スウェーデンの湖水
(ウェブ無料画像)より
落胆は半ばに道をそれ
苦悩も半ばに朽ち折れる
ハゲワシも飛ぶのをやめる
貪欲な光が差し入り
幽霊さえもよろめく
氷河期のアトリエに昼の光が差し
キャンバスの赤い野獣を照らす
全てが周りを見る
日を浴び 群衆の中を歩く
全ての人は半ば開いた扉
皆を部屋へといざなう
水は木々の間で光を放つ
湖は地球に開く窓
この詩は、たまたま観た外国のテレビ・ドラマに挿入されていたものである。
スウェーデン人の刑事が、地道な聞き込みとひらめきで事件を解決していく連続ドラマだ。
英国で制作されたらしいが、アメリカの刑事ドラマと違って派手なドンパチはほとんどない。
事件そのものも身近な人々の失踪や誘拐が発端となっており、捜索の舞台となる北欧の風景が寒々しく物悲しい。
そして、この回の見どころは、前回レストランで椅子に拳銃を置き忘れ、厳しい査問の通知を待つ刑事の内面である。
停職を言い渡されての休暇中、娘夫婦や孫娘との交流に喜びを感じつつ、一方で義理ながら縁戚の男の失踪が伝えられ、探してほしいと頼まれる。
やむなく捜索に動くのだが、考え事をしていて危うく自動車事故を起こしかける。
刑事は立て続けの不始末に、おのれの認知機能の衰えにおびえる。
医師からは、アルツハイマーの可能性を示唆され、ますます落ち込む。
失踪事件は、かつてロシアの潜水艦がスウェーデンの喉元まで侵入してきたという事件に関係しているらしい。
侵入に気づいたのに、やすやすと見逃した軍と政府に疑いの目を向け、調べ続けた漁師の男の記録が残されていた。
何者かとの会話がカセットテープにあり、男の妻までスパイではないかとの嫌疑が浮かび上がる。
刑事は姿を隠していた漁師の居場所を突き止め、警察に出頭して真実を明らかにするよう説得する。
しかし、男は刑事とともに舟で湖に出たとき、自ら身を投げて命を絶つ。
実際には、潜水艦侵入事件をロシアは否定し、複数の隣国からはスウェーデン海軍が気象ブイをロシアの潜水艦と誤認して発表したのではないかと指摘された。
しかし、スウェーデン政府は自国の探査能力を解析されるとして、その後の情報を隠し続けた。
国民の疑心暗鬼はくすぶり続け、テレビ・ドラマのモデルとなるような事件・事象がいくつか起こったらしい。
冒頭の詩は、たぶん氷河に削り取られてできた北欧の湖、あるいはフィヨルドの風景を意識したものではないか。
そして、疑心暗鬼に翻弄された一部の男たちの心境と運命を示唆したものだと思う。
落胆、苦悩、貪欲な光、氷河期のアトリエ、湖は地球に開かれた窓・・・・誰の詩かわからないが、映像の奥に流れる気流のように心をえぐる。
やはり、風景と気象は、人種の特徴と人間の気性を形作るのではないかと思った。
(おわり)
スウェーデン人の刑事の連続ドラマも、社会性があり、リアリティがあって面白そうです。
ポエム257『乱れるコロナ姫金魚層』である細菌学者の言葉を紹介しましたが、とんでもない予言だったと怖くなりました。
安倍総理大臣の希望通り、治療薬やワクチンが開発されると思いますが、一抹の不安が残るところでもあります。
こういう時には、家に凝って人間性のある外国ドラマを見るのもいいと思います。
僕はそうしようと考えています。
コメントありがとうございました。