兵庫県姫路市の手柄山に咲く、花びらの数が多いカスミザクラが昨年5月、新品種「手柄ザクラ」に認定された。地域の名が付いた花をまちおこしに生かそうと、手柄地区連合自治会が認定前から兵庫県立大名誉教授でNPO法人「はりま里山研究所」理事長の熊谷哲さん(71)にPRを依頼。認定後初めての開花を迎えた4月下旬、手柄ザクラをテーマにした歌と絵本が誕生した。
■軟らかな言葉と色の物語
手柄ザクラの絵本「あげはくんとしらさぎさん とくべつなさくら」は熊谷さんが監修し、播磨の絵本愛好家約20人で構成する「みんなでつくる絵本の会」(みんつ)が文章を練った。挿絵は姫路市出身のイラストレーター、やなみさんが担当した。
登場するのは市蝶(ちょう)ジャコウアゲハと市鳥シラサギ。地元の子どもたちにとってなじみ深いテーマを軟らかな言葉と色で表現した。満開の桜の下で、種類の違う生き物が心を通わせる温かな作品に仕上がっている。
同市二階町の出版社「金木犀(きんもくせい)舎」から刊行。社長でみんつメンバーの浦谷さおりさんらが、ストーリーをはじめ、蜜をすする音、キャラクターの話し言葉の語尾など細かな部分まで相談して作った。
浦谷さんは「身近なテーマの絵本が書店に並んでいたら、子どもたちはきっと感動する。絵本との距離もぐっと縮まるはず」と期待している。
B5変型判32ページ。1650円。書店やインターネットで販売中。購入者のうち希望者には英語の読み聞かせ用の音声を提供する。金木犀舎TEL079・229・3457(森下陽介)
■花に重ね門出祝う歌詞に
手柄ザクラの歌を作ったのは、姫路市のシンガー・ソングライター福永悠加さん(39)。熊谷さんがステージを見て依頼した。
福永さんは姫路で生まれ育ち、大阪音大に入学したころから曲作りを始めた。ポップスを手掛け、イベントやライブハウスで発表。アルバムも発売している。
完成した「手柄ザクラ」は6分弱のバラードで、「幾重にも重なり揺れる花びら」というフレーズが印象的。遅咲きの手柄ザクラが咲く季節は卒業ではなく、新生活を頑張っている時期に重なることから、スタートを祝う歌詞にした。
また、絵本「あげはくんとしらさぎさん-」の内容とつなげ、多様性を認める大切さや、出会い、友情の尊さも歌い上げる。
福永さんは「合唱や吹奏楽のイメージで作った。学校でも歌ってもらえたらうれしい」と話している。iTunesなどで配信中。CD(500円)もある。(上杉順子)
■21日、アクリエひめじで披露
手柄ザクラの歌と絵本は21日、アクリエひめじ(同市神屋町)である「アクリエひめじ 里山プレーパーク」で披露される。「全国花のまちづくり姫路大会」(21、22日)の連携行事で、午前10時~午後4時。福永さんのライブや絵本の読み聞かせがある。はりま里山研究所TEL080・6183・4189
【手柄ザクラ】花びらが普通のカスミザクラは5枚だが、10枚前後あり、二重に重なって咲く。1996年に植物学者の故室井綽(ひろし)・旧姫路学院女子短期大名誉教授が発見、「フタエカスミザクラ」と呼んだ。花弁先端の切り込みが少なく、開花が4月下旬と遅いなどの特徴もある。原木は市立手柄山温室植物園の登り口付近にある。発見翌年に伐採されたと考えられていたが、2015年に同植物園の職員が現存に気付いた。市の保存樹に指定され、21年5月13日に「日本花の会」に新しい園芸品種として認められた。
新品種「手柄ザクラ」テーマの絵本と歌誕生 認定後初の開花を迎え完成 姫路
MSN
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