『家出した猫のヒュー』
きょう、不思議なことがあった
夕方、暮れ残った空に黒い影が舞い
ジグザグに狂おしく黒い影が舞い
瞬く間に、視界から消えた
そのとき、僕は
ついに世界の終焉が
先触れの舞を、生き物の頭上に放ったのだと思った
ヒューが居なくなったのは、いつのことだったか
僕の頭の中から家出した猫のヒュー
ヒューが、僕の中に棲めないと見切りをつけたのは
たぶん正しかったのだ
手裏剣を投げなくなった僕に、愛想を尽かした
ヒューは頭の良い猫だから
車に轢かれたり、甘言にたぶらかされたりなどしないはずだ
夕空で、ジグザグに乱舞した黒い影が
せめてヒューの未練であってくれればと
終焉を信じたくない男が、空を見続ける
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます