岩波書店発行、中尾佐助・著『栽培植物と農耕の起源』岩波新書(青版)583 1966年1月25日 第1刷発行、2015年8月25日 第61刷発行(定価:740円+税)を読みました。「あとがき」の日付が昭和41年1月となっているので、その頃に書かれたものと思われるので、最新の情報とは言えないが、いろいろと得るものがありました。
「栽培植物とは何か」:「われわれが普通に見るムギやイネは、人間の手により作り出されたもので、野生時代のものと全く異なった存在であることを知る必要がある。その源を訪ねることすら容易でなくなった現在の栽培植物は、我々の祖先の手により、何千年間もかかって、改良発展させられてきた汗の結晶である。人間の労働と期待に応えて、ムギとイネは人間に食糧を供給しながら、自分自身をも発展させてきたものだった。」と述べ、具体的に野生植物と、栽培化された現在の品種との違いを解明しようとしています。
「根栽農耕文化」「照葉樹林文化」「サバンナ農耕文化」:
バナナから始まった農業、ヤムイモというもの、タローイモ、サトウキビ、熱帯のめぐみ、4作物の組合せ、クズとワラビのふしぎ、マムシグサを食べる、水晒し技術の発達、雑穀を受けとる、照葉樹林文化の遺産、照葉樹林の茶と酒とシソ、雑穀というもの、アフリカの野生雑穀、雑穀農業の発生地、マメ類の利用、果菜類というもの、油料作物の出現、サバンナ農耕文化の作物群、サバンナ農耕文化の基本複合の小項目を立てて論述しています。
イネのはじまり:イネは湿地の雑穀、栽培イネの開発、栽培イネの発達、イネ作農業のインドにおける展開、オカボとハトムギ、山棲みとスワンプ・フォレスト、コメとコムギの小項目を立てて論述しています。
地中海農耕文化、新大陸の農耕文化:
地中海一年生植物気候、野草・雑草・作物のちがい、コムギの起源、オームギの中の落第生、二次作物の出現、農牧兼業の成立、西アジアの農業革命、エジプト王朝期の農業、地中海農耕文化の先後問題、地中海農耕文化のアジアへの伝播、コムギとオームギ、第二次農業革命、応用問題としての新大陸、三つの根栽農耕文化、アンデス高地の根栽農耕文化、新大陸の種子農業、すぐれた新大陸の栽培植物の小項目を立てて論述しています。