ハコベ
(ウェブ画像)より
薄暗がりからぼーっと浮かび上がる
清楚な姿のあなたは誰?
春を待たずに起きだして
しあわせを運ぶメッセンジャーですか
それとも花の王冠をしずしずと運ぶ
王室づきの侍女でしょうか
もう広場には多くの人が集まっています
戴冠式を待ちのぞむ素朴な民たちでしょうか
朝 . . . 本文を読む
スズランスイセン
(ウェブ画像)より
ある日きみから一通の手紙をもらった
東京の下町から近県に疎開して15年経っていた
ぼくの住所をどのように探り当てたのか
戦火を逃れて互いに町を離れていたのに
手紙を手にして最初に感じたのは
なつかしさというより戸惑いだった
だってぼくは一緒に遊んだはずのきみを
あまりはっきりとは思い出せないんだ
  . . . 本文を読む
カタバミ
〈ウェブ画像〉より
六月は家庭に何かが起こる月
エミちゃんは父さんに子犬を捨てられた
マンションのクローゼットに隠しておいたのに
父さんの出勤前に見つかってしまった
母さんには内緒にするように頼んでおいた
ちょっとの間だけよと見逃してもらったが
シロがクンクン鳴いたので
父さんが気づいてしまったのだ
ここでは犬も猫も飼 . . . 本文を読む
ヒトリシズカ
(ウェブ画像)より
陽のあるうちに壺阪山の宿に入ると
川を見下ろす座敷に煎茶と葛菓子が待っていた
せせらぎの音を聴きながら一服していると
八十歳目前で逝ったSさんとの思い出が甦ってきた
Sさんは小さな出版社の社長だった
ぼくがその零細企業の社員第一号だった
一番の思い出は木更津まで歌集の納品に行って
帰り道でミゼットのライトが点か . . . 本文を読む
〇 新庄に 「お前は悔しいくらい可愛いな」〈故野村監督のことば〉
〇 野球のセオリー とらわれない剛志を大抜擢〈日ハムの首脳陣やったね〉
〇 捨てる神〈トライアウトでどの球団もノー〉あれば 拾う神あり〈まさかの日ハム監督〉
〇 野村監督さん 広い天から 僕の采配・選手指導を見ていてください〈新庄剛志〉
〇 大谷は 大リーグ選手にまで愛されて〈選手間投票による年間最優秀選手に選ばれる〉
〇 . . . 本文を読む
ああ 秋が恋しい
秋はどこへ行ったの?
えっ どうしたの
秋なんて 目の前にあるじゃないか
どこに?
見えないよ
そうか 君は
秋を特別なものに思っているんだ
そりゃそうさ
高い空 澄み切った空気
心地よい風 揺らぐ野の花
晴れ晴れとした気分
う~ん たしかにな
あるいは君の . . . 本文を読む
海が咲いた 空が咲いた
国営ひたち海浜公園のはるかな地平に
幸せの国が浮かんでいる
空が咲いた 海が咲いた
なんというブルーだ
吸い込まれるアクアの青だ
海が咲いた 空が咲いた
世界の花々がいっせいに息を呑む
それほど特別の青の賜物だ
海も空も咲かない公園は
どんよりと心が萎える
こんな気持ちを人はなぜブルーというのだろう
& . . . 本文を読む
何かに似てる 誰かに似てる
そんなことを思ったことはないですか
トレンド女優に似てる イケメン男優に似てる
鏡の中の自分にうっとりした時期もあったでしょう
誰に似ているか 何に似ているか
音声や匂いや味が何に似ているのかって・・・・
そうなんだよなあ
ものごとを認識するしょっぱなはそれなんだ
アンスリウム・アンドレ . . . 本文を読む
あっ ひこうきだのろのろと動いているしっぽをピンと立てて誘導路のはしっこまでいく赤いよこじまに 青地に白い星をつけた尾翼ぐるっと向きを変えていきおいをつけはじめる機首が上を向くともう 滑走路とはバイバイだ自信満々にアメリカ飛んだふとっちょがビルを飛び越えたあっ こんどは赤い鶴だUターンして滑走路の端っこへ助走をつけて ぐんぐん機首を上げるあさひがJALの翼を持ちあげた5分間の滑走路凝縮された時間の . . . 本文を読む
野村監督のことを思い出すとことばの操縦士という気がする名将と言われる野球人は少なくないがノムさんほど言葉をじんわり操った例はない試合が終わるとベンチ前には記者の列勝てば勝った 負ければ負けたでノムさんのボヤキはそのまま見出しになる記者たちの目の輝きが 期待の高さことばの魔術は「野村再生工場」でも実力を出し切れていない選手を見つけるとたとえ他球団の選手でも声をかけ放出を待って蘇らせる素質を見抜く確か . . . 本文を読む
内海桂子師匠が亡くなってふと思い出したことがある先輩が作った桂子師匠の本が本棚のどこかにあるはずだあった 『人生は七転び八起き』三味線片手の桂子師匠の表紙絵が目印だ何十年も前の本だが今でも売れてますよ師匠のもとへ通い詰めた執念の作が・・・・先輩は あの頃は日の出の勢い手がけた企画がすんなり通る社内でも抜きん出た敏腕編集者師匠の「言葉で絵を描きなさい 」を実践したひとりでいるのが寂しくて自分宛に年賀 . . . 本文を読む
能勢という男がいた小づくりだがきりっとした顔立ちをしていた映画会社の大部屋に所属し声が掛からないときは寄せ集め劇団を作って活動していた団員は皆アルバイトで食をつないだある男はサンドイッチマンある人は看板描きとして能勢という男が座長であったがなかなか公演にこぎつけられず公民館の広間で稽古を重ねた能勢という男と知り合ったのは印刷会社の応接間でだった数十枚の原稿を渡されたのがきっかけだタイトルは『卒塔婆 . . . 本文を読む
ベッドの底から浮上した時ぼくの脳内ではまだスティービー・ワンダーが歌うI Just Called To Say I Love Youのリフレインが鳴りひびいていたなんという甘美な曲だろう繰り返されるねっとりした歌声が10時間に及ぶ大手術のあとの麻酔に引きずり込まれた奈落からぼくを引き上げてくれたのだ長い間ポトポトと音がしていたがあれはなんだったのだろうICUの光量の乏しい病室を包むのはおまじないの . . . 本文を読む
ぐずぐずしているうちに師走も半ば年賀印刷のソフトはまだ使えるのかなはて 来年の干支は何だっけそうだ 丑だ 丑だ 丑さんだああ 丑さんが懐かしいトンビが乱舞する湘南の海が懐かしいよ若いころの友達は 記憶の海に溺れてしまったが壮年の友は まだプカプカと海面に漂っているほら 手を出すから掴まってよジャズの世界に一緒に行こう<六本木ジャズ物語>は今でも健在だあれは丑さんの最高傑作だった戦後スウィング50年 . . . 本文を読む
颯爽と歩く腰を先に出してカツカツと通りを横切る犬が散歩する街路樹の根元でよそ見しながら片足をあげる顎を先に出して年寄りが病院に入るマットにつまずいてムッとする子どもが走る走っちゃダメと言っても三歩目には走り出す歩くのはむずかしいペンギンはヨチヨチ歩き競歩選手はくねくね歩く幸運は歩いて来るのかな不幸はいきなり飛んでくる神様はたぶん空に浮いて見てるんだ . . . 本文を読む