すずらん
(城跡ほっつき歩記)より
古書漁りに疲れて通りに出ると
薄暮の街にスズラン灯が点っていた
腹が減ってクークー泣くのを押さえつけ
『悪の華』を買うための本代を残そうとした
ジャン・ジュネの詩集を翻訳した仲間が
詩壇でもてはやされるのを横目に
ぼくは柄にもなくボードレールの「飛翔」に憧れた
太陽を横切り天空を横切り はたまた星の彼方をも横切り
無頼と倦怠が似合う男はぼくじゃない
北海道からスズランを携えて出てきた友よ
きみは一時「楯の会」に所属していたと聞いたが
問いかけると涼しげに笑って眼光を強めたね
海上保安庁に入るからと宣言して
突然ぼくの前から姿を消した
つくづく制帽の似合う男だったが
心の中ではどんな航海をしていたのか
神田すずらん通りを足早に歩いていると
青春時代の高揚と冷や汗が背中を粟立たせる
希少な詩集を売りに行ったのも
中国映画「山の郵便配達」を観たのもこの街だった
この道は 腹の減る路だ
すずらん通りに面した小窓の店で
たっぷり餡の入った鯛焼でも買おうか
ついでにイラン映画の前売り券を買っておくのもいい
青春の飢餓は癒えることなく街歩きする
饐えた紙と 食えない神の気配を求めて
いつの間にか落魄し すれ違った詩神に気づかなくても
友よ 嗤わずにそっとしておいてくれ
詩を捨てて 海洋を選んだ男よ
君が悪さをしたトンボと山羊の話は ささやかな悪の華
交尾の痛みと屈辱に呻いたかもしれないが
捨てた女に背中を刺された君ほど 深淵を覗いた者はない
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失礼致しました。
神田すずらん通りでは「古本祭り」が有名ですが、こうしたイベントもいつまで続くのかと心配しています。
新刊本の売り上げが年々減っているらしく、紙の本の時代は確実に先細りの運命にあるのでしょう。
古書は別物と思いたいところですが、古書店街もどうなることやら。
せめて記憶の中の文化遺産として、とどめておきたいものです。
素敵な名前ですね
神田にある古い町並みの下町でしょうか?
腹が減ると言うことは
本をあさり歩く学生さんたちも
多かったのでしょうね
東京に疎い私はそれだけでも新鮮に感じます
都会の下町の香りがする場所がいいですね
青春の飢餓は癒えることなく街歩きする
ほんとにそうだと思います
今は飽食すぎて
食べても食べても
お腹は一杯なのに満足しません(^_^;)
近頃血のめぐりが弱いのは、人並みに飽食の時代に生きているからでしょうか。
ついこの間のような記憶を懐かしみながら、気づいてみれば、いつも心は神田界隈を歩いているんだなという思いがします。
芭蕉の「夢は枯野を駆けめぐる」心境には程遠いですが、少々あやかってみたい気もします。
ありがとうございました。
腹がへると脳の神経回路が生き生きとしてくる。感情も水を得たように立ち上がってきて・・・青春だったなあ。
年老いたいまは、腹がへってきてもただの空腹だけ。
ははは・・・情けないような、つまらないような・・・笑っちゃうしかないか。