経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

今週のポイント

2019-11-25 08:05:44 | 株価
◇ “香港”に怯える株式市場 = ダウ平均は先週129ドルの値下がり。強気と弱気が交錯するなかで、5週間ぶりに反落した。売り材料になったのは、香港。と言っても、デモで損害を被った香港経済を心配したわけではない。アメリカ議会が、香港の民主主義を支援する「香港人権法案」を可決。中国が猛反発したことから、米中経済協議が不調に終わることを警戒した。

日経平均は190円の値下がり。2週間連続の下げとなった。材料不足のなかで、高値警戒の売り物と出遅れ株を物色する買い物が交錯した。市場では年末ラリーに期待する声も強い半面、天井も近いという予想も増えている。政府が作成中の補正予算と来年度予算の規模についての関心が高まるに違いない。

アメリカ議会が可決した「香港人権法案」は、トランプ大統領が署名すると成立する。したがって今週はトランプ大統領が署名すると、株価には大きな下げ圧力が加わるだろう。しかし署名しない公算もあり、その場合は米中交渉の新たな進展に焦点が向けられる。また12月15日に迫った中国に対する追加の関税引き上げをどうするのか。市場はまたまたトランプ大統領に揺さぶられそうだ。

今週は26日に、10月の企業向けサービス価格。28日に、10月の商業動態統計。29日に、10月の労働力調査、鉱工業生産、住宅着工戸数。アメリカでは26日に、9月のFHFA住宅価格、10月の新築住宅販売、11月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。27日に、7-9月期のGDP改定値、10月の中古住宅販売。また中国が30日に、製造業と非製造業のPMIを発表する。

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

異常な 輸出の八方塞がり : 10月

2019-11-23 07:35:46 | 貿易
◇ 製造業の傷は予想以上に深い = 財務省が20日発表した10月の貿易統計によると、輸出は6兆5800億円で前年比9.2%の減少。輸入は6兆5600億円で14.3%の減少だった。この結果、貿易収支は173億円の黒字となっている。輸出額は11か月連続の減少で、減少率は3年ぶりの大きさだった。新聞各紙は「4か月ぶりに黒字転換」などと報じているが、内容を精査すると輸出を巡る状況はきわめて深刻なことが判る。

というのも輸出先をみると、ほぼすべての地域に対する輸出額が減少したこと。まずアジア向けの輸出は3兆5000億円で、前年比11.2%の減少。このうち中国向けは10.3%、韓国向けは23.1%の減少だった。このほか台湾を除いて、アジア各国向けの輸出は軒並み減少している。またアメリカ向けは11.4%、中南米向けは5.4%、さらにEU向けも6.3%減少した。

米中経済戦争の影響で、中国経済は減速中。また日韓関係は最悪の状態に陥っている。したがって中国向けと韓国向けの輸出が減退するのは、当然かもしれない。しかしアメリカや東南アジア諸国、あるいはEU向けの輸出までが一斉に減少したのは、一種の異常事態と言えるのではないか。そこには世界同時不況の影も見えてくる。

ことし4-9月期、上場企業のうち製造業の純利益は31%も減少した。業界では10-3月期にはやや改善すると期待しているが、輸出がこんな状況だと改善は難しい。製造業の傷は、いま想定されている程度より深くなるのかもしれない。製造業が長期にわたって低迷すれば、やがて非製造業にも影が忍び寄る。今後の輸出動向には、細心の注意を払う必要がありそうだ。

       ≪22日の日経平均 = 上げ +74.30円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】   

秘かに 量的金融緩和を終了 : 日銀 (下)

2019-11-22 08:06:58 | 日銀
◇ すべてはアベノミックスのために? = 日銀が市場から買い入れる国債の量を縮小すると、金利は上がりやすくなる。すると為替市場では、円が買われる。日銀としてはそれが怖いから、大きな声で国債買い入れの減額を吹聴はできない。幸いなことに、最近は外国人投資家が日本国債の購入を増やしている。それを頼みに、日銀はこっそりと買い入れ額を減らしているのが現状だ。

ETF(上場投資信託)についてみると、日銀は11月19日まで27日間にわたって完全に購入を停止した。株価が上昇基調にあるので、購入を止めたのかもしれない。しかし午前中に株価が大きく下げても買い出動しなかったのは、やや奇異にみえる。ETF全体の7割を保有し、株式市場への副作用が目立ち始めたから止めたのかもしれない。

日銀の意図するところは、別にあるような気もする。世界経済は、いま明らかに下り坂。日本経済も消費増税の影響で、10-12月期はマイナス成長を避けられそうにない。オリンピック需要の欠落もあるので、安倍首相は新たな景気対策の作成を、関係各省庁に指示したところだ。災害復旧の補正予算を含めると、財政支出の拡大規模は10兆円を下らないだろう。

そこに金融緩和が加われば、第2次アベノミックスの形が構築できる。日銀はこれに備えて、国債やETFの買い入れを減額しているのではないか。たとえば80兆円を予定していた国債の購入を40兆円に減らしておけば、その分を来年に持ち越すことができる。ETFも4兆円に縮小しておけば、2兆円を繰り越すことが出来るわけだ。そうして第2次アベノミックスで再び景気の浮揚を図るのはいいが、柳の下に2匹目のどじょうがいるかどうか。

       ≪21日の日経平均 = 下げ -109.99円≫

       ≪22日の日経平均は? 予想 =下げ≫

秘かに 量的金融緩和を終了 : 日銀 (上)

2019-11-21 08:02:37 | 日銀
◇ 国債とETFの買い入れを激減 = 日銀の発表によると、11月10日時点での国債保有額は486兆2000億円、ETF(上場投資信託)の保有額は27兆9200億円だった。これを10月10日時点の保有額と比べてみると、なんと国債は3兆9000億円、ETFは4300億円しか増えていない。要するにこの1か月間、日銀は市場からの国債とETFの買取りを大幅に減らしていた。量的金融緩和政策を秘かに終了していたことになる。

量的金融緩和というのは、中央銀行が市場から国債や株式などを買い入れる政策。買い入れ代金がそっくり市場に放出され、それだけ金融が緩和される。以前から存在した政策だが、13年4月に黒田総裁が買い入れ量を劇的に増やし“異次元緩和”と称された。現在は国債については年80兆円、ETFについては年6兆円を買い入れ目標としている。

昨年末時点で、日本の国債発行残高は1111兆円にのぼった。この時点での日銀の保有額は、この発行残高の43%に達している。このため市場で流通する国債が品薄となり、価格も高値に張り付いたまま。金利はゼロかマイナスとなって、金融機関は国債の売買では利ザヤが稼げない。政府の財政規律も緩みっぱなしだ。

一方、国内ETFの純資産総額は9月末で約40兆円。日銀はその約7割を保有している。東証1部上場企業の時価総額は約600兆円だから、日銀はETFという形でその約5%を保有していることになる。しかも売ることがない大株主だから、市場の自由な価格形成に大きな障害となっていることは明らかだ。日銀自身も将来の値下がりに備えて、準備金を積み立てなければならなくなっている。

                             (続きは明日)

       ≪20日の日経平均 = 下げ -144.08円≫

       ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

景気低迷で 税収も不足

2019-11-20 07:53:59 | 税金
◇ 赤字国債の増発は必至 = 財務省の集計によると、4-9月期の国税収入は16兆7000億円だった。この金額は、前年の実績を4.6%下回っている。内訳をみると、所得税が6.3%、法人税が9.1%、消費税が3.8%の減少。いずれも景気の低迷を反映したもので、特に法人税収が1割近くも減少したのは企業業績が悪化した結果である。貿易の縮小で、関税収入も8.1%減った。

ふつう上半期の税収は、年度全体の約3割に過ぎない。したがって勝負はこれからということになるが、下半期に景気が急上昇する見込みは全くない。消費税の引き上げは寄与するが、軽減税率を実施したこともあって10-3月期の増加分は1兆3000億円にとどまるものと試算されている。法人税や所得税は、さらに減少幅が大きくなる可能性が強い。

19年度の当初予算では、一般会計の税収を62兆5000億円と見積もっている。しかし、この調子では2兆円に近い税収不足が発生しそうだ。場合によっては、18年度の実績60兆4000億円を割り込む事態になるかもしれない。その一方で、政府はいま台風などによる災害復旧と将来の防災に向けたインフラ強化の予算を組もうとしている。その規模は、おそらく10兆円前後に達するだろう。

すると必然的に財源が足りなくなる。このところ発行額を減らし続けてきた赤字国債だが、来年度は増発が避けられそうにない。その赤字国債の一部を19年度の補正予算に組み込んでしまおうという構想もあるようだが、これは全く蛇道と言うべきだろう。堂々と20年度の本予算に計上してもらいたい。また、その前に政府はいぜんとして固執している「景気は緩やかに回復中」という公式見解を引っ込めるべきだろう。

       ≪19日の日経平均 = 下げ -124.11円≫

       ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 

Zenback

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