落葉の下の温もりと
とうとう こんな季節になってしまった
こつこつと生きてきて 行き着いた秋
まだ大空に伸びる望みを捨てたわけではないが
散り敷いた落葉を俯瞰すると
安堵と迷いが折り重なっている
この森に生を受け
あちこちへ出かけることはないが
山を越え 谷を渡ってきた風の声を聴ければいいか
春夏秋冬 真っ先に見る月と星
流れる雲と 足元から湧き立つ霧
それらもいいが あの日の思い出は忘れられない
落葉を持ち上げて この世に顔を出した日の歓び
しっとりとした褥に射し込んできた朝の光の眩しさを
「ぬえ」が来て 一声ヒーヨと啼いた
人声は消え かさこそと走る野鼠の足音がする
まだ枝揺すりするコナラやクヌギ
きれいさっぱり振るい落とさなくては 冬を越せないのだ
未練は禁物 迷いは荷物
落葉の下の温もりと 重なり合いの暗がりを
ちいさな命が 束の間の憩いの場所に使えばいいさ
北風が吹いて 地表を一拭きすれば
上から眺めてヤキモキしたことも
すべては夢の中 記憶の外
荒垣秀雄氏の本、さがして読んでみます。
自然から享けるもの、人間から感受するもの、違いと共振が楽しみです。
ふるい落とした葉っぱでいのちの循環、樹のこころ。
朝日新聞天声人語で健筆を振るった荒垣秀雄は自然への畏敬に満ちた文章をたくさん残しましたが、著書『老樹の青春』で、一度根を生やした場所から生涯動くことの出来ない運命を与えた樹木に神は
「この不公平を是正するために、神は樹木に数百年、何千年の老木になっても、毎年一度は新緑に若返らせ、花も咲かせて、若木とちっとも変わらぬ老樹の青春を楽しませる特権を与え給うたのである」
と老樹のいのちを讃えています。
私はこの文章が大好きで・・・。
窪庭さんの暖かい詩で久し振りにその本を思い出し開いて見ました。
有難うございます。
時にはまた詩をお願いします。
知恵熱おやじ