馬酔木
(城跡ほっつき歩記)より
おぼろ月夜の晩だから
碁でもやろうと誘われて
馬の背なかでゆうらゆら
ほろ酔い気分でゆうらゆら
この文明の世の中で
何を好んで馬の背に・・・・
モータリゼーション拒絶して
ゆらゆら行くのがわしの主義
昼は畑を耕して
夜は主人のお供する
わしの主義だと駆り出され
月に向かってゆうらゆら
飼葉の桶を空にして
まだ食うのかと呆れられ
仕方がないので道すがら
垣根の馬酔木を口にする
とたんに眠気がやってきて
歩きながらもゆうらゆら
背中の鞍ではご主人が
酒瓶かかえてゆうらゆら
主従ともども世の中を
ぎすぎす過ごす愚かさに
気づいた上での酔狂と
深読みするのは勝手だが・・・・
こんなことでは今晩の
碁の勝敗も知れたもの
中押し投了が妥当だが
碁笥の黒石あくまでも
作った結果は盤面の
白の陣地は尾張ほど
くらべて黒の持ち分は
猫の額か小作地か
アハハと笑って言い訳は
小なりといえども毅然たり
春風もよし月もよし
友よし酒よし気分良し
そろそろお開きにしましょうか
明日はどうやら雨模様
早く戻って人馬とも
ゆっくり休んでまた今度
馳走になったと礼を言い
やおらまたがる痩せ馬は
半眼閉じて夢路へと
たどる途中で引き戻す
ゆらゆら戻る家路へは
月と主人と止まった時間
背に乗せあくびが立て続け
こんな場面が以前にも
馬酔木の花の芳香が
馬房近しを合図する
夜目にも白い誘惑に
もう付き合える気力なし
春宵一刻値千金
花に清香有り月に陰有り
わしは誰より幸せ者と
つぶやく主人とゆうらゆら
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