どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

新むかしの詩集(11) 「海」

2011-10-28 05:16:01 | ポエム

     北前船



     「海」



  うみが好きだから

  岬の丘にのぼって海をみる

  秋の 波は鋭く頭巾を鎧い

  聡明なまなざしで

  臨海線を洞察する

  遊泳禁止の赤旗が

  わすれられた色でなぶられ

  補給の切れた空き缶は

  きらきらと

  飢餓にかがやく



  かぜと砂と

  波 波 波

  決意した光の冷たさを

  じっと耐える

  --秋は

  海のすがた(本性)かよ



  だが 海をみよ

  波を剥ぐって

  表皮の下の鼓動をきけ

  ある日 岬の

  丘から見る海に飽きたとき

  みずから坂を下りて

  海のこころに手をつっこむ



  ふゆや夏

  春の 怠惰なめざめの朝も

  憎々しげに

  両手でかきまわし

  あたまを下に喰らいつくのだ

  網でしぼり

  イカリで引き裂き

  血だらけにするのだ

  

  混沌の海には



  無感動と

  無目的と



  みずから掴み上げた

  血潮のほかに

  獲物はない





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2 コメント

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海は本来・・・・ (窪庭忠男)
2011-11-03 01:34:22
あこがれの対象であるべきでしょう。
「潮騒」の海も、「太陽がいっぱい」の海も、ロマンを孕んで可能性に満ち満ちています。
     
一方、海には難破もあれば、津波もある。
図らずも海の諸相を見せられて、しかし相変わらず漁でにぎわう港がよみがえり、いつの日か悲嘆も怒りも呑みこまれるでしょう。
     
諦めに流されない海、生き残った松、乗り上げた船を象徴として、心に焼き付ける。
むかしの詩に、ものがたりを読み取っていただき感謝申し上げます。
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詩人の目に映じた海 (丑の戯言)
2011-11-01 16:32:10
<海>を詩的感覚で鋭く見抜いた詩文には驚嘆すると同時に、戸惑いを禁じ得ません。
詩人の目に映じる海とは、こんなものだと。
凡人の感覚では及びもつきません。

いつものことながら、そこに選択された言葉が研ぎ澄まされております。
情景を的確に捉えるとともに、そこには物語性を孕んでいますね。

そんな詩を自分も作ってみたいと憧れますが、所詮無理でしょう。
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