庭先の立葵は
花嫁の蒼ざめた紅いろ
祝言の夜を前に
不安の風が胸元を吹きわたる
昨日まで陽光に焼かれた肌を
はたはたとパフで叩けば
打ち水の庭に似て
あえかな羞らいが立ち昇る
姉よ 三つ違いの姉よ
花嫁になるな
憧れであり懊悩である幾多の日々を
持ち去らないでくれ
思い出のカンバスには
暮れなずむ青い空と
立葵の紅い花びらが
ふるふると震えつづける
庭先に咲く丈高き遺伝子よ
来年はその場所に自生するな
浴衣のような艶やかさで
こちら側へ風を送るな
田舎の縁側から望む立葵
古風な慎みを秘めて匂い立つ夏の情念
旧盆には 盆花とともに摘み
真菰の馬に乗せてやろう
(すでにはや祝言のざわめきが聴こえる)
人の世の仕来たりなど
立葵の花にも及ばぬ
花弁ににじむ蠱惑の色に
気づく者など どこにもいない
(『立葵の風景』2012/07/30 より再掲)
でも、強いインパクトがありますね・・・
立葵という花は、ぼくの中では真夏の代表のような花です。
夏休みの思い出の背後に、必ず立ち現れる強烈さの象徴でもあります。
ちょっと物語風ですが、まあこんな詩もあるか、と。
(のり)さんの立葵は、どのような表われ方をするのでしょう。