どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

むかしの詩集とフォト日記(9) 「のぞきからくり考」

2010-12-12 00:13:19 | ポエム

       大道芸



       「のぞきからくり考」



  さあさあ皆さん見てらっしゃい

  オランダ渡来ののぞきからくりだよ

  大人も子供も一度見たら絶対に忘れられない

  だーれも行ったことのない世界が

  たったの三文で見られるんだ

  さあさあ人間迷いは禁物

  迷っていたら成仏できないとお釈迦さまも言っている

  善男善女に見せるため

  遠い国からはるばる運んできたからくりだ

  鬼が出るか蛇が出るか

  いやいやありがたーい蓮華の国が見えるかもしれないよ

  おのれの眼で覗いてみるまでは誰にもわからない

  不思議な不思議なからくりだ

  申し受けます三文は

  未知の国へのご案内料

  まずは試してご覧じろ

  人間だれしもおのれの行く末は知りたいもの

  来世が見たい方には来世を

  現世が知りたければ現世も思いのままだ

  さあさあ早くしないとせっかくの奇縁を失うよ

  月日は百代の過客にして行き交う年も旅人とか

  この場所この時刻を逃しては

  二度と会うこと適いませぬぞ

  三文を惜しまぬ善男善女に限り

  浮世の節穴から不思議な世界をご覧にいれましょう

  さあさあそれではよろしいかな

  覗き穴によーく眼を当てて

  無念無想で心を凝らしますのじゃ

  どうです何か見えてきましたかな

  なになに何も見えぬとおっしゃるか

  それはあなたが盲目の証拠

  わたしを罵るなどお門違いと申すもの

  そちらのお方はいかがかな

  見えるには見えたが何にもないのが見えたとな

  それがいずれの姿かは

  かくいうわたしにもわかりませぬ

  来世を見ようとしたならば来世

  現世を見ようとしたのなら現世と思し召しあれ

  わずか三文にてそれを見られたご縁こそ奇なり

  これこれ皆さん騒ぎは無用

  以前目にしたからくりと

  あまりに違うと言われるか

  色絵明かりの草紙なぞ夢まぼろしの竜宮城

  オランダ渡来のからくりに

  三年三月の苦心の末

  仕込んだ不思議がここにある

  世の常ならぬからくりで

  彼岸を見通し彼岸より此岸を見通す眼をば

  たったの三文で手に入れたのじゃ

  さあさあとくとご覧じろ

  末代に誇るからくりの

  このからくりをご覧じろ



  



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2 コメント

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お見事な大道芸 (丑の戯言)
2010-12-13 15:31:10
おやまあ、奇想天外な詩だこと。

からくりなんてものは元来、目にツバ付けてってところがありますが、やっぱりと思わせるような…。
その回答は読む人の自由でやんしょ?

画像と本文とが合致しているような、していないようなところがまた、からくりですな。
からくりおじさんが誠実そうだし。
だけど、道行く人はさりげなさそうで。

オランダがからくりの発祥の国なんですか?
実は小生の友人が長年オランダで暮らしており、ここ十数年来、芸人を伴って静岡駅前で大道芸を演出してるんです。
一度覗いてみようと思っていたら、今年はなぜか来日しないんですな。

しかし、オランダ由来なのにお釈迦さまなどが出てくるところにユーモアがあるような……。

いやいや、お見事な"大道芸"でした。

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オランダからの渡来ではあるのですが・・・・ (窪庭忠男)
2010-12-14 16:53:57
(丑の戯言)様、楽しい返し技をありがとう。
詩文と画像の遠くて近い関係は、これからも続きます。
         
ところで、<のぞきからくり>はオランダ渡来といわれていますが、発祥の地かどうかはわかりません。
それより丑さんの友人の大道芸士(奇しくもオランダ在住)について、貴ブログで披露していただけませんか。
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