温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

宮下温泉 ふるさと荘

2014年04月07日 | 福島県
 
前回取り上げました宮下温泉「栄光荘」から只見川を渡った対岸にあるお宿「ふるさと荘」にも、日帰り入浴するために立ち寄りました。


 
玄関の目の前を国道400号が横切っており、それに平行して只見川が流れています。赤いトラス橋を渡った対岸は、「栄光荘」や県立病院、そして三島町役場や会津宮下駅などがある宮下地区です。また川に沿って若干下流側へ進むと「桐の里倶楽部」という温泉入浴施設もあります。


 
以前は三島町による公営施設だったそうですが、現在では運営が「栄光荘」に委託されているんだそうでして、ファサードはいかにも昭和後期の公営施設らしい地味な趣きでしたが、館内は建物の古さを払拭すべく整然で落ち着いた雰囲気が創りだされており、対岸の本館をピカピカに磨き上げている「栄光荘」スピリッツが存分に発揮されていました。
入浴料金はフロントにて直接支払うのですが、三島町民とそれ以外では料金が異なるので、受付では「町外」である旨を告げてから支払います。なお町民ですと町外の半額近い料金で利用できるため、銭湯代わりに入浴利用する地元の常連さんも多いようです。


 
浴室入口には紅と紺の暖簾が掛かっていますが、その上の欄間には「自噴 天然の湯 湯温55度」と揮毫された扁額が掲示されていました。ほほぉ、自噴のお湯なんですね。どんなお湯か、楽しみです。


 
脱衣室もそこそこ綺麗で、ロッカーこそありませんが、棚に備え付けられているカゴは大きく、洗面台は2台設置されていて無料で使えるドライヤーもあり、扇風機や石油ファンヒーターなども用意されているので、使い勝手もまずまずです。


 
お風呂は男女別の内湯が1室ずつで、露天風呂はありません。浴室内には中心角90度の扇形の浴槽がひとつ据えられ、洗い場にはシャワー付き混合水栓が4基設置されています。シャワーから出るお湯はボイラーで沸かした真湯なのですが、こいつがちょっとした曲者で、お湯のハンドルを開けてから数分経たないと温かいお湯が出てきません。これは冬だけの現象なのか、あるいは偶々この日はボイラーが不調だったのか、その辺りの事情はよくわかりませんが、後から入ってきた地元の常連さんたちは、入室後、まずカランのお湯のハンドルを全開にして出しっぱなしにし、桶で掛け湯して一旦湯船に入って温まってから、再び洗い場へと上がってシャワーを浴びていました。この一連の流れは一人だけでなく、常連の皆さんが同じようにしてましたので、おそらくお湯の出が遅いのは、常連さんにとっては周知のことなのでしょう。


 
扇形の浴槽は一度に11~12人は入れそうな容量を有し、うっすら赤みを帯びた笹濁りのお湯が張られており、切り欠けからは結構な量のお湯が惜しげも無く捨てられていました。湯船は43~44℃くらいで、人によってはちょっと熱いと感じるかもしれませんが、加水無しの完全掛け流しでこの湯加減が維持されていましたから、私は一切加水せずこの温度のまま湯浴みさせていただきました。
また、温泉に含まれる石灰の付着によって全体的に赤茶色やアイボリー色に染まっており、浴槽の縁には細かな鱗状の模様が形成され、槽内に敷き詰められているエメラルドグリーンの小さなタイルは、元の色がわからないほど赤茶色やアイボリー色にコーティングされていました。


 
このお風呂で目を惹くのが、深紅に染まった壁状の源泉投入口です。かつては壁の上からお湯を流し、壁面にお湯を垂直に這わせて自然冷却させてから湯船に注いでいたらしく、壁の下部には滴り落ちてきた湯を一箇所に集めるための、逆ハの字形の小さな樋が取り付けられているのですが、現在では壁に這わせることなく、下部の穴から直接湯船に落としています。

こちらのお湯は対岸の宮下温泉とは異なる赤谷温泉と称する自噴源泉を使っており、お湯を口にすると、薄い塩味と金気味、そして弱い石膏味が感じられ、少々の炭酸味や重曹的な苦味も含まれていました。また湯面からは金気臭や芒硝の匂いが嗅ぎ取れました。このように知覚面では対岸の宮下温泉「栄光荘」のお湯と似ているものの、どちらかといえばややマイルドなフィーリングを有していたように思います。


 

いまではお湯が流れていませんが、以前お湯が側面を這って滴り落ちていた壁には、金気で赤く染まった石灰が分厚くこびりついており、その厚さは1.0~1.5cmもありました。この手のお湯は温度低下や空気接触などによって炭酸カルシウムによる石灰華が生成されやすいわけですが、壁の上から側面を滴らせるという方法は、お湯がじっくりと空気に触れながら冷めてゆくわけですから、まさに石灰華が生成されやすい状況であり、それゆえこんなに分厚くこびりついたのでしょう。またその表面には細かな鱗状の模様が形成されており、お湯がどのように落ちていったかを物語っているようでした。色合いといい、模様の細かさといい、これはほとんどアートですよ。その美しさにしばし見惚れてしまったのですが、よく言えば健啖家、有り体に言えば無芸大食である私は、色合いやドレープ感からついつい洋菓子を連想してしまい、表面に花を近づければ甘く香ばしい匂いが漂ってくるのではないか、と訳の分からぬ妄想に取り憑かれて、本当に匂いを掻いだり舐めてみたくなったりしたのですが、後から次々と浴場の常連さんがやってきたので、そうした人たちの目線のお陰で自分の暴走を食い止めることが出来ました。

私のようなおかしな人はともかく、自噴する温泉を完全掛け流しで利用でき、お風呂としての備品類もそれなりに揃っていますから、一般の方にとっても利用する価値はあるかと思います。見た目ばかりでなく、お湯のクオリティーだって良好であり、湯上がりは体の芯からジンジン温まって、いつまでもポカポカが持続し、それでいて肌はサラスベの爽快な状態になりました。


赤谷温泉
ナトリウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩温泉 54.8℃ pH7.2 64.2L/min(掘削自噴) 溶存物質2833mg/kg 成分総計2886mg/kg
Na+:731.2mg(79.57mval%), NH4+:0.4mg, Mg++:15.4mg, Ca++:125.1mg(15.61mval%), Fe++:0.4mg,
Cl-:573.4mg(39.99mval%), Br-:1.1mg, I-:0.2mg, SO4--:648.5mg(33.38mval%), HCO3-:652.2mg(26.43mval%),
H2SiO3:46.5mg, HBO2:13.1mg, CO2:53.3mg,

JR只見線・会津宮下駅より徒歩11~12分(850m)
福島県大沼郡三島町名入上赤谷2437  地図
0241-52-2049

※2021年7月より飯坂温泉の「伊勢屋」により営業が再開されました。
営業時間や料金などは新設された公式サイトでご確認ください。

シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★

コメント (2)
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