人の皆さんは、ここを避けて他の温泉を利用することが多いんだとか。となれば私もイロハのイ程度で満足するわけにはまいりません。より高みを目指して、次なる目的地へと向かったのでした。


チェンマイ市街、トンラムヤイ市場前の川沿いの道から黄色いソンテオに乗って約1時間
GPS:18.815054N, 99.227675E,


入園料100バーツ、個室風呂60バーツ

私の好み:★★


コメント (4)
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きりふり温泉 ほの香

2014年04月18日 | 栃木県
 
日光の市街地からさほど離れていないところで良い温泉は無いかと探していたところ、霧降高原の手前に掛け流しの温泉浴場があるという情報を入手したので、その情報が映し出されているスマホを片手に現地へ車を走らせました。霧降大橋から高原方面へ県道163号の坂道を登ってゆきますと、道路の左側に「ホテルカジュアルユーロ」(ホテルユーロシティの別館)という不自然に欧風なホテルが建っているのですが、お目当ての温泉はどうやらその敷地内にあるようです。宿泊するわけでもないのにそのホテルの敷地に入って瀟洒なホテル棟の前を通り過ぎますと、奥の方に「ゆ」という一文字が記された看板が立っていました。本当にこんなところに温泉浴場があったんですね。駐車場は更に奥にありますので、ここはひとまず「ゆ」の看板を通りすぎて駐車場に車を止めます。


 
「ゆ」の看板の傍ではホテルの付帯施設であるコテージが電飾をきらめかせていました。またコテージの手前には貯湯タンクと思しき施設があり、お湯をどこかへ運搬するローリーを積んだトラックが止まっていました。なおここのホテルは全室に温泉の露天風呂が設けられているんだとか。


 
今回入浴する「きりふり温泉 ほの香」もホテルの付帯施設のひとつなのですが、この浴場は宿泊の有無に関係なく、料金を支払えば誰でも利用することができるんですね。というか、実質的には外来客の利用をメインにしている感があります。施設自体はこぢんまりしており、受付などの無い無人施設でして、券売機で料金を支払い、発券されたチケットを券売機に括り付けられているプラスティックの箱に投入してから浴室へと入ります。券売機の上には2台の監視カメラが睨みを効かせていました。



ちなみに駐車場から見るとこんな感じ。仮設のようにも見えますが、この姿のまま何年も営業しているので、仮設ではなく本設の建物なのであります。


 
無人の浴場施設ですが、券売機の左側にはお座敷の休憩室があり、入浴客でしたら自由に利用できます。なおこの休憩室にはロッカーがありますので、貴重品はこちらへ預けましょう(脱衣室にロッカーはありません)。


 
脱衣室は民宿かペンションのお風呂のようなコンパクトな造りで、3~4人以上の同時利用だとちょっと窮屈かも。とはいえ棚や洗面台、そしてドライヤーなど必要な物はひと通り揃っていますし、トイレや扇風機なども備わっていますので、利用に際して不自由は全くありませんでした。また無人とはいえ定期的にスタッフのチェックが行われるのか、清掃もちゃんと行き届いていました。


 
浴室は至って実用的な造りで、奥に浴槽が一つ設けられており、手前の左右両側にはシャワー付き混合水栓が2基ずつ計4基取り付けられています。また壁には白いタイルが斜め格子に貼られていますが、側面2方向に大きな窓を設けたり、スポットライトを壁に当てて間接照明のようにすることにより、明るさと落ち着きを兼ね備えた大人な雰囲気を醸し出していました。


 

浴槽は3~4人サイズの長方形で、縁には黒い御影石が用いられており、槽内は石板タイル貼りです。隅っこの湯口からはお湯が絶え間なく注がれ、縁から床へオーバーフローしていました。湯加減は42~3℃ほどで、加温加水の有無は不明ですが(おそらく無いでしょう)、れっきとした放流式の湯使いです。なお槽内には上下に並んだ穴を埋めた跡があったのですが、これはジェット風呂を稼働させようとした名残なのでしょうか。現在の湯船にそのような装置はなく、ただ静かにお湯が掛け流されているばかりです。
このお風呂は一見すると何ということのない普通のものなのですが、深さといい、石板の感触の良さといい、縁に頭を載せて足を伸ばした時に体が浴槽へうまい具合に合う感じといい、私の体にジャストフィットする造りでして、お湯の柔らかさや優しさと相俟って、すっかり気に入ってしまいました。自分の体に合う湯船ってなかなか出会えないものですよね。


 
 
内湯浴槽の右手前の隅には三角形の小さな板が被せてあるのですが、これは露天へ出るための足場でして、この心細い足場からサッシを開けて屋外に出ると露天風呂となります。日本庭園風露天風呂のステレオタイプに忠実に従って拵えたような凡庸な趣きであり、竹垣を模した化成品のエクステリアで目隠しされているため景色を眺めることはできませんが、限られたスペース内に松や紅葉など基本的な植栽を施したり、石灯籠を据えたり枯山水のように砂利を敷き詰めたり、塀の向こうに連なる日光の山稜を借景にしたりと、庭園としてはなかなか本格的であり、しかも訪問時はちょうど黄昏時だったため、空が闇に包まれゆこうとする中、薄暮のボンヤリとした明かりに山稜の姿が映え、とても美しい情景を目にすることができました。


 
露天風呂はいわゆる岩風呂であり、2人入ればいっぱいになってしまいそうなコンパクトなものです。内湯同様にこちらも放流式の湯使いであり、石をくりぬいて竹筒を突っ込んだような湯口からお湯がトポトポと落とされ、縁から絶えず鉄平石の床へ流下しています。そして私が湯船に入るとザバーっと音を立てながら勢い良く溢れ出ていきました。外気に冷却されちゃうためか、湯加減は内湯よりぬるい40~41℃でしたが、ぬる湯が好きな私にとってはむしろ好都合であり、しばらくお客さんがやってこなかったのを幸いに、じっくり長湯を楽しませてもらいました。

お湯は無色澄明でほぼ無味無臭ですが、僅かに重曹味とアルカリ性泉的な微収斂があったように記憶しています。湯口付近を中心に湯中では細かな気泡が浮遊しており、入浴中の肌には弱いながらも泡付きが見られました。色や味・匂いにはほとんど特徴が無いのですが、入浴中は優しく柔らかなフィーリングが全身を包み、サラサラスベスベの浴感と抜群の鮮度感が実に心地よく、湯上り後も全身が程よく温まり且つ爽快感も得られました。知覚的特徴こそ無色透明無味無臭のお湯ながら、実際に入浴すれば単なる沸かし湯とは全く異なる本物の温泉であることが実感できるかと思います。ちょうどこの時の私は、前回まで連続で取り上げていた日光湯元温泉の硫黄のお湯にハシゴして浸かっていたので、この癖のないアルカリ性単純泉が、まるで上がり湯のような優しさと心地よさをもたらしてくれました。


アルカリ性単純温泉 45.1℃ pH8.8 400.01L/min(動力揚湯) 溶存物質0.207g/kg 成分総計0.208g/kg
Na+:45.1mg(88.52mval%), Ca++:4.4mg(9.93mval%),
Cl-:1.7mg(2.17mval%), HCO3-:91.3mg(67.78mval%), CO3--:10.1mg(15.27mval%), HS-:0.2mg, SO4--:8.5mg, OH-:0.1mg,
H2SiO3:42.2mg,

東武日光駅より徒歩16~17分(1.5km)
栃木県日光市所野1550-89  地図
0288-53-3838
ホームページ(ホテルユーロシティ・ホテルカジュアルユーロ)

10:00~22:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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