© KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO. 「かっぱを釣るこつは辛抱することですよ」と釣り糸を垂らす運萬さん=遠野市土淵の河童淵
民俗学者柳田国男「遠野物語」の舞台で知られ、不思議な民話が息づく岩手県遠野市。かっぱの目撃談が残る「河童(かっぱ)淵」があちこちに存在し、姿を一目見ようと大勢の人々が訪れる。なぜ、この地域でかっぱの伝説が語り継がれているのか-。奇談に秘められた思いを探りに、現地を歩いた。(北上支局・江川史織)
「皆さんはかっぱを見たことがないんだって? 今日は初心者コースだな」。遠野市土淵町の観光施設「伝承園」と河童淵を巡るツアー。麦わら帽子に長靴姿で釣りざおを担いだ「2代目カッパおじさん」こと運萬(うんまん)治男さん(73)が、参加者を案内した。
頭と足で見分け
園を出ると早速、体長約2メートルの「日本一の木彫りかっぱ」のお出ましだ。「かっぱには男女の違いが二つある。あ、お父さん、今、変なこと考えたでしょう」。ユーモラスな語り口に、思わず参加者が笑う。
男は短髪であぐらをかいているのに対し、女は長髪で膝を立てているのが特徴だという。見分けるポイントは頭と足にあり、運萬さんは人間の立場に例えて教訓を語った。「頂点に立つ人は底辺の人を忘れてはいけない」
あぜ道を歩き、草木がうっそうと茂る河童淵に到着した。澄んだ水がゆったりと流れ、ひんやりとした神秘的な空気が漂う。今にもかっぱが水音を立てて現れそうだ。
河童淵には、足を冷やしていた馬を川に引き込もうと、いたずらを働いたかっぱの言い伝えがある。「昔は『かっぱにさらわれるから川に近づくな』と言った。子どもたちに水の怖さを教えている」
五体満足を願う
かっぱの起源は、地域を襲った貧困の歴史にあるという。かつて冷害による凶作や飢饉(ききん)に見舞われ、ひどいときは人口の4分の1が失われた遠野地方。食糧難のため、「口減らし」として犠牲になったのが障害のある子どもたちだ。
「かっぱの子」とみなされ、五体満足で生まれ変わることを願い、かっぱの神様に返された。かっぱは捨てられた子どもの生き残りと伝わり、三つ指は不自由な体を象徴するという。
「人は何よりも命が大事。命を守るのは食べ物とお天道様と水、そして年寄りの知恵だ」と運萬さん。「困窮した時代があってこそ、今の遠野がある。かっぱは先人の苦難と祈りを伝えてくれている」
かっぱに込められた悲劇と教訓。ツアーの最後、運萬さんはこう締めくくった。「読み書きができない貧しい人々が、次世代は良い暮らしができるようにと口承していったのが民話。今度は皆さんが3代目カッパおじさんになってください」
© KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO. 願をかけると母乳の出が良くなるとされる「乳神様」のかっぱ=遠野市土淵の河童淵
© KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO. 交通安全を願い樹齢380年のナラの木で作られた「日本一の木彫りかっぱ」=遠野市土淵の伝承園
© KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO. かっぱ釣りを楽しむ子どもたち=遠野市土淵町の河童淵
かっぱ伝説語り継がれる岩手・遠野 奇談に秘められた教訓と悲劇
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