温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

遠刈田温泉 トスネット元気荘 (そして、えぼしスキー場のすいせん祭り)

2014年04月05日 | 宮城県
 
宮城県・遠刈田温泉の温泉街中心部で軒を連ねているお宿や浴場には、7号泉という赤茶色に濁った源泉が引かれている場合が多く、当地で湯めぐりをしているとこの7号泉の壁にぶち当たるのですが、ちょっと離れると別の源泉を使っているお宿もありますので、今回は7号泉の呪縛から解放されるべく、蔵王山麓もすっかり雪化粧を施していた12月某日、温泉街の南を流れる松川を渡って、烏帽子岳の麓にある「トスネット元気荘」へと向かいました。国道457号の路肩などには、ガードマンの制服を着ているワンコのイラストの看板が立っており、そのワンコが指し示す方へ進んでいけば迷うこと無く辿り着けます。


 
トスネットとは仙台市に本社を置く警備会社でして、「トスネット元気荘」はその会社の保養施設なのですが、一般の外来客も日帰り入浴や食堂を利用することができるんですね。いかにも保養寮っぽい地味な建物の周りには施設名を表す看板や表札らしきものが見当たらなかったので、玄関の扉を開ける前にはちょっと不安になりましたが、館内に入ると受付カウンターの前には券売機が置かれていたので、ここが外来者に向けた商売をしている施設であることを確認でき、そして帳場から現れたおじさんの対応もとても温かかったので、ホッと胸を撫で下ろしました。


 
質素な外観とは裏腹に、館内の大きな窓からは陽光が降り注いでおり、木のファブリックも多用しているため、ぬくもりと明るさに満ち溢れていました。


 
明るいホールの右手から、ガラス窓に面している廊下を進んで浴場へと向かいます。窓に沿って長いベンチが置かれていますから、湯上がりにはここで呼吸を整えることもできますね。窓上には周辺の山野で撮影された景色や花々の写真が展示されているのですが、壁の張り紙によれば、夏になると敷地内でホタルが観賞できるんだそうです。


 
廊下の突き当たりに紅と紺の暖簾が掛かっていました。館内はどこも清掃が行き届いており、とても快適です。


 

床に茣蓙が敷かれた脱衣室には床暖房が設置されており、冬でも寒さで身を縮こまることなく、楽な状態で着替えることができました。壁に掛けられている扁額には「元気源泉」と記されていますが、これはここのお風呂で使われている自家源泉の名前なんですね。どんなお湯であるかは後述致します。また室内の張り紙には加水した上での掛け流しであることがアピールされていました。



高い天井と大きなガラス窓によって、実際の床面積を遥かに凌駕する開放感が得られる浴室は、清掃がよく行き届いており、冬なのに湯気の篭りも無く、実に快適です。室内にはアブラ臭に近い芳しい木材臭が漂っていました。この匂いはもちろん温泉から放たれているものですが、この点だけでも遠刈田の温泉街に配湯されている7号泉とはかなり毛色が違いますね。


 
洗い場には混合水栓が6基取り付けられており、うちシャワー付きは1基のみです。カランから吐出されるお湯は源泉です。


 
石板敷きの浴槽は5~6人サイズで、赤いバルブが上部から覗く石積みの湯口より、しっかりした量のお湯が湯船へと注がれています。この湯口には「火傷のおそれが有りますので、バルブにはさわらないで下さい」と書かれた札がさがっており、実際に湯口のお湯は熱くて直接触るのが憚られるほどでした。とはいえ源泉温度は63℃であり、それほどの熱さでも無かったので、けだし多少は加水されているのでしょう。人が湯船に入れば浴槽縁からオーバーフローしますが、常時は窓下に空いている穴より屋外の露天風呂へと流下しています。


 
湯船のお湯は薄い褐色を帯びた透明で、湯中ではおが屑のような細かくて茶色い湯の華が浮遊および沈殿しており、湯船のお湯を桶に掬ってみますと、上画像のように赤茶色の湯の華がたくさんキャッチすることができました。お湯からはアブラ臭に似た芳しい木材臭が漂い、その匂いは鳴子温泉郷の中鉢温泉や馬場温泉といった東鳴子エリアの湯にも似ているような匂いでして、口にすると清涼感のある重曹的なほろ苦みが感じられました。湯船に浸かると肌には重曹泉的なサラスベ浴感が伝わってきます。


 
露天風呂は烏帽子岳やそれに連なる稜線を望む岩風呂で、容量は6~7人といったところ、大きな手すりがあるので、スリップの心配なく湯船に入れます。周りは庭園状になっており、塀ではなく植栽で目隠しをしており、また周囲の高原の様子も借景にしているので、まずまずの開放感と爽快感が楽しめました。


 
画像左(上)に写っている噴き上げている投入口は、内湯からの流れ込みです。このように露天風呂は内湯から流下してくるお湯を受けているわけですが、これだけではお湯がかなりぬるくなってしまいますから、露天専用の源泉供給口から熱いお湯を注いで湯加減を調整しています。画像右(下)に写っている塩ビ管がその専用供給口です。



一方、岩の隙間に見える、垂直に立ち上がっている配管は排湯の吸い込み口です。露天風呂ではこの排水口の他、手前側のステップでもオーバーフローがあり、両方から排湯されていました。加水の有無はわかりませんが、露天も内湯同様に放流式の湯使いです。
内湯は熱めですが露天はぬるめでしたので、内湯でしっかり温まり、露天で粗熱を抜いて程良い温まり具合に調整するという湯浴み方法がよろしいかな、と個人的には思いました。温泉街の7号泉に飽きたら、芳しい香りを胸いっぱいに嗅げる「トスネット元気荘」の自家源泉でアクセントを加えるのも一興ではないでしょうか。綺麗で明るい館内と、芳しい掛け流しのお湯が、湯浴み客に名前通りに元気を与えてくれる、素敵なお風呂でした。


元気源泉
単純温泉 63.2℃ pH8.1 蒸発残留物722.1mg/kg 溶存物質876.7mg/kg
Na+:203.2mg(88.40mval%), Ca++:14.5mg(7.20mval%), Fe++:0.2mg,
Cl-:75.7mg(23.41mval%), SO4--:125.0mg(28.45mval%), HCO3-:242.2mg(43.44mval%), CO3--:12.6mg(4.60mval%),
H2SiO3:170.1mg, HBO2:17.9mg,
加水あり(源泉が高温のため)、加温循環消毒なし

宮城県刈田郡蔵王町遠刈田温泉字七日原367-3  地図
0224-34-1880
ホームページ

10:00~16:00
600円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5


★追記
「トスネット元気荘」や遠刈田温泉の近所にある「みやぎ蔵王えぼしスキー場」は、ゲレンデの雪が融けきった春爛漫の4月下旬から5月中旬にかけて、「みやぎ蔵王えぼしすいせん祭り」が開催され、ゲレンデ一面にはスイセンの花が咲き誇って、黄色い花の絨毯が斜面を覆い尽くします。その数は30種以上で50万株なんだとか! 今年(2014年)は4月25日~5月18日がすいせん祭りの開催期間です。
さすがにまだ開催前ですので今年の画像は掲載できませんが、2012年に私が行った際の画像がございますので、少々古いもので恐縮ですが、その時の様子を御覧ください。


 
 
ねっ。すごいでしょ。圧巻でしょ!


 
ゲレンデ一面をスイセンの黄色い花が埋め尽くすのです。歩行可能エリアの一番上からは、白石方面を眺望できますよ。

みやぎ蔵王えぼしスキー場ホームページ
「第25回 みやぎ蔵王えぼしすいせん祭り」
蔵王町観光協会の特集ページ
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コメント
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