日光湯元温泉には本格的旅館や大規模ホテルの他、中小規模のペンションも数軒営業していますが、今回はそんなペンションの一つである「湯元ヒルサイドイン」にて日帰り入浴してまいりました。場所としては前々回取り上げた日帰り入浴専門施設「ゆの香」の斜め前に位置しており、湯の平湿原を散策するトレイルの入口も目の前から伸びています。
全体的なファサードといい玄関まわりの装飾(小旗や鹿の骨の飾りなど)といい、オーナーさんのセンスが全面に出ている欧州風の洒落た佇まいです。館内はカーペット敷きになっていたので、骨の髄まで日本人である私はついつい玄関で靴を脱がなきゃいけないのかと迷ってしまいましたが、浴室手前までは下足のままで入館OKなので、靴を履いたまま帳場へと進みます。玄関の扉を入って右手に帳場があり、そちらで料金を直接支払って貴重品を預けますと、宿のご主人が立て板に水の淀みない口上でお風呂に関して説明しながら、見晴らしの良い食堂を抜けて、浴室手前まで案内してくださいました。
食堂を過ぎた先には狭い下足場があり、そこで靴を脱ぎますと、いままでの欧風なインテリアから一転して、畳敷きの先に暖簾が下がる和風な空間となりました。ご想像の通りここから先は温泉ゾーンとなるわけですね。日光湯元の白濁湯には欧風イメージよりも日本的な内装が似合うということなのでしょうか。下足場と同じフロアの廊下をまっすぐ進んだ突き当たりには女湯の浴室がありますが、男湯は階段を下りた1フロア下ですので、私はこの階段を下りてゆくことに。
階段を下りきった先は脱衣室に直結していました。室内はとてもよく手入れが行き届いており、綺麗で清潔感が漲っています。
いわゆるペンションですので浴室は決して大きくありませんが、メンテナンスに抜かり無く、また外気温と大きな差があるにもかかわらず換気がきっちり行われているおかげで湯気篭りが全くなかったので、気持ち良い状態で利用することが出来ました。室内左側には洗い場が配置され、真湯が出てくるシャワー付き混合水栓が4基並んでいます。水栓は硫化による変色がほとんど見られませんでした。
洗い場に用意されているアメニティー。シャンプーとコンディショナーが別個になっているのは嬉しいですね。またその隣には男体山の軽石が置かれていました。これで角質をゴシゴシするのでしょうか。
先ほど下りてきた階段の真下に設けられている内湯の浴槽は、3人サイズといったところでしょうか、縁に厚い木材が用いられ、槽内はタイル貼りです。お湯は竹の筧から落とされており、直に触れないほど高温であるためか投入量は絞り気味でしたが、その甲斐あってか湯船は入りやすい43℃前後となっていました。湯船に張られた青白く濁るお湯が綺麗ですね。なお浴槽に加水するための水道蛇口が無いため、もし加水する場合は洗い場のシャワーを使って欲しい旨が、テプラで室内に貼られていました。
窓際に置かれている棒状の木工品は言わずもがな枕ですね。さすがに床(洗い場)でトドになれるほどのスペースは無いので、浴槽内に浸かりながら用いるものかと思われます。また浴槽の縁にはテプラで「湯船の温泉を洗い場へ流しますと温まります」と記されていますが、冬季は床の石板タイルが冷えきってしまうこともあるのでしょうから、その点をカバーすべく親切に説明してくれているのでしょうね。木の枕といいテプラの案内といい、細かな点ながらもお客さんに対する宿側の気配りが伝わってきます。
内湯も後述する露天風呂も完全掛け流しの湯使いとなっており、内湯に関しては約3時間でお湯が入れ替わるんだとか。なお浴槽縁には浅い切り欠けが彫られており、人が湯船に入るとその切り欠けから床へお湯が溢れ出るのですが、通常時は縁から溢れ出ず、槽内のオーバーフロー管を通って、屋外(露天風呂側)へ排出するようになっていました。日光湯元のように濃い温泉は、徒に洗い場へオーバーフローさせず、このようにオーバーフロー管で直接排水管へ流下させたり浴室外へ逃したりすることにより、浴室内に温泉成分が付着しにくくなって、綺麗に維持できるんですよね。
こちらは露天風呂です。いわゆる岩風呂であり、槽内はタイル貼りで、浴槽の真上には四阿が立てられています。こちらも浴槽のお湯をオーバーフロー管でちょっと離れたところへ逃していますが、露天の場合は溢れ出たお湯が冬季に凍っちゃってお客さんに予期せぬ事故を及ぼしかねませんから、これを避けるためにこのような処置を採用しているのかもしれませんね。
浴槽はコンパクトで2~3人サイズ。右半分は寝湯のような造りになっています。溶岩のような岩の湯口には綿状の湯の華がビッシリこびりついて真っ黄色に染まっており(画像では白く写っていますが、実物はかなり濃い黄色です)、お湯の中でも大小様々な大きさの湯の華が舞っていました。内湯同様に完全掛け流しですが、氷点下の外気の影響をモロに受けており、湯加減は体感で40~41℃とややぬるめでした。
お湯はエメラルドグリーンとカナリアイエローを混ぜたような鮮やかな色に強く濁っており、槽内のステップが見えて底が見えない程度の透明度です。底には大量の湯の華が沈殿しており、特に外気で冷やされる露天風呂は湯の華が多く、入浴しながら底に手を着くと、硫化鉄によって指先などが部分的に黒く染まりました。お湯を口にすると、タマゴ味+清涼感の有る苦味+石膏甘味+渋味が感じられ、遅れて唇の痺れや口腔内にこびりつく苦味やエグミなど、粘膜を刺激する諸々の現象が確認できました。匂いとしてはいわゆるタマゴ的なイオウ臭の他、クレゾールっぽい刺激臭や何かを焦がしたようなアブラ的な匂いも嗅ぎ取れました。
この露天風呂は崖下にあって周囲には高い塀も立ちはだかっているために、目の前に広がっているはずの湯の平湿原やその周囲の景色を眺めることはできませんが、雪はたっぷり積もっていましたので、思う存分雪見風呂を楽しませていただきました。女湯はこれより1フロア高い位置にありますから、露天風呂でもここよりは良い視界が広がっているのではないでしょうか。日光湯元温泉はイオウの白濁湯でありながら、若干酸性に傾いているもののほぼ中性ですから、長く入浴していても体への当たりが優しいんですよね。それでいて硫黄による血管拡張作用もあってしっかりと温まり、お肌もしっとりと潤いますから、湯上り後の心地良さも素晴らしいものがあります。
規模の小さいお風呂ですが、綺麗で使い勝手がよく、湯使いも良いので、とてもコンフォータブルなひと時を過ごすことができした。
奥日光開発(株)3・4・7森林管理署源泉混合泉
含硫黄-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉(硫化水素型) 74.1℃ pH6.5 溶存物質1.284g/kg 成分総計1.440g/kg
Na+:126.1mg, Ca++:191.5mg, Mg++:4.2mg, Mn++:3.1mg,
Cl-:77.8mg, HS-:10.9mg, SO4--:496.2mg, HCO3-:236.4mg, S2O3--:0.6mg,
H2SiO3:96.0mg, CO2:119.8mg, H2S:37.2mg,
完全放流式
日光駅(東武・JR)から東武バスの湯元温泉行で終点下車、徒歩2分程度
栃木県日光市湯元2536 地図
0288-62-2434
ホームページ
日帰り入浴9:00~18:00(昼頃に清掃タイムあり。また日帰り入浴を休む場合もあり)
800円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品は帳場預かり
私の好み:★★+0.5